「オリジナル」のプレースタイル
――渡辺選手がFC東京を認識し始めたのはいつ頃ですか?
渡辺剛(以下、渡辺)「埼玉県に住んでいたので小学校低学年のときは浦和レッズの試合を観に行っていたんですけど、FC東京サッカースクールに通い始めて2年目の小学校4年生くらいのときになると、チーム単位で観に行って『カッコいいなぁ』と思いました。誰かというよりはチーム全体を観ていたので、誰か特定のファンというわけではなく、ざっくり観ていた(笑)という感じです。中学3年生くらいになると、ナオさんが輝いているなぁということもわかり始めました。攻撃の選手が好きだったので」
石川直宏(以下、石川)「そうなんだ。じゃあ、こういう選手になりたいとか、ここを盗もうという感覚じゃなかった?」
渡辺「誰かセンターバックの選手のプレーを観て参考に、とかはないですね」
石川「オリジナルなんだね。オレもそうかもしれない。理想はスター性も含めてカズさんだったけれど、ドリブルからのシュートというプレーは自分自身でつくり上げていったし。剛も自分のものを大事にしているのかな、と」
渡辺「そうですね。全て独学なので。ヘディングも誰かの真似ではなく、練習でタイミングを掴んできたし。全部自分の感覚です」
――U-22日本代表に入って、トップの試合に出るようにもなり、でもまだ突き詰めていくところはある?
渡辺「そうですね、やり尽くした感じではないです。まだ試合に出させてもらっているという感じが残っているところがよくないなと思っていて、誰かに頼っている部分が自分のなかにある。それは試合中にどんどんなくなっていくものだと思うんです。FC東京でしっかりとプレーしていれば代表でもプレーできないことはない、と感じたので、まずはFC東京でしっかりやりたいなと」
「先に跳ばないとヘディングは成立しない」
――渡辺選手が中央大学から特別指定で加入した年と、石川さんがCCを始めた年は奇しくも同じ2018年。間近で見続けてきてどういう印象ですか?
石川「どういう特長があるのかなと見ていましたが、ヘディングは間違いなくすばらしいと思いますね。ジャンプのタイミングと、空間認知力と。逆に、先に跳びすぎてファウルになっちゃう(笑)」
渡辺「それが課題でもあります(笑)」
石川「でもあのタイミングで跳べる選手、なかなかいないですよ」
――バネとか身長だけじゃないんですね。
渡辺「そうですね。相手より先に跳ばないと僕のヘディングは成立しえないので。ちょっとでも先に跳ぶと相手は嫌がって跳ばない。それを狙って先に跳んだりとか考えてプレーしています。できるだけ空中で待てるようにしたりとか。」
石川「あと、驚いたのは1対1の対応ですね。特にひっくり返ったとき(の自陣に戻りながらの守備)。スピードと、寄せる距離感とか角度とか。ひとりで解決できちゃう部分もある。しかも落ち着いている。決して慌てない。自分のディフェンスの強みは?」
渡辺「正直、最後のところでやらせなければいいと思っています。崩されても真ん中を閉じられればいいと。うまく取れなくても粘って自分にシュートが当たればいいという感じです。一回抜かれても失点しなければいいと、次のチャレンジに向かう」
石川「だからよけいな力が入っていないんですよ。そこで全部ガツンと行って取ろうとして、そこで終わってしまうのではなく対応できているから。先輩の吉本(一謙)は全消しと言われていたけれど(笑)、最後のところであれが抑えられると、守備で盛り上げられるというのはある。(スタンドが)沸くじゃない」
渡辺「あれが楽しい。そういうところに守備の楽しさが詰まっているので、それでチームも盛り上がる」
(取材・文:後藤勝)
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