元オランダ代表FWのマルコ・ファン・バステン【写真:Getty Images】
UEFA欧州選手権(EURO)やチャンピオンズリーグ(CL)、リーグ戦など様々なタイトルを獲得し、バロンドール受賞3回を誇るなど個人賞も総なめにした元オランダ代表FWのマルコ・ファン・バステン。1995年に負傷の影響により30歳という若さで現役を引退しているが、今なお「歴代最高のストライカー」としてサッカー界にその名を刻み続けている存在だ。
そんな世界屈指のFWであるファン・バステンは現役時代に様々な試合で印象的なパフォーマンスを見せてきたが、中でも伝説の一戦となったのが1992/93シーズンのCL・グループリーグB組第1節のIFKヨーテボリ戦である。
当時のCLは予選を勝ち上がった8チームが2グループに分かれ、各組で1位となったチーム同士が決勝で対戦するというレギュレーションであり、グループリーグでの戦いは非常に重要なものとなっていた。そのため、11月25日にサン・シーロで行われたIFKヨーテボリ戦は、大会制覇を狙っていたミランにとって絶対に落とせない、大事な初戦となっていたのだ。
しかし、独特な緊張感からか、ミランはヨーテボリを相手に攻めるものの、なかなかゴールネットを揺らすことができない。シュートがポストに嫌われたり、スウェーデン代表GKのトーマス・ラヴェリのファインセーブに阻まれたりと、なぜかゴールが遠かった。30分過ぎまで0-0と、ミランは思わぬ苦戦を強いられたのだ。
それでも、どこか嫌な空気を払拭したのが背番号9、ファン・バステンであった。33分、右サイドを崩し、中央に構えていたFWジャン=ピエール・パパンにボールが渡ると、ペナルティエリア内にファン・バステンが走り込む。その動きを見逃さなかったパパンが背番号9へラストパスを送ると、相手DFに倒されながらもファン・バステンがシュート。これがゴールネットに突き刺さった。
待望の先制ゴールを奪ったミランは、そこから一気にヨーテボリを突き放しにかかった。そこで再び躍動したのが、オランダ代表FWであった。
53分、右サイドでボールを受けたパパンがグラウンダーのクロスを送ると、これに反応したファン・バステンがボックス内で倒されPKを獲得。これを自らが冷静に沈め、この日2点目を奪取したのだ。
そして、世界を驚かせたのが61分のゴール。この得点シーンは先月31日にファン・バステンの誕生日を祝福し、欧州サッカー連盟(UEFA)の公式ツイッターが改めて動画を投稿するなど、今なお多くのサッカーファンの脳裏に焼き付いている伝説のゴールだ。スウェーデン代表GKのラヴェリもお手上げのスーパーシュートは圧巻であった。
こうしてハットトリックを達成したファン・バステンであったが、その勢いは止まらない。63分には中央でボールを受けたファン・バステンがMFフランク・ライカールトへ浮き球のパスを送る。ライカールトは相手DFに倒されボールに触れることができなかったが、こぼれ球を拾った背番号9がそのままドリブルでGKをかわし、無人のゴールへシュートを流し込んだ。
ファン・バステンの活躍もあり、ミランはヨーテボリに4-0と大勝。オランダ代表FWは同大会で1試合4得点を記録した初めての選手としてサッカー界の歴史に新たな1ページを刻んだのである。
当時のミランを率いていたファビオ・カペッロ監督は「私なら今夜のファン・バステンに9.5点をつけるよ。(満点でないのは)完璧というものは存在しないと思っている、という理由だけだ」とオランダ代表FWを大絶賛していたという。世界に与えたインパクトは、それほど大きかった。