負けられない一戦で
(左)ダレイ・ブリント(右)ドゥシャン・タディッチ【写真:Getty Images】
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アヤックスはリーグ戦で好調を維持しており、16試合終了時点で13勝2分1敗の首位。特に目を見張るのが52得点14失点という素晴らしい成績を残している点だ。オランダ国内で圧倒的な強さを見せている。
一方のバレンシアはリーグ戦で思うような成績を残すことが出来ず、7勝5分4敗で8位。主力6人が怪我人で離脱中ということもあるが、多い勝ち点を取りこぼす試合が多い。
しかし結果はリーグ戦を裏付けるものにはならず、アヤックスがまさかの敗退という結果に終わった。
この試合内容を一言で表せば“矛対盾”だろうか。決勝トーナメント進出をかけて負けられない一戦の中、アヤックスが攻め込み、バレンシアが引いて守る展開になった。バレンシアはリーグ戦で23失点と守備的なチームではないが、この日は爆発力のあるアヤックスの攻撃陣を上手く押さえ込んだ。
試合はキックオフと共にヨハン・クライフ・アレナのボルテージが非常に高く、それに応えるかの様にアヤックスが攻め込む。バレンシアは4-4-2のシステムで無理にボールを追うのではなく、まずはしっかりとブロックを形成してカウンターという狙いが見受けられた。そのため90分間通してオープンな展開が続き、両チームともに縦に速いサッカーとなった。
アヤックスはボールを保持する時間が続くも強固な壁を崩すことが出来ず、攻めあぐねる。その状況の中で先に先制点を奪ったのはアウェイチームの方だった。
23分、MFフェラン・トーレスが裏に抜けたFWロドリゴにスルーパスを供給。それをロドリゴが落ち着いて決めた。アヤックスの選手達が気の緩みを見せた一瞬の隙を見逃さなかったバレンシアが貴重なゴールを奪った。
ヒートアップした後半
後半に入って、一点を追うアヤックスだが相手のカウンターを警戒したこともあって猛攻を仕掛ける様子はなかなか見せなかった。前半同様にボールを保持するものの、なかなかバレンシアの壁を崩すことが出来ず、得意のパターンである、FWハキム・ジイェフの右サイドからファーサイドを狙ったクロスも脅威になるシーンはほとんどなかった。
一方のバレンシアは得点を奪って以降、より守備の強度が増して、攻撃では幅を取るようになった。そのためサイドチェンジが多くなり、前線へのロングボールも増えていった。
データサイト『Who Scored』によるとアヤックスのポゼッションは64.2%:35.8%、シュート本数は17本:8本、そのうち枠内シュートが3本:3本、パス本数が529本:311本、パス成功率は80%:67%となっている。いかにアヤックスがバレンシアを攻略出来なかったのかが伺える。特にシュート数は倍以上打っているにも関わらず、枠内シュートがたったの3本でバレンシアと同数になっている。それだけアウェイチームが硬いブロックを敷いたということだ。
そして時間が経つにつれてアヤックスに焦りが見え始め、選手達も苛立ちを見せ始める。次第に両チームの選手同士で小競り合いが増えてしまい、不用意なカードを貰ってしまうシーンが多くなっていった。後半アディショナルタイムにバレンシアのDFガブリエウ・パウリスタとアヤックスのFWドゥシャン・タディッチがヒートアップしてしまい、ガブリエウがタディッチに頭突きを食らわせて一発退場となったシーンもあった。
まさかの敗退
この日のアヤックスは冴えていなかった。代名詞でもあるパスワークがうまくいかず選手間の距離が遠かった。そのためダイレクトパスを繋ぐシーンは少なく、クロスも手前のDFに当たってしまうシーンが散見された。それだけでなく、要所要所でパスミスが目立ち、自らの手でチャンスを潰している印象も強かった。
またホームで大一番を迎えて、さらに引き分け以上でグループステージを突破することが出来るという比較的楽な条件からどこかで油断があったのかもしれない。実際10月3日に行われたCLグループステージ第2節のバレンシア戦で、アヤックスはアウェイにも関わらず3-0と快勝している。
失点シーンを振り返って見ても、裏へ抜け出したロドリゴに対してアヤックスの選手達は誰もマークについておらず、完全に歩いていた。確かにオフサイドを狙ってあえてマークを外した選手もいたが、それでもオフサイドだとアピールする前にプレスに行くべきであった。
この敗戦の結果、他会場のチェルシー対リールの一戦でチェルシーが勝利したため、バレンシアとチェルシーが逆転でグループステージ突破を決めた。首位から一転、チャンピオンズリーグの舞台を去ることになったアヤックス。昨季のアムステルダムの悲劇が再び蘇る結果となった。
一方のバレンシアは7年ぶりとなる決勝トーナメント進出を決めた。しかしこの試合でFWケビン・ガメイロが負傷、退場処分のガブリエウは出場停止など、ただでさえ怪我人が多い中、問題を更に抱えたまま決勝トーナメントに挑むことになりそうだ。
なお、アヤックスはグループHで3位となりヨーロッパリーグの決勝トーナメントに回る。
(文:松井悠眞)
【了】