ポルトガルのクラブに、2試合続けて苦しい展開
アーセナルは直近のリーグ戦で、クリスタル・パレスとウォルバーハンプトンと戦い、ともに先制しながら追い付かれて勝ち点を落とした。その間に行われたリーグ戦では、リザーブチームの選手を多く起用したリバプールと打ち合いになり、5-5でPK戦にもつれ込んで敗退。3戦連続で白星を掴めていない。
2週間前に行われた同カードでは、アーセナルがギマラエスに先制を許す苦しい展開を強いられた。途中出場のFWニコラ・ペペが芸術的なFKを2本決めて最後は逆転。なんとかEL3連勝を飾り、グループリーグ前半戦を折り返した。
アーセナルはこの試合で3バックを採用。前線には右からペペ、ガブリエウ・マルチネッリ、ブカヨ・サカ、中盤にはエインシュリー・メイトランド=ナイルズ、ジョセフ・ウィロック、ダニ・セバージョス、キーラン・ティアニー、最終ラインにはスコドラン・ムスタフィ、ソクラティス・パパスタソプーロス、ロブ・ホールディングという並びで、エミリアーノ・マルティネスがゴールマウスを守った。
両チームともにチャンスを決め切れず、スコアレスで試合終盤に突入した試合は、またしてもペペの左足からスコアが動く。右サイドよりの位置で得たFKをペペが蹴ると、ファーサイドでフリーになっていたムスタフィが頭で合わせる。80分に待望の先制点が生まれた。
しかし、ここまでELで勝ち点がないギマラエスが反攻に出る。右サイドをFWマーカス・エドワーズが切り込んでクロスを上げると、ファーサイドでFWロシーニャが頭で折り返す。これをFWブルーノ・ドゥワルチがオーバーヘッドで鮮やかにゴールを決めて、後半アディショナルタイムに同点をとした。
ギマラエスは、アーセナルを上回る16本のシュートを放ち、11本を枠内に飛ばしている。より多くのチャンスを作っていたのはポルトガルのクラブだった。しかし、アーセナル戦でホーム、アウェーともに、試合終盤のセットプレーから失点を喫して勝利を目前で逃している。
同点弾の後、残り僅かなアディショナルタイムで、ギマラエスは再び息を拭き返した。それだけに、キックオフからハードワークを続けていたが、最後のところで集中力を欠いてしまったのは悔いが残るところだろう。
最終ラインを回り続けるボール
アーセナルは、前回対戦と同様に力負けしていた。62%のボール保持率を記録しながら、放ったシュートはわずかに7本。ファーストシュートまでは23分を要した。
問題の現象としてはシンプルで、選手の距離感が悪すぎる。戦略かどうかわからないが、この日はビルドアップの過程で両ウイングバックが高い位置をとらず、3トップも開かずに中央にポジションをとっていた。
2人のセントラルミッドフィルダーは間のスペースを浮遊し、オフ・ザ・ボールの動きもほとんどない。ボールは5枚になったディフェンスラインを、弧を描くように回り続けるだけ。出口のないビルドアップは相手に奪われ、不用意なカウンターを何度も受けた。
攻撃に転じてもアーセナルの機能不全は目立つ。67分にアーセナルは自陣からロングカウンターを仕掛け、FWアレクサンドル・ラカゼットからペペにボールが渡る。ラカゼットはゴール前に走る。ギマラエスは7人が自陣に戻っている。ペペは味方を探すが誰もいない。サポートを得られないペペはボールを下げざるを得なくなり、カウンターは不発に終わった。
FWが孤立するというのは、サッカーではそう少なくない頻度で起こる。ただ、この試合のアーセナルは、言ってみれば全員が孤立していた。サポートを得られないボール保持者は個での打開を強いられて、安易なボールロストを何度も繰り替えした。
愚行はプレー外でも…
愚行はそれだけではなかった。
前半17分、スローインを得たアーセナルは、メイトランド=ナイルズがスロワーの位置につくと、副審から何やら注意を受ける。副審も首元を指し、メイトランド=ナイルズに何かを命じている。
どうやら、首にチェーンのアクセサリーをつけていたようだ。装飾品をつけてはいけないことくらい、トップレベルの、トップカテゴリーの選手なら知っていて当然。どんな理由であれ、彼の行動は試合の進行に水を差した。
先月27日のクリスタル・パレス戦でMFグラニト・ジャカは、交代を命じられた際に観客に挑発ともとれる態度をとってしまった。5日の前日会見でウナイ・エメリ監督は、ジャカに代わって、FWピエール=エメリク・オーバメヤン、DFエクトル・ベジェリン、FWラカゼット、MFメスト・エジルの4人の中から、オーバメヤンを第1主将に任命したことを明言した。
思い返せば、オーバメヤンはドルトムント時代にチームの規律違反を繰り返し、処分を受けていた。彼はキャプテンに適しているかどうかは疑問が残る。
27日以降の公式戦を欠場していたジャカはポルトガルへの遠征に帯同していない。直近の公式戦に2戦連続で先発していたエジルも遠征メンバーには含まれなかった。ラカゼットとエクトル・ベジェリンはベンチスタートとなり、この試合では24歳のホールディングの腕にキャプテンマークが巻かれた。
アーセナルは3勝1分でグループ首位をキープ。現地7日に行われるスタンダール・リエージュ対フランクフルトの結果次第では決勝トーナメント進出が決まるが、勝ち点にパフォーマンスが伴っていない。解決策を見出せないアーセナルは、メイトランド=ナイルズが首につけていた鎖のように、身動きが取れなくなっているようだ。
(文:加藤健一)
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