2ヶ月ぶりの白星
ニコラ・ぺぺとガブリエウ・マルチネッリ【写真:Getty Images】
ようやく勝つことが出来た。2ヶ月ぶりのリーグ戦勝利に胸を撫で下ろしているアーセナルサポーターがほとんどではないだろうか。
アーセナルは公式戦9試合、リーグ戦7試合で勝利が無い状況だった。一方のウェストハムも非常に厳しい状況で直近のリーグ戦10試合で勝った試合はわずかに1試合。両チームとも今シーズンは非常に厳しいものとなっている。
この試合のアーセナルは4-2-3-1のシステムで挑み、スタメンは左からDFキーラン・ティアニー、ソクラティス・パパスタソプーロス、カラム・チェンバース、エインシュリー・メイトランド=ナイルズで形成。DMFはMFルーカス・トレイラ、グラニト・ジャカを置き、その一列上には左からMFガブリエウ・マルチネッリ、メスト・エジル、ニコラ・ペペを配置した。ワントップはFWピエール=エメリク・オーバメヤンが入った。
しかし本来ならこの試合は右SBにDFエクトル・ベジェリンがスタメン起用されるはずであったが、ウォーミングアップ中に負傷をしてしまい、メイトランド=ナイルズが代わりに先発に入った。またティアニーが前半に右肩を負傷してしまい、DFセアド・コラシナツとの交代を余儀なくされた。この2人の負傷はアーセナルにとって大きな不安材料になるだろう。
さて、前半はホームチームが試合の主導権を握る。ウェストハムがパスコースを消すように守備をしたため、アーセナルはパスの出しどころがなく後方で回す時間が多くなる。シュートもたった2本に終わり、枠内シュートは0本と思うように攻めることが出来なかった。
そしてウェストハムが先制点を奪う。37分にMFパブロ・フォルナルスが右サイドからクロスを上げると、CKから残っていたDFアンジャロ・オグボンナがヘディングで流し込んだ。
怒涛の10分間
後半に入ると徐々にウェストハムのディフェンスに綻びが出始める。そしてその隙をアーセナルは見逃さなかった。
59分にコラシナツが左サイドからマイナス気味にクロスを上がると、中央でフリーになっていたマルチネッリが落ち着いて決めた。プレミアリーグ初先発となった男が貴重な同点ゴールを呼び込んだ。
65分にはペペがボックス内右からシュートを放ちゴールネットを揺らして、その3分後にはペペからのクロスにオーバメヤンが合わせてダメ押しの追加点を奪った。ペペはアーセナルに移籍後初めて流れの中からゴールを奪った。
わずか10分間の間に3得点を奪い、前半のアーセナルが嘘かのような急展開となったが、相変わらず後方でのパスは引っかかってしまう。良くも悪くもアーセナルらしさは残る後半であった。
見えた希望の光
アーセナルが10分間で3ゴールを奪えた理由は、後半に入ってウェストハムの選手達が疲労してしまったことが挙げられるだろう。そのためオープンな展開になり、前半では見られなかったトレイラやペペの持ち運びが目立つようになった。
そしてマルチネッリがアーセナルの希望の光になるかもしれない。左サイドから献身的にディフェンスをして、攻撃時には中央寄りにポジションを取り、相手のゴール前まで果敢に上がっていく姿を見せた。この日、気迫を感じなかったアーセナルの選手の中で、唯一熱い魂を持ってプレーをした選手と言っても過言では無いだろう。この男の名前を胸に刻んだグーナー達は多いはずだ。
またもう一つ希望が見えた。それは縦に速いサッカーだ。前述した通り、オープンな展開になったことで中央にスペースが生まれた。そうするとトレイラが中盤からボールを持ち運べるようになる。また前線にはスピードとテクニックがあるペペとオーバメヤンがいるためカウンターで脅威になることが出来る。ブロックを作った相手を崩すことが出来ないのであれば、縦に速いサッカーをすることも選択肢の一つだ。
もちろんこの試合はウェストハムが相手だったため、そこまでピンチを招くことがなく、縦に速いサッカーが機能をしたと言えるかもしれない。マンチェスター・シティやリバプールなどが相手の時にこの日のような戦い方が出来るとは思えないが、それでも相手を崩すことが出来ないのであれば、奪ってから縦に速いサッカーをする方が得点の確率がグッと上がるはずだ。
またアーセナルは久しぶりの勝利を手にしたが、内容が良かったわけでは無い。本当に練習をしているのだろうか。そう思わざるを得ないほど毎試合同じ過ちを繰り返しているのも事実だ。最終ラインからのビルドアップはもたつき、プレスをかけられると脆さを露呈する。それだけでなく一つ一つのパスが微妙にずれてしまうことで、攻撃にリズムが生まれない場面も目立つ。改善すべき問題は多い。
フレドリック・ユングベリ体制後初勝利となり、リーグ戦では2ヶ月ぶりの白星となったアーセナル。長いトンネルをようやく抜けたが、再びトンネルの中を彷徨うことになるのか。次戦が非常に重要な一戦になる。
(文:松井悠眞)
【了】