ボランチのクオリティでゲームを支配
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第1戦の先発メンバーをすべて入れ替えた香港戦は5-0の圧勝だった。相手が違うので差し引いて考えなければならないところはあるが、香港戦の11人のほうが連係もはるかにスムーズで、個々の選手の良さが発揮されていた。
3-4-2-1の2ボランチは川崎フロンターレの大島僚太と田中碧。後方のビルドアップでは、香港の1トップ2シャドーの隙間に立っていた。この形の相手に対しては定石のポジショニングなのだが、狭い隙間に平気で立てるところに2人の戦術眼と技術への自信がうかがえる。
相手は中央へ絞らざるを得ず、そうすれば外が空く。外へつなげばボランチが空く。理屈は単純だが、隙間に立っていられるのは、そこへパスが来ても絶対に失わないだけの自信がないとできない。ボランチの質で主導権を握ることができていた。とくに大島の存在感は抜群。かつての遠藤保仁を彷彿させる支配力を示していた。
右のシャドーのポジションに入った仲川輝人も序盤はニアゾーンの侵入でチャンスを作り、仲川の攻め込みをきっかけに先制点が生まれている。横浜F・マリノスとは違うポジションなので、多少のやりにくさはあっただろう。途中から相手にマンマークされたこともあって見せ場は減っていった。ただ、武器が明確なので周囲との呼吸が合ってくれば切り札になりそうだった。
大島と仲川を除く9人は東京五輪世代だ。結果を出した香港戦のセットを中心にしたメンバーで韓国戦をぶつけ、そこで手応えが得られれば、東京五輪の強化は一気に進められるかもしれない。
コンセプトを体現しつつ個々の特徴を発揮
大島、田中碧のコンビに不安があるとすれば、切り替えの強度のところだが、韓国戦でそこが大丈夫ならば、大島をオーバーエイジ枠として、このコンビで五輪の臨めるのではないか。また、柴崎岳を軸としてきたA代表にも別の有力なコンビを持つことができる。
練習してきたとはいえ、E-1の代表は寄せ集めに近い。南野拓実、堂安律、中島翔哉の3人が組んだその日から機能したように、香港戦でも「発見」があったわけだ。
小川航基はハットトリックで結果を出しただけでなく、味方を使うプレーや素早い守備への切り替えでも貢献した。右サイドで突破力とクロスボールの特徴を発揮した相馬勇紀、見事な先制弾と左利きの利点を生かしていた菅大輝、3バックも安定していた。ほぼ全選手がチームのコンセプトを表現しつつ、個々の持ち味を出せていたと思う。
初戦の中国戦で良かった森島司と、もう1人オーバーエイジを加えても五輪仕様になる。香港戦で結果を出したメンバーを中心に、仕上げの韓国戦で東京五輪とA代表へつながるプレーを見せてほしい。
(取材・文:西部謙司【韓国】)
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