浦和はJリーグとアジアで対照的な顔を見せる
2019シーズンの浦和レッズはまさに“ジキルとハイド”だ。先日行われた2つの試合でも大槻毅監督のチームは、わずか5日間のうちに全く異なる人格を演じていた。
10月18日金曜日には、リーグ戦のホームゲームで大分トリニータに対して気弱なパフォーマンスに終始。攻撃面であまり多くを生み出せないまま、93分には大分の左サイドの速攻から三竿雄斗が上げたクロスに合わせた後藤優介のヘディング弾に沈んだ。
だが翌週水曜日には、その敗戦からわずか3人を入れ替えただけの先発メンバーで、任務を忠実に遂行する1-0の勝利。広州恒大を敵地で下し、3年間で2回目となるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝のチケットを手に入れた。
「ACLでの戦い方とリーグでの戦い方は少し違います」。長澤和輝は大分戦の敗戦のあと、そう話していた。「相手のストロングポイントも違います。Jリーグでのこの結果は残念ですが、数日後にはアウェイ(広州恒大戦)ですので、立て直して試合に備えないと。僕らにできることはそれだけです」
一方で岩波拓也は、なぜ同じチームが国内でこれほど苦戦しながらも大陸の舞台で自信満々の戦いをすることができるのか説明しかねる様子だった。
「選手たちもあまりはっきりは分かっていません。ACLで戦う相手はそれほど組織的ではなく、プレッシャーをかける部分で個々のタレントに頼っている面もありますが、(リーグとACLでの戦いに)それほどの差はないはずです」と25歳のDFは語る。
「いつも通り勝ちにいく」と語ったACL準決勝
「アウェイでは雰囲気も全く違うと思いますし、相手も最初からゴールを狙ってくると思います。その中で僕らが1点取れれば相手の勢いを止められると思うので、いつも通り勝ちにいくつもりで戦うべきだと思います」と準決勝2ndレグの広州恒大戦に向けて岩波は話していた。
その言葉は天河スタジアムでの試合を正確に予測するものとなった。広州恒大は58.8%のボール支配率を記録し、30本のクロスを上げ19本のシュートを放ったが、浦和は崩れることなく耐え抜き、今回もまた興梠慎三が決勝ゴールを叩き込んだ。
広州恒大のシュートのうちGK西川周作を脅かしたものは8本だけだったが、浦和は5本のシュート全てが枠を捉える効率性を発揮。守備面でも非常に統率が取れており、25回のクリアを記録するとともに、試合中のデュエルの61.8%、空中戦の60.9%に勝利を収めていた。
浦和のファウルが16回だったのに対し、試合が進むごとに苛立ちを募らせた広州は23回のファウルと6枚のイエローカードを記録。そのうち4枚は、岩波も想定していた通り、興梠の得点でホームチームの気持ちが切れたあとに出されたものだった。
中国での試合終了後に選手たちが浮かべた笑顔は、ここ最近の国内でのムードとは対照的だった。Jリーグでのレッズは現在勝ち点35で12位に位置し、5試合を残した段階で自動降格圏とはわずか6ポイント、昇降格プレーオフ出場圏とは4ポイントしか離れていない。
アジア王者がJ2降格という珍事にならないために
そして、残された5試合の日程も只事ではない。
10月29日にはサンフレッチェ広島、11月1日には鹿島アントラーズのホームに乗り込み、11月5日には埼玉スタジアムに川崎フロンターレを迎える。8日間で3試合を戦ったあと、Jリーグでの戦いは一旦棚上げとして、アル・ヒラルとのアウェイゲーム(11月9日)とホームゲーム(11月24日)で大陸王座を争う。その後はまたすぐに、11月30日にアウェイでのFC東京戦。最後は12月7日に埼玉で宿敵ガンバ大阪とのリーグ最終日の戦いに臨む。
この恐るべき日程と、リーグ戦の最近10試合で1勝のみという調子を考えれば、浦和はアジア王者への戴冠を目指す一方で1部リーグ残留を争うという状況を迎える可能性が十分にあると言えそうだ。
状況はそれ以上に奇妙さを増す可能性もある。2017年決勝で合計2-1の勝利を収めたのと同じように、今回もアル・ヒラルを破りつつ、国内リーグを16位で終えたとすれば、クラブワールドカップ出場のためJリーグ入れ替え戦を延期せざるを得ないという前代未聞の事態にもなりかねない。
その望まざる珍事を避けるためには、浦和はアジアでの戦いで見せる自信と落ち着きを、すぐにでもリーグ戦で再現する術を見つけなければならない。さもなくば来年には大陸王者の2部リーグ暮らしという、これも間違いなく初めての光景を目撃することになるかもしれない。
(取材・文:ショーン・キャロル)
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