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エジルはアーセナルの「駒」か「軸」か? 先発起用で際立ったデメリット、指揮官の不可解な采配

プレミアリーグ第11節、アーセナル対ウォルバーハンプトンの試合が現地2日に行われ、1-1の引き分けに終わった。MFメスト・エジルは、リーグ戦でおよそ1ヶ月半ぶりの先発となったが、チームを勝利に導くことができず、アーセナルはこれで3戦未勝利となった。1点をリードしたものの、ウナイ・エメリ監督の不可解ともいえる選手交代の直後に悲劇は起きた。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

歯車が噛み合わないアーセナル

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アーセナルのMFメスト・エジル【写真:Getty Images】

 10試合を戦ってわずか4勝、クリーンシート(無失点)はわずかに2試合のみ。そのチームの不調と比例するかのように、ウナイ・エメリ監督の起用法には疑問の声が噴出している。さらに、前節で途中交代を命じられた際に、サポーターのブーイングをMFグラニト・ジャカ挑発で応戦してしまった。ジャカは後日謝罪したが、チームはうまくいっているとは言い難い状況に陥っていた。

 両チームはこの試合を戦う3日前にカラバオカップをそれぞれ戦っている。アーセナルは5得点を奪ったものの、20歳以下の選手を5人も先発起用したリバプールに2度のリードを追いつかれ、PK戦の末に敗退。控え組でアストン・ビラ戦に臨んだウォルバーハンプトンも、1-2で敗れて大会から姿を消した。

 アーセナルは3日前の試合から9名を変更。ジャカはベンチを外れ、MFメスト・エジルがリーグ戦初先発となってトップ下に入り、4-3-1-2の布陣。対するウルブスは全選手を代えている。

 リーグ戦では2戦勝ちがないチーム同士の対決となったこの試合。先に試合の主導権を握ったのはウルブスだった。一方のアーセナルは、初シュートまで18分を要することとなる。しかし、そこから徐々にリズムを作ると、DFダビド・ルイスのクロスをFWアレキサンドル・ラカゼットが収め、最後はFWピエール=エメリク・オーバメヤンが決め、21分に先制に成功した。

エジルの起用は諸刃の剣

 エジルは縦横無尽にピッチを動き回ってボールを配球。データサイト『Whoscored.com』によると、エジルのパス本数は両チーム最多の95本をマークしている。攻撃面ではエジルらしさを随所に見せていた。

 しかし、この試合でアーセナルは、ウルブスに25本ものシュートを許した。トップ下にエジルを起用するということで、どうしても中盤の守備が緩くなってしまう。

 加えて、この試合で想定外だったのは、MFマテオ・ゲンドゥジのパフォーマンス。中盤の底でプレーしたが、不用意なボールロストから何度もピンチを招いた。持ち前のダイナミックなプレーと裏腹に、ゲンドゥジのプレーは精彩を欠いていた。

 ボール保持率が高まるとともに、エジルの存在感は増していく。ただ、この試合の序盤や、後半のように、相手にペースを握られると、エジルは次第に試合から消えていく。

 これまでも分かり切っていたことだが、エジルはエジルであって、チームにとっては諸刃の剣。チームの軸に据えるのであれば、今までのように多くのものをチームにもたらすだろう。しかし、エメリがしているように、1つの駒として起用するのであれば、デメリットがより際立ってしまう。

なぜトレイラを下げた?

 デュエル勝率72%を記録したウルブスは、スタッツが示す通りに激しい1対1から相手を押し込んで敵陣へと攻め込んでいく。スローインを受けたMFジョアン・モウチーニョがクロスを上げると、190cmのFWラウール・ヒメネスがヘディングシュート。ウルブスが76分に試合を振り出しに戻した。

 同点に追いつかれる過程で、アーセナルの指揮官は不可解ともいえる采配を見せた。

 ラカゼットは60分にベンチに退き、FWガブリエウ・マルチネッリを投入。さらに、MFルーカス・トレイラを下げてFWブカヨ・サカを投入。途中出場の2人の18歳を両サイドに置き、4-2-3-1へとシステムを変更している。

 逃げ切りを狙ったのか、追加点を狙ったのか、エメリの意図するところはわからない。4-2-3-1にすることで、エジルの守備での負担は軽減されるが、それならばなぜトレイラを下げてしまったのか。トレイラはエジルの弱点を補うべく走り回っていたのだが。果たして、システム変更のおよそ3分後、アーセナルは同点弾を浴びている。

 エメリの起用法は一貫性がない。「昨シーズンもそうだった」と言えなくもないのだが、昨シーズンはそれがうまく機能した試合も多く、UEFAヨーロッパリーグでは決勝に進んだ。結果論でしか書くことはできないが、ピッチ上に繰り広げられていた光景を見るに、エメリの采配は失敗に終わっている。

(文:加藤健一)

【了】

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