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中島翔哉が直面する厳しい現実。主力の規律違反とともに露見、ポルトの「3番手」という序列

けが人の次はチームの和を乱しかねない規律違反。ポルトが突然のトラブル続出に揺れている。そんな中で行われたボアヴィスタとのダービーマッチに、中島翔哉は公式戦3試合ぶりの途中出場を果たした。図らずもそこで露見することになったのはチーム内での序列と、厳しい現状だった。(取材・文:舩木渉【ポルトガル】)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

早朝までパーティーはルール違反

中島翔哉
ポルトに所属する日本代表MF中島翔哉【写真:Getty Images】

 ポルトに激震が走った。リーグ戦の第11節、ボアヴィスタとのダービーマッチ当日の朝の新聞各紙が紙面を大きく割いて報じたのは、所属選手の規律違反についてだった。

『レコード』紙の見出しは「家を離れてのお祭り」、ポルト寄りで知られる『オ・ジョーゴ』紙は「家を離れての夜」と4選手の写真付きで伝えた。

 事の発端はレンジャーズに0-2で敗れたヨーロッパリーグ(EL)のスコットランド遠征から戻った8日の夜。ポルトに所属するコロンビア代表MFマテウス・ウリベの妻の誕生日会が催され、参加したチームメイトも巻き込んでハメを外しすぎてしまった。

 選手たちに規律を求めるポルトでは、特別な予定がない限り「23時」を家に戻る門限として定めている。しかし、アルゼンチン代表GKアグスティン・マルチェシンは深夜1時半、同代表のDFレンゾ・サラビアは2時、コロンビア代表FWのルイス・ディアスに至っては朝5時までウリベ宅に滞在してパーティーを楽しんでいたという。

 身内だけのパーティーではあったが、ウリベの妻や他の出席者(ポルトの熱狂的サポーター団体員もいたようだ)のSNSでの投稿から4人の“夜更かし”がバレてしまった。8日はオフになり、ボアヴィスタ戦までの準備期間が9日の練習しかない状況で、クラブも対応に追われた。

 セルジオ・コンセイソン監督とピント・ダ・コスタ会長が4選手を呼び出し、厳しく叱責。彼らをボアヴィスタ戦に向けたベンチ入りメンバーから外す処分を下したと新聞各紙は伝えていた。

 確かに9日に行われたボアヴィスタ戦前日の指揮官による記者会見でルイス・ディアスとウリベについて個別の「状態」について質問が出るのは不自然で、そこに会長が同席して最前列で見ているのもさらに不自然に感じていた。理由は4選手の規律違反を地元メディアは掴んでいたからだった。

 ルイス・ディアスが欠場なら、中島翔哉にチャンスが回ってくるのではないか。実際に先発出場を予想する新聞もあった。しかし現実は甘くなかった。ボアヴィスタ戦では日本代表の背番号10にとって主戦場となる左サイドに、メキシコ代表MFヘスス・コロナが据えられた。

中島が3試合ぶりの途中出場

 アウェイに乗り込んだポルトのサポーターの数は、ホームチームのそれよりはるかに多かった。発煙筒も爆竹(ほぼ爆弾級の音)もいつもとは量が違う。ダービーマッチの異様な雰囲気で、中2日でメンバーも大きく変わっているポルトは、ボアヴィスタ相手に決め手を欠いた。9分にDFアレックス・テレスの強烈なミドルシュートで先制するも、なかなか後が続かない。

 そんな中、75分過ぎにウォーミングアップをしていた中島にベンチから声がかかった。アシスタントコーチのヴィトール・ブルーノから何やら長々と指示を受けた背番号10は、最後に指揮官から少しだけ言葉をかけたられた。手をジグザグに動かしてゴール方向を指したコンセイソン監督には、「自分の得意な形でどんどん仕掛けて、一発決めてこい!」という意図もあったかもしれない。

 DFマナファに代わって投入された中島は、左サイドに入っていきなり守備で見せ場を作った。全力スプリントで戻り、スライディングで相手の攻撃の芽を摘む。常に首を振って周りの状況を把握しつつ、守備時には的確なポジショニングを心がけていた。

 一方、肝心の攻撃面で目立つシーンはわずかだった。はっきりと中島の存在価値を感じられたのは、85分にオターヴィオとのワンツーパスでボールを前進させた場面くらい。得意の形でシュートを打つようなアピールのチャンスは訪れなかった。

 結局、このボアヴィスタ戦でわかったのは公式戦7試合連続でベンチスタートとなった中島のチーム内における立ち位置が、「左サイドの3番手以下」という厳しいものであることだった。現時点での主戦はルイス・ディアスであり、2番手はコロナのようだ。

 普段、コロナは右サイドバックの1番手として重用されており、そうなると中島はベンチからルイス・ディアスとの交代でチャンスが回ってくるのを待つことになる。ボアヴィスタ戦では背番号7のコロンビア代表ウィングが規律違反のためベンチ外となり、左サイドの攻撃的なポジションに入っていたコロナが右サイドバックに回るのと同時に中島がピッチに立った。

過去の“門限破り”の例にならうと…

 コンセイソン監督は常に「ベストメンバー」を重視し、比較的チームを固定して戦う方針のため過密日程でもカップ戦で大きくメンバーを落とすことはない。中島がなかなか出場機会を得られていないのは、チームの「勝利」という結果に目に見える形で貢献しきれていないからだが、もし今後出場時間を伸ばすなら短い出番でも貪欲にゴールやアシストを追求していく必要がある。

 今回、規律違反を犯したルイス・ディアス、ウリベ、マルチェシン、サラビアがいつまで欠場することになるかはわからない。ポルトでは昨季も同様の事例があり、今夏レアル・マドリーへと移籍したDFエデル・ミリトンが2月にポルトBに所属していた友人選手の誕生日パーティーに参加して“門限破り”を犯した。

 その際、ミリトンは直後の1試合でベンチ外となり、続く2試合はベンチからチームメイトのプレーを眺める羽目になった。同席していたBチーム所属のブラジル人選手たちも含め、シーズン終了とともに、全員何らかの形でポルトを離れたのは偶然だろうか(ミリトンはパーティーがあった2月末の時点で夏のマドリー移籍が内定しており、規律違反によって3月中旬の正式発表前に破談となる可能性もあったという)。

 今回は少し状況が違うとはいえ、南米出身の4選手にもし同等の処分が下るならば、代表ウィーク明けも規律違反の彼らが不在の可能性はある。しかも、『レコード』紙によればウリベの妻の誕生日パーティーにはさらにアレックス・テレスやコロナが参加していたといい、ポルトにとって欠かせない主力の2人にも今後何かしらのお咎めがあるのではないかと囁かれている。

 中島がポルトで置かれている現状が厳しいものなのは間違いない。日本代表として2試合に出場するためのキルギスと日本への長旅があることも考慮すると、10月の前例にならえば今月24日のカップ戦、ヴィトーリア・セトゥーバル戦はコンディション調整優先で起用を見送られる可能性も考えられなくはない。

 守備の柱だったぺぺがELのレンジャーズ戦で左太ももを痛めて3週間ほど離脱することが明らかとなったタイミングで、複数選手の規律違反でチームの結束が揺るがされる事態に陥っているポルト。中島にはそういった雑音に耳を貸すことなく、とにかくゴールを目指して突っ走ってもらいたいところだ。そして規律違反を犯した選手たちが今後どのような扱いを受けるのか、彼らの動向にも注目していきたい。

(取材・文:舩木渉【ポルトガル】)

【了】

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