久保建英は5試合ぶりの先発も…
降格圏のわずか上の17位にいるマジョルカは、ホームでは3勝2敗2分と善戦している。一方で、地中海西部の島国からイベリア半島への移動を強いられるアウェイでは、今季4戦全敗と苦戦を強いられている。2-2のドローに終わったホームのオサスナ戦から中2日。スペイン北西部最大の都市・バジャドリーに赴いた。
マジョルカのビセンテ・モレーノ監督は、ここまで全試合に先発してきたMFイドリス・ババと、10試合に先発出場するMFアレイシ・フェバスをベンチに置き、18歳のMF久保建英と32歳のMFマルク・ペドラザを先発で起用。前節で出番がなかった久保は、アラベス戦以来5試合ぶりに先発し、4-1-4-1の右サイドハーフを務めた。
試合は40分にホームチームが先制する。バジャドリーはMFミチェルが右CKを蹴ると、アウトスイングのボールをファーサイドで待つDFホアキン・フェルナンデスが頭で合わせる。高い打点から放たれたボールはゴールネットを揺らした。
前半は最少得点差で折り返したが、マジョルカは後半早々に追加点を許してしまう。マジョルカのGKとDFラインの間に蹴られたボールに対して、初スタメンとなったGKとDFがお見合い。ルーズボールにGKファブリシオが飛び込んだが、相手FWの足にぶつかってしまいPKを献上。FWエネス・ウナルのキックはGKファブリシオの手に当たったが、ゴールネットに吸い込まれた。
2点を追うマジョルカは徐々にフラストレーションを溜めていく。後半だけで4枚のイエローカードをもらい、それに応戦したバジャドリーにも5枚の警告が出された。
試合はアディショナルタイムに途中出場のFWサンドロ・ラミレスが豪快なミドルシュートを蹴り込んで3-0。直後に試合は終了して、マジョルカはリーグ戦7敗目を喫した。
チーム最多のボールロスト
マジョルカの攻撃は基本的に、MFラーゴ・ジュニオルがいる左サイドから組み立てられることが多い。この試合の前半は、久保も逆サイドから流れてきて、トップ下(10番)のような役割でボールに絡む。左サイドから久保のスルーパスにラーゴ・ジュニオルが抜け出す場面もあったが、効果的な崩しを見せることはなかなかできなかった。
後半に入ると、久保が左サイドに流れる機会は減り、右サイドでボールを持つ場面も増えた。しかし、前半同様に攻撃の形を作ることができず。チームは久保がプレーした68分の間に、マジョルカは枠内シュートすら放つことができなかった。
55分に久保はタッチライン際から、右足でグラウンダーのクロスをGKとDFの間に入れるが、ゴール前に飛び込んでくる味方はゼロ。左サイドのMFラーゴ・ジュニオルからも似たボールが入るが、チャンスには結びつかない。
59分に、久保は敵陣右サイドのハーフスペースでボールロストすると、マジョルカはカウンターを受けてしまう。最後はGKファブリシオが防いで事なきを得たが、久保のボールロストからピンチを招いてしまった。
久保建英は68分にMFアリダイ・カブレラと交代でベンチに退いた。データサイト『WhoScored』によると、この日は2本のシュート、1本のキーパスを記録したが、ボールロスト数はチーム最多の5つ。久々の先発出場のチャンスだったが、68分のプレーでアピールすることはできなかった。
350分以上に渡って続く無得点
チームは今季7度目の無得点に終わった。振り返ると、前節のオサスナ戦でこそマジョルカは2得点を挙げたが、どちらもPKによるもの。オープンプレーからの得点となると、レアル・マドリー戦の7分にラーゴ・ジュニオルが決めた得点以来、350分以上に渡って無得点が続いている。
久保の問題というよりは、チームの全体で機能不全に陥っている。セグンダB(3部)からセグンダ(2部)に昇格し、1年で5位となりプレーオフを勝ち上がってプリメーラ(1部)昇格を果たしたチームには、2年前に3部を戦っていた選手も多い。戦力を考えると苦戦は戦前の予想通りともいえるが、チームは活路をなかなか見出せていない。
チームメートも同様に結果を残していないのだが、久保のライバルはチームメートだけではない。所属元のレアルでは、同い年のブラジル人FWロドリゴが、9月25日にデビューし、UEFAチャンピオンズリーグでもプレー。公式戦5試合で2得点を挙げて、徐々に出場機会を増やしている。
マジョルカは1週間後にビジャレアル戦を戦い、代表ウィークのために2週間の中断期間へと突入する。チームには代表選手が多くないだけに久保にとっては不利な状況となるが、置かれた状況で結果を残すしか、生き残る道はない。日本代表での結果ももちろん指揮官の采配に影響を及ぼすだろう。
「出場時間をプレゼントすることはない」。モレーノ監督は、久保が欠場したレガネス戦の試合後に、この言葉を残している。18歳の日本代表にとって、結果がなによりも求められている。
(文:加藤健一)
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