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鎌田大地が劇的成長を遂げる理由とは? 現地で直撃「自分は上に行ける」。自らに感じる可能性【欧州組の現在地(2)】

今シーズン、欧州各国リーグでは多くの日本人選手がプレーする。若手からベテランまで、様々な思いを胸に挑戦する選手たちの現在地について、日本代表を長く取材する熟練記者がレポートする。第2回はフランクフルトのMF鎌田大地。(取材・文:元川悦子)

シリーズ:欧州組の現在地 text by 元川悦子 photo by Getty Images

点だけにこだわったベルギーでの成果

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フランクフルトの鎌田大地【写真:Getty Images】

「(鎌田)大地はヨーロッパに来て3年目。いろんな経験をして間違いなく成長していると思います。今の年齢だと右肩上がりと言うか、垂直くらいに上がっていく時期で、非常にいい段階にありますね。

 ただ、大事なのは成長を継続させていくこと。1シーズン続けてプレーするのはもちろん、何シーズンも続けていくのが一流の選手。そういう意味でもこれからの彼が楽しみです」

 フランクフルトの最終ラインを統率する35歳のベテランリベロ・長谷部誠が表情を輝かせながら語ったように、今季の鎌田大地の活躍ぶりは目を見張るものがある。

 2017年夏にサガン鳥栖からフランクフルト入りした当初、彼はニコ・コバチ前監督(現バイエルン)に「非常に才能ある選手」と認められ、フライブルクとの開幕戦でスタメンに抜擢されるほどの高評価を受けていた。

 だが、序盤の好調を維持できず、わずか3試合出場で1シーズン目を終えることになった。フィジカルやプレースピード、強度などあらゆる壁にぶつかった彼は、ドイツの難易度の高さを痛感することになった。

 その苦境を乗り越える大きなきっかけとなったのが、昨季のシント=トロイデンへのレンタル移籍だ。やや格下のリーグで強度やスピードにいち早く適応した鎌田は、シーズン通算15得点をゲット。

「去年は点を取ってる以外は何もしてないと思う。上(ドイツ)に戻るために僕自身、点が欲しかったので、点だけにこだわりました」と語るように、明確な数字を残して1年でフランクフルトに返り咲くことに成功した。

 今季開幕前はジェノアへの移籍話がメディアを賑わせたが、結果的にドイツに残り、今季序盤戦はトップ下の主力としてコンスタントに使われてきた。フランクフルトは7月25日のUEFAヨーロッパリーグ(EL)2次予選からシーズンをスタートさせているが、鎌田はここまで公式戦18試合中17試合に出場(うち先発13試合)している。

本人が語る「今季レギュラーを取れている理由」

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昨季はシント=トロイデンで15得点を挙げた【写真:Getty Images】

「最初のインターナショナルブレイクに入るくらいまでは体中のいろんなところに痛みがあった。全てのプレーの強度が上がったことを実感しました。僕は今まで足の裏の靴擦れなんかしたことなかったけど、スプリントが増えたり、1個1個の動作の強度が上がったのは間違いない。

 フランクフルトのサッカーがちょっと特殊なプレミアリーグチックなところも影響しているのかなと思います。そのレベルにようやく慣れてきて、今は体には悪いところはないですけど、やっぱブンデスの強度は高い。そういう中で戦えてるのは大きいと思います」と彼は2シーズンぶりに復帰したドイツでの序盤戦をこう振り返った。

 そんな鎌田だが、10月の日本代表シリーズ参戦直後の18日のレバークーゼン戦は出番なしに終わった。このため、24日のELスタンダール・リエージュ戦はスタメン復帰が微妙と見られた。

 しかし、指揮官はグループリーグ突破を左右する大一番に彼を抜擢。その重要ゲームで、鎌田は高精度のFKとCKで2つの得点をアシストしてみせる。そればかりか、後半から一列ポジションを上げてバシエンシアと2トップを組み、引いて守る相手を脅威に陥れ、攻撃の流れをガラリと変える働きも披露。

 長谷部に「大地はサッカーのインテリジェンスが非常に高い。ボールの引き出し方も走る場所もいいので、出し手としても非常にやりやすい」と言わしめるほどの気の利いた一挙手一投足を見せつけたのだ。

 結果的に彼らは2-1で勝利。試合後には鎌田のところに外国人メディアが集結した。

「今季レギュラーを取れている理由」を問われ、本人は「昨年シント=トロイデンで得点を入れて帰ってきたことで、みんなから信頼を得ることができ、プレー自体もやりやすくなかった。気持ちの面が大きいのかなと思います」と回答。目に見える結果が急成長の原動力になったことを明かした。

 とはいえ、ベルギーで面白いように取れていたゴールが今季ドイツではなかなか奪えていないのも事実。ここまでの得点は8月11日のDFBポカール1回戦マンハイム戦の1点のみ。けれども、鎌田自身は「それも進化の過程」だと冷静に捉えている。

「まだ本当の上のレベルは見えてないんで」

「今年は基本的に中継役というか、チームがカウンターを繰り出す時の起点になることがすごく多いんです。10番の役割(トップ下)を担っている僕が動き回って、僕経由でダ・コスタやコスチィッチというウインガーにボールを渡してクロスを入れる攻めも増えている。

 フランクフルトの攻撃も、去年のアンテ(・レビッチ)とコスティッチを軸とした速いカウンター主体ではなくなっているので、工夫が必要なのは確か。そういう中でやっている分、今年の方が去年よりプレーの幅はすごく広がっていると感じています。

 もともと自分は中盤の割に得点に絡めるタイプだとは思うんで、焦らずやっていけばシーズン通して2ケタは行かなくても、7〜8点くらいは行けるのかなと。アシストと得点でシーズンが終わった時に『8・8』か『7・7』に持って行ければいいシーズンになる。これからそこを目指してやっていきたい。今は我慢しながら待たないとダメかなと思います」

 時間を重ねて力を蓄えることで、自分が思い描くトップ下の理想像を体現できる…。鎌田はそう信じている。

 その自信こそが、フランクフルトでレギュラーを堂々と張れている最大の要因と見ていいだろう。今の調子でプレーの幅を広げ、得点やアシストを増やしていけば、より高いレベルの舞台も見えてくる。それだけの可能性を鎌田自身も感じているという。

「最近は欧州5大リーグで中盤の真ん中でプレーできる日本人選手があんまりいないと思うんです。ブンデスも日本人が少なくなったし、また日本人が評価されるように頑張っていかないといけないなと感じています。

 鳥栖みたいなちっちゃいクラブからドイツに来た自分みたいな経歴の選手もなかなかいないですよね。そういうクラブの若い選手のためにも僕が頑張らないといけない。自分は昔から上に行けると思ってたし、思い描くもっと高い領域に行ける可能性もある。まだ本当の上のレベルは見えてないんで、それをつかむためにも、この1・2年が大事になる。今を大事にしたいですね」

 ここからのシーズン中盤戦以降で、鎌田は長谷部のいう垂直レベルの成長を遂げられるのか。日本代表での今後の扱いも含めて、その動向が非常に興味深い。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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