香港に5得点大勝
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EAFF E-1サッカー選手権2019も2巡目に突入。中国との初戦を2-1で勝利している日本は、同じく初戦で香港を2-0で突き放した韓国にプレッシャーをかけるべく、14日の第2戦・香港戦で大量得点勝利を手にしたかった。森保一監督は予告通り、スタメン全員入れ替えを実施。11人中9人がA代表デビューというフレッシュな面々がどこまで力を見せられるかが注目された。
香港もメンバー数人を入れ替え、韓国戦よりアグレッシブな戦いを仕掛けてきたが、その勢いをいきなり止めたのが、開始8分の菅大輝の華麗な先制弾だった。仲川輝人の折り返しがDFに当たり、浮き球になったボールに反応した彼は左足を一閃。ボレーシュートがファーのネットに突き刺さり、日本は瞬く間に1点目を手に入れた。
「あれだけドフリーだったし、テンパる場面でもなかった。ミートすることだけを意識して打てた」と満足そうに語る左アウトサイドの一撃で日本は勢いに乗る。
それがゴールラッシュの始まりとなり、15分には田川亨介が左CKから打点の高いヘッドで2点目をゲット。26分にはその田川からのタテパスを受けた小川航基が巧みな反転から右足を振り抜き、豪快に3点目を手に入れる。さらに前半終了間際には、序盤から再三再四右サイドをえぐって打開していた相馬勇紀のクロスを菅が折り返し、田川が触って、最後は小川。相手DFの統率が崩れたところをしっかりと見極めて右足でゴールを決め、4点目をゲット。これで前半を折り返した。
後半も日本は攻撃の手を緩めず、相馬のサイドアタックなどからチャンスを演出。14分には左ショートコーナーから大島僚太が精度の高いクロスを上げ、ゴール前で待ち構えていた小川が再び頭で押し込んで5-0に。彼自身はA代デビュー戦でハットトリックと史上3人目の快挙を成し遂げた。
「最近、得点が取れてなかったですし、代表活動でも得点が取れてなかった。FWが取れてない時間帯が続いていて不甲斐なかったので正直、ホッとはしました。この3得点がどう評価されるか分からないけど、『(小川の復活は)この試合からだったよね』と言われるようにもっともっと点を取りたい」と彼自身も語気を強めていた。
激しさを増す1トップ争い
2年半前のU-20ワールドカップにエースFWとして参戦しながらウルグアイ戦途中に左ひざ前十字じん帯を断裂。そこから長く苦しいリハビリを強いられた。戦列復帰後もジュビロ磐田で出番を得られず、足踏み状態に。その間に上田綺世が急成長し、東京五輪世代のエースの座を奪われかけていた。
だからこそ、本人は「この試合では絶対に結果を残さなければいけない」と試合前から強調していた。相手との実力差があったとはいえ、この日の3ゴールという有言実行の結果。上田との競争にもアドバンテージを得たのではないか。さしあたって、18日の韓国戦のスタメンは有力になったと見ていいだろう。
小川だけではない。先制点の菅、2点目の田川、攻撃の起点として約20本のクロスを上げまくった相馬もそれぞれ強烈アピールをしてみせた。
菅は今回追加招集で、U-22世代でも遠藤渓太や杉岡大暉、原輝綺の後塵を拝するケースが多かったが、千載一遇のチャンスを生かすことに成功。攻守両面でダイナミックさを備えた選手だと自ら示した。
「自分は切り替えの速さ、球際の強さ、上下動のロングスプリントが武器。大舞台で意外と持ってるところもありますよね(笑)」と本人は自身のストロングポイントを語っていたが、その全てが森保監督の求める要素だ。加えて、重要局面でゴールを決められるのだから、こういう人材は貴重だと指揮官も考えるはずだ。今回の働きで、日韓戦に向けた遠藤渓太との争いも彼が優位に立ったのは確か。本番の動向が楽しみだ。
相馬勇紀が感じた課題
田川に関しては、シャドーとしての一挙手一投足にはややギクシャク感も見て取れたが、ゴールに絡む仕事の部分で光るものを感じさせた。「一番はゴール前に入っていくことだし、点を取りたいと思っているので、その役割を果たしたい」と彼自身も試合前に語っていた通りの結果となり、とりあえずは安堵したことだろう。
実際、前線に小川と田川が揃っていれば高さの部分でかなりの迫力があるし、セットプレー時に競り勝てる回数も多くなる。香港の守備は仲川には徹底マークをつけていたものの、それ以外のところはルーズで、田川がフリーになるケースも少なくなかった。
そこを確実にモノにしていけるようになれば、彼はもっと相手にとって脅威になれる。その可能性を感じさせたのは1つの収穫と言っていい。ただ、日韓戦で同じポジションの森島司に代わってスタメン起用されるかはやや微妙。そこはここからの準備期間の競争次第になりそうだ。
そしてもう1人、際立った働きを見せた右アウトサイドの相馬だが、「まあいいクロスは上がってたと思うんですけど。点で合ってない。僕に今日、アシストや得点がついていないところが世界の選手と今の自分の差だと思う。6回上げたら6回点が入るくらい点で合わせられるように質を高めていきたいです」とあまり満足していない様子。貪欲に高いレベルを追い求めているという。
確かに韓国戦になれば、香港とは比べ物にならないほどDF陣が強固だ。アバウトなボールでは崩れないし、ゴールにも至らないだろう。守備力もより求められてくる。対面にはナ・サンホやパク・チュホといったキーマンが陣取っていて、押し込まれる時間帯も想定されるだけに、相馬で行くのか、橋岡大樹で行くのかは判断が分かれるところだ。
このようにインパクトを残したU-22世代がそのまま韓国戦の舞台に立てるかどうかは何とも言えない。ただ、森保監督の頭を悩ませる状況になったことだけは確かだ。
そういう熾烈な競争が生まれて初めてチームは強くなる。2019年A代表ラストマッチとなる宿敵との最終決戦に向け、若い世代がさらなる勢いをもたらしてくれれば理想的だ。日本としてはこのまま勝って、2013年韓国大会以来のタイトルを持ち帰るしかない。
(取材・文:元川悦子【韓国】)
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