ベテラン不在のなでしこジャパン
なでしこジャパン(日本女子代表)はEAFF E-1サッカー選手権で、チャイニーズ・タイペイ(台湾)、中国、韓国と対戦する。
今年6月に行われたFIFA女子ワールドカップでは、ノックアウトステージでオランダに敗れてベスト16に終わった。来年8月に控えた東京五輪に開催国枠として出場するなでしこジャパンは、アジア予選が免除。E-1は五輪前最後の公式戦となるだけに、今回招集されたメンバーにとっては貴重なアピールの場となるだろう。
今大会はインターナショナルマッチデーではないため、キャプテンの熊谷紗希(リヨン)、宇津木瑠美(シアトル・レイン)といった欧米でプレーする選手たちが不在。代わりに国際Aマッチ出場数が少ないメンバーが選出されている。「世界で勝っていくためには、新たな強いリーダーが絶対に必要」と高倉麻子監督は11月29日の会見で語った通り、新たな選手の台頭は見所のひとつになるだろう。
なでしこリーグは今季、日テレ・ベレーザが前人未到の5連覇を達成。AFC女子クラブ選手権2019でも初代女王に輝くなど隆盛を極めている。今大会にも11名が選出されている(FW植木理子は怪我のため出場辞退)。
11日に対戦する台湾のFIFAランキングは40位。出場する4カ国(日本/10位、中国/16位、韓国/20位)の中で最も低く、今大会では厳しい戦いが予想される。今大会では予選(ラウンド2)で中国に次ぐ2位に終わったものの、本大会出場権を得ていた北朝鮮が出場辞退したため、繰り上げで出場することとなった。
熊谷紗希が不在の最終ラインは…
こういった点をふまえて、なでしこジャパンのスタメンを提案していきたい。
GKは山下杏也加(日テレ)が不動の存在。フィールドプレーヤー出身らしい高い足下の技術は、最後尾からのビルドアップに欠かせない。池田咲紀子(浦和レッズ)、平尾知佳(アルビレックス新潟)も招集されているが、山下を起用すべきだろう。
最終ラインには、右から清水梨紗(日テレ)、三宅史織(INAC神戸)、土光真代、遠藤純(以上、日テレ)の4人を推す。
清水は23歳ながら代表キャップ数は既に29試合を数える。持ち前のスピードと積極的な攻撃参加が持ち味の右サイドバックだ。熊谷が不在のセンターバックには三宅に加えて、11月10日に行われたMS&ADカップ(南アフリカ戦)で初先発となった土光も名を連ねるだろう。
人材難となっているのが左サイドバック。南アフリカ戦ではサイドアタッカーの遠藤が起用された。2000年生まれのレフティーは持ち前の攻撃性を発揮する場面が見られた。台湾戦では押し込む時間帯が多くなると予想される。遠藤の攻撃力を生かしたいところだ。
4季連続得点王を最前線に
4人が並ぶ中盤の底には三浦成美(日テレ)と杉田妃和(INAC神戸)の起用を勧めたい。ワールドカップでも起用されたコンビだ。
ベレーザでも中盤の底を務める三浦は、22歳らしからぬ落ち着いたプレーを見せる。杉田はU-17ワールドカップ、U-20ワールドカップでともにMVPに輝いた期待の22歳。ボールを失わない高いボールコントロール能力と、レフティーでありながら、両利きと見間違うほど精度が高い左右のキックにも注目したい。
サイドハーフは左に長谷川唯(日テレ)、右に中島依美(INAC神戸)が起用されるだろう。
豊富な運動量をベースにチャンスメイクする長谷川は、現政権下では欠かせない存在だ。40試合を数える出場数は、清水、籾木結花ら同年代の中でも最多の数字を誇る。
今回のメンバーで最年長の1人となった中島は司令塔としての役割を担う。類稀なるテクニックを持ち、精度の高いキックを放つセットプレーにも注目だ。
前線は岩渕真奈(INAC神戸)と田中美南(日テレ)のコンビを推す。
南アフリカ戦で先発起用された菅澤優衣香(浦和レッズ)はコンディション不良を理由に招集外になった。代役に相応しいのはなでしこリーグ史上初の4季連続得点王と、2季連続のMVPに輝いた田中の他にいない。キャリアハイの20得点をマークした抜群の得点感覚を今大会でも発揮してもらいたい。
30代の選手がいないなでしこジャパンの中で、唯一2011年のワールドカップ優勝を知るのは岩渕しかいない。セカンドトップから相手DFの隙間に入り込み、チャンスを生み出す役割を期待したい。
(文:編集部)
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