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魅力に乏しいフランス代表。あのカンテもグリーズマンでさえも振るわず…世界王者に一体何が?

ヨーロッパでは、来年開催されるEURO2020(欧州選手権)の最終予選が行われている。昨年のロシアワールドカップ制覇を果たしたフランス代表も、危なげなく予選通過を決めている。しかし、その内容はお世辞にも良いとは言えない。むしろ、格下のモルドバに苦戦するなど、世界王者の輝きは失われつつある。レ・ブルーに、一体何が起こっているのか。(取材・文:小川由紀子【フランス】)

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

モルドバ相手に大苦戦

フランス代表
フランス代表は格下のモルドバ代表に勝利も…【写真:Getty Images】

 現在、欧州では来年のEURO2020(欧州選手権)に向けた最終予選が行われている。

 グループHでトルコに次ぐ2位につけていたフランスは、11月14日、トルコが一足早い試合で3位のアイスランドに0−0で引き分けた時点で、トルコとともに本大会への出場が確定した。よって残る2戦、モルドバ戦とアルバニア戦は、フランスにとってはグループ首位の座をかけた戦いに。

 ところが、最初の一戦、11月14日にスタッド・ド・フランスで行われたモルドバ戦は、いきなり開始8分に失点するという苦しい展開になった。

 1点をリードすると、モルドバは10人全員ががっちり引いて万全な守備体制に。攻撃をしかけようにも、ゴール前では常に圧倒的に数的不利の状況になるから、キリアン・ムバッペら精鋭を擁していても、そうそうゴール前には攻め込めない。

 そんな苦しい展開の中、35分にアントワーヌ・グリーズマンのフリーキックを起点にラファエル・ヴァランがヘッド弾を押し込み、ようやく同点に追いついた。のだが、ゴール前のごちゃごちゃをビデオで見てみると、グリーズマンのFKをキャッチしようとジャンプし(そしてボールをキャッチしていた)相手GKに、ジルーの体が思い切りぶつかっていて、というより、押すような感じになっていて、バランスを崩したGKはボールを落っことしてしまい、はね上ったボールをヴァランがヘッドで押し込んだ、という、実に怪しいものだった。

 ビデオを見るかぎり、得点は無効、ジルーにファウル、という判定が妥当な感じだ。

「これが世界王者の試合ぶりか…」

 試合後、10月末に着任してこの日が初陣だったモルドバのエルギン・フィラット監督は会見場で「あんなゴールが認められていいものか! サッカー界のためにも、こんなことは断じて間違っている! あってはならないことだ!」と、清々しいまでに怒りをぶちまけた。

「ハーフタイムには、私の携帯には500以上のメッセージが入っていたよ。みんなこんなことがあっていいのか! と憤っていた」と。

 フィラット監督は、この失点のあと、選手たちの士気がガクっと下がってしまったことが、なにより痛かったと話した。どんな状況でもメンタルを維持するのは、トップレベルの選手に求められる資質ではある。とはいえ「そりゃないよー」とは思ってしまうだろう。それが人間というものである。

 フランス人記者たちも、「お怒りはごもっとも」という様子でフィラット監督の発言を聞いていた。そして、この試合のハイライト映像につけられたコメントを見ても「フランス人でなければキレる」、「これが世界王者の試合ぶりかと思うと恥ずかしい」、「モルドバはよく戦った」……と、フランスサポーターさえもが書き込んでいた。

 試合は、渦中の人、オリヴィエ・ジルーが後半戦にPKを決めて、レ・ブルーが2−1で勝利。……とまあ、結果をみれば勝ちは勝ちだったのが、書き込みのコメントにもあるとおり、この試合のフランスはなんとも魅力に乏しかった。とくに決定的なのは、中盤での支配力のなさ。

 エンゴロ・カンテはボールロストを連発(相手のインターセプトもうまかったが)。彼とダブルボランチを形成したコランタン・トリッソは、通常は器用で気の利く、ボールホルダーが「誰かパス受けに来てほしい」と思うタイミングで良い場所にすっと入り込めるタイプ。なので、4-3-3の中盤の逆三角形の一角などが向いている気がするが、この日のようなかなり低めの位置では、攻撃アクションに与える彼のインパクトが生かしきれていない。

 ここで欠場が惜しまれたのは、マンチェスター・ユナイテッドで足首を負傷中のポール・ポグバだ。モルドバは、かなりアグレッシブな戦いぶりだったから、フランスにもポグバのような、存在感も破壊力もあるタイプが、ピッチに一人は欲しかった。

エースのグリーズマンも不調

アントワーヌ・グリーズマン
フランス代表のエースであるアントワーヌ・グリーズマン【写真:Getty Images】

 そして、エースのグリーズマン。

 今シーズン加入したバルセロナで、ここまで11試合出場で4得点、3アシスト。巷では『自分が一番やりたいポジションにリオネル・メッシがいるため、思う存分力が出せない』、『彼に1億2000万ユーロも使わず、ネイマールを取り戻してほしかったとメッシとスアレスがご立腹なため、攻撃トリオを形成できず』など、いろいろ言われているが、生き生きとプレーできていないのは感じられた。(それに若干ウェイトオーバーな気も? ストレスか?)

 彼は以前、インタビューで、「自信をもってシュートに挑むには、ゴールをコンスタントに決めている状態にあることが重要」と話していたから、クラブで燻っている影響が代表にも及んでいるのかもしれない。

 記者席ではフランス人記者たちが、「グリーズマンがこの試合でもゴールを決めなかったらちょっと深刻だ」と話していた。

 結局ノーゴールに終わり、代表7戦連続ノーゴールは、14年11月から15年9月にかけての時期以来。当時は代表デビューしたて、現在はエース級、という状況の違いを考えると、振るわない状態であることは確かだ。

 ディディエ・デシャン監督は、「前半戦は良くなかったが、後半は、動きや連係も良くなり、勝利という結果を導き出せて満足」と話した。

 少し気になるのは、フランス代表のゴールは、この試合の2本を含め、6点連続でPK、CK、FKから、という「止まった瞬間から」生まれたもの。動きの中から相手DFを崩して決めたものではない。

 この日、ジルーがPKを決めた後で、左サイドでのキングスレー・コマンとルカ・ディーニュの連係のあと、ムバッペ、グリーズマンへとリズミカルに展開したシュートチャンスがあった。グリーズマンのシュートは枠を外れたが、これだけのメンバーがいたなら、こういうシーンがもっとあっても良いはずだと思う。

 ただ、モルドバもしかり、格下とおぼしきチームは、フランス相手だとガチガチに守りにくるので、セットプレー以外のチャンスは得にくい。むしろ強豪とのオープンゲームのほうが、流れの中からのゴールは生まれやすかったりする。

 ともあれ、この勝ち点3でフランスはグループH首位に浮上。最終戦は、17日(日)のアルバニア戦(アウェイ)だ。

 勝ち点2差で追うトルコは、同じくアウェイでアンドラと対戦する。首位の座が入れ替わる可能性は、まだまだありそうだ。

(取材・文:小川由紀子【フランス】)

【了】

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