リバプールはターンオーバーを実行
守護神不在のリバプールはミッドウィークに行われたマージーサイドダービーに臨んだ。GKアリソンは前節ブライトン戦で、PA外でハンドの反則を犯して一発退場に。この試合ではGKアドリアンが先発メンバーに指名された。
アリソンは不動の存在だが、開幕戦で怪我をした影響で、約2ヶ月に渡って戦線を離脱した。アドリアンはその間、公式戦10試合に先発してその穴を埋めている。足下の技術でこそアリソンに劣るが、それを指摘するのは酷だ。32歳のスペイン人GKは評価されてしかるべきパフォーマンスを見せている。
リバプールは前節からGKを含めて5人を変更。中盤ではジェームズ・ミルナーがキャプテンマークを巻いてジョルジニオ・ワイナルドゥムとディフェンシブハーフで並んだ。4試合ぶりの先発となったアダム・ララーナはトップ下に入った。
試合はリバプールが前半に4得点を挙げて、5-2で勝利を収めた。ロベルト・フィルミーノとモハメド・サラーはベンチスタートで、ディボック・オリギは久々の先発起用に応えて2ゴール。怪我から復帰して今季リーグ戦初先発となったジェイダン・シャキリも得点を挙げた。控え組の活躍で連勝を6に伸ばしたリバプールは、2位レスターと8ポイント、マンチェスター・シティとは11ポイントを離して首位を独走している。
低迷するエバートンは、前節に続いて3バックを採用。だが、ロングボールは入れ放題で、カウンターはし放題。守備がまったく機能していないエバートンは、35分に選手を交代。DFジブリル・シディベに代えてMFベルナールを入れ、4-4-2に形を変えたが、その後も2失点。18位に転落し、マルコ・シウバ監督の立場も危うくなった。
両チーム合わせて6点が入る乱打戦
先制点は6分に生まれる。自陣からのカウンターでララーナからマネにつなぐと、ディボック・オリギへスルーパスが通る。オリギはワントラップでGKをかわして左足でゴールに流し込んだ。
17分に今度は自陣のトレント・アレクサンダー=アーノルドから、マネへと対角にロングパスが通る。マネはタイミングを窺いながらカットインすると、ダイアゴナルに走り込んだシャキリへとパス。これをシャキリは左足で決めて追加点を奪った。
エバートンは21分に右CKからDFマイケル・キーンが1点を返す。しかし31分、デヤン・ロブレンのロングボールにオリギがDFの裏に抜ける。右足でGKの頭を越すシュートは3点目のゴールとなった。
相手のクロスをフィルジル・ファン・ダイクが跳ね返すと、マネを経由してアレクサンダー=アーノルドが相手陣内に攻め込む。最後はペナルティーアーク付近でボールを受けたマネが、左足で4得点目を決めた。
前半アディショナルタイムにエバートンはベルナルジのクロスにリシャルリソンの方に当たったボールがゴールに。点差を2点として前半を終えたが、試合の大勢はハーフタイムで決したと言えよう。
突出するマネの得点力とアシスト力
この試合で1得点2アシストの活躍で攻撃陣を牽引したのはマネだ。サラー、フィルミーノをベンチスタートにしながら大量得点が生まれた理由を、マネの存在抜きには語れない。
80分にはヘンダーソンのロングパスがDFラインの裏に抜け出したマネに通ったが、惜しくも右に外れてダメ押しとはならず。84分にもGKと1対1の場面になったがシュートを打てず。
思い返せば、昨季前半戦まではこのような1対1を決め切れないシーンをよく見せていた。スタッツで比較してみても、リバプール加入から2シーズンで18%だったシュート成功率(得点数/シュート数)は、得点王を獲得した昨季から今季にかけて25%まで上昇。ゴール数自体も23得点から31得点に伸びている。この日の終盤は集中力が切れてしまったか、以前の悪癖が顔をのぞかせたが、全体を通してみれば決定力は改善されている。
さらにマネはアシストセンスが高い。データサイト『WhoScored』によるリーグ戦でのシュートにつながるラストパスの数は、1試合平均2本を記録。サラーの1.5本、フィルミーノの1.2本を上回る数字を残している。アシストは今季4つとなり、フィルミーノと並んでいる。
フィニッシュの精度が改善されたマネには、相手のマークも厳しくなる。しかし、それをマネは逆手に取ってラストパスを送ることができる。相手の寄せが激しくても、軽やかなフェイントで相手の重心を移動させ、逆をとって隙間を生むことができるのだ。
守備でもプレスバックを厭わず、ボール奪取能力にも秀でる。1試合あたりのタックル数2、インターセプト数0.4はともにフィルミーノとサラーを上回り、ときにはサイドハーフに落ちて守備をこなすことができる。欠点が見当たらないほど、すべてのプレーが高次元なのだ。
2日に発表されたバロンドールでは、4位に入った。それぞれチーム内の同ポジションの中では最も高い順位だった。「来年はそこでバロンドールを勝ち取れるように努力を続けるよ」とコメントを残したマネは、直後の試合で自らの真価を証明した。
(文:加藤健一)
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