2点を先行するユナイテッド
順位は関係ない。179回目のマンチェスター・ダービーはそんな展開となった。
開始2分で早くも両チームにシュートが生まれたように、90分を通じてテンションが高い試合になった。サイドで幅を作りながら敵陣に攻め込むシティに対して、ユナイテッドは前線の4人を中心に力強いカウンターを繰り出す。お互いの持つ色と意図が濃密に出た。
中3日でダービーに臨んだシティは前節から1名のみの変更に留まった。対するユナイテッドは左サイドバックにDFルーク・ショーを入れ、1トップにはFWアントニー・マルシャルを起用。マルシャルは先週末に負った筋肉系の怪我により、ミッドウィークのトッテナム戦を欠場していたが、大一番に先発に復帰した。
ユナイテッドは自陣でMFフレッジがボールを奪うと、MFジェシー・リンガードを経由してFWマーカス・ラッシュフォードが左サイドでボールを持つ。シティDFのわずかな隙間を縫ったラッシュフォードに対して、MFベルナルド・シルバのチャージがファールとなり、ユナイテッドにPKが与えられた。背番号10はこれをゴール右隅に自ら沈め、ユナイテッドが23分に先制した。
先制後もユナイテッドはカウンターからチャンスを作り、ラッシュフォードが立て続けにシュートを放つ。しかし、1本目は枠外に外れ、2本目はクロスバーに直撃してしまう。
しかし、マルシャルがわずかなスペースを見つける。しなやかな身のこなしで前を向き、FWダニエル・ジェームズからリターンパスを受けて左足を振り抜く。ニアサイドを突いたボールはゴールネットへと吸い込まれ、29分にユナイテッドは1点を加えた。
ディフェンスの「動」と「静」
シティも攻撃の形は作っていた。MFケビン・デブルイネの十八番、ピンポイントの低弾道クロスは38分のFWガブリエウ・ジェズスのヘディングは決定機に。それでもGKダビド・デ・ヘアのビッグセーブもあり、ゴールを割ることはできない。
ユナイテッドはトッテナム戦のように高い位置からプレスをかけず、自陣に4-4-2のブロックを敷いた。特にDFラインとディフェンシブハーフを加えた6人の守備は、怠ることなく役割を遂行し、シティの攻撃を凌いだ。
デブルイネはハーフスペースの支配者だが、この試合の所有権はフレッジにあった。横幅を取るシティのウイングにはサイドバックが開いて対応し、フレッジとスコット・マクトミネイがスライド。さらに、彼らが空けたスペースをリンガードが下がって埋める。
結果的にユナイテッドの倍となる22本のシュートをゆるしたが、枠内に飛んだのは5本のみ。中盤のスライドによりスペースを与えないことで、シティの攻撃を水際で防いだ。
DFハリー・マグワイアとDFヴィクトル・リンデロフはボールホルダーとゴールの間に立ち続けた。それはすなわち、縦への突破を許すことにはなるのだが、シュートコースは与えない。サイドバックと守備的MFが「動」で守るとすれば、両センターバックは「静」でゴール前を守った。
リンデロフは56分にデブルイネの決定機をブロック。『WhoScored』によるこの試合のシュートブロックは、両チーム最多の4本を数えた。さらに、マグワイアはチーム最多の3本のインターセプトを記録。幾度となく繰り出されたロングカウンターの出発点となった。
ビッグクラブに連勝
シティはアクシデントが攻勢に水を差した。ジョン・ストーンズがピッチに倒れ込み、プレー続行は不可能に。怪我の軽重は不明だが、59分にDFニコラス・オタメンディと交代した。
85分にマフレズが入れた右CKに、途中出場のオタメンディが頭で叩いて1点を返す。しかし、時すでに遅しだった。
タスクを遂行してきたユナイテッドだったが、中2日の影響もあってか、徐々にスペースが生じる。スターリングとMFダビド・シルバは徹底的にここを突いてチャンスにつなげる。しかし、最後の最後はデ・ヘアがビックセーブで防いだ。
機を見た攻撃参加が厚みをもたらしていたショーの脚は、88分に限界に達した。カウンターと前線の守備に奔走したリンガードとともに下がり、DFアシュリー・ヤングとDFアクセル・トゥアンゼベを投入。5バックにして守備を固め、5分と表示されたアディショナルタイムを守り抜いた。
ユナイテッドはトッテナム、シティと続いたビッグマッチに連勝。今季は無敗のリバプールから唯一勝ち点を奪い、ビッグ6相手には3勝2分という数字を残している。
なぜこの順位にいるのかについてはここでは触れないでおく。だが、この試合では少なくとも、勝利に値するパフォーマンスを見せていた。
(文:加藤健一)
【了】