自信を欠いた前半のアーセナル
フレドリック・ユングベリ暫定監督の下、初めて本拠地エミレーツ・スタジアムで戦うアーセナルは、ノリッジに引き分けた前節から3人を変更。MFルーカス・トレイラは3試合ぶりに先発し、2列目には前節と同じく右からFWピエール=エメリク・オーバメヤン、MFジョセフ・ウィロック、MFメスト・エジルが入り、最前線にはFWアレクサンドレ・ラカゼットが入った。
ブライトンは前節から2人を変更。リバプール戦の2失点はともにセットプレーからで、流れの中からゴールを割ることはなかった。さらに、ボール保持率は55.2%を記録し、ポジティブな要素を残したと言えるだろう。この試合でも、自陣から丁寧にビルドアップしていく。ボール保持率ではアーセナルを上回った。
ブライトンの組み立てに対して、アーセナルは高い位置からプレッシャーをかけていく。苦しむ場面もあったが、ブライトンも徐々にそのプレスをかいくぐっていく。ファーストシュートまで18分を要したものの、ブライトンはそこから18分間で8本のシュートを放ってスコアを動かした。
36分に右CKからFWアーロン・コロリーの落としを、DFアダム・ウェブスターがシュートを放ち、ゴールネットを揺らす。3連敗中のブライトンが先制した。
2か月の間、プレミアリーグでの勝利から遠ざかっているアーセナルは前半、攻撃の形を作れず、シュートは4本のみ。ユングベリの言葉を借りれば、「自信が欠けていた」状態だった。
息を拭き返したアーセナル
アーセナルは後半開始と同時にニコラ・ペペを投入して修正を図る。攻守に存在を消していたウィロックに代わって入り、右にペペ、中央にエジル、左にオーバメヤンという並びに変わった。
前半よりも球際でのエナジーも高まり、主導権を握って敵陣に押し込めるようになった。すると同点弾は生まれた。50分、右CKをエジルが蹴ると、ニアでラカゼットがバックヘッドで合わせる。ブライトンのGKとDF、アーセナルのDFセアド・コラシナツが競ったボールはそのままゴールへと吸い込まれた。
息を吹き返したアーセナルはその後、ベジェリン、コラシナツのクロスがわずかに味方に届かなかったものの、ブライトンゴールを襲うシーンが増える。右サイドに入ったペペに対しては、対峙するDFダン・バーンだけでなく、MFアーロン・ムーイもヘルプに入ってなんとか対応した。
63分、右サイドからのエジルのFKにダビド・ルイスが頭で合わせる。だが、映像を見る限りは明らかにオフサイド。VARチェックを経て逆転ゴールは取り消された。しかし、後半のここまではアーセナルが試合の主導権を握っていた。
アーセナルは72分に、左サイドバックのコラシナツを下げてDFキーラン・ティアニーを入れる。さらにその5分後、ラカゼットを下げてFWガブリエウ・マルティネッリを投入。オーバメヤンが最前線に移り、マルティネッリは左サイドに入った。
弱点になったサイドアタッカー
ペペを入れたことでアーセナルの攻撃は活性化した。『WhoScored』によるパス成功率を比較しても、ウィロックは46.2%でペペは83.3%を記録。ペペはチーム最多の3本のシュートを放ち、後半の攻撃に色どりを与えた。
しかし、ブライトンは相手の弱点を的確に刺した。76分にMFパスカル・グロスを下げて、DFマルティン・モントーヤを右サイドバックに入れ、FWステフェン・アルザテを一列上げる。そして80分、左サイドからムーイが右足でクロスを上げると、FWニール・モペイが下がりながら頭で合わせる。GKレノは反応できず、ブライトンが勝ち越しに成功した。
アーセナルはサイドの守備が弱かった。前半はエジルとオーバメヤン、後半からペペが右サイド、途中からはマルティネッリが左サイドに入った。どの選手も自陣に攻め込まれたときの戻りは遅く、サイドでは不利な状況を作られてしまった。
この選手起用はウナイ・エメリ前監督の時から変わらない。サイドアタッカーの人選は適しているのだろうか。後半の最初は守備の強度が高かったが、彼らはそれを90分続けることはできない。この試合でもプレスは次第に低下していき、相手にサイドの優位性を与えていた。
勝ち越したブライトンは体を張って相手の攻撃を凌ぐ。アルザテに代えて193cmの長身DFシェーン・ダフィーを投入して壁を築き、最後は5-4-1で守り切った。連敗を3で止め、4試合ぶりの勝利を掴んだ。
ビハインドはわずかに1点だったにもかかわらず、後半アディショナルタイムに席を立つサポーターも見られた。同点弾に望みを託すより、帰りの電車の混雑を避ける方が優先順位が高かったのだろうか。空席が目立つエミレーツ・スタジアムにはブーイングが響いた。
(文:加藤健一)
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