真逆になった試合内容と結果
アトレティコ・マドリーのMFトーマス・パーテイ【写真:Getty Images】
アトレティコ・マドリーはチャンピオンズリーグ(CL)2試合を消化して1勝1分で2位。一方のレバークーゼンは2敗と未だに勝ち点を奪えずにいる。ホームのアトレティコは言うまでもないが、レバークーゼンもこれからのCLを戦い抜くために要塞エスタディオ・ワンダ・メトロポリターノで勝ち点3が欲しいという一戦となった。
そして、試合の主導権を握ったのはホームのアトレティコではなくレバークーゼンの方で、特に前半のレバークーゼンはアグレッシブに戦った。アトレティコのボールホルダーに対して積極的なプレスを見せて、素早いカウンターに移行するシーンが幾度となく見られた。また、攻から守の切り替えが非常に早く、奪われてから数秒は2人でボールを奪いに行く。チーム全体で守備意識を高く持ち、前線に圧力をかけ続けたのだ。
縦に早いカウンターだけなく、きちんと組み立てて攻める事が出来たのもレバークーゼンとしては大きい。幅を広く保ち、サイドを中心に攻めていき、両サイドの選手とトップ下に入ったMFカイ・ハベルツが相手センターバックとサイドバックの間、いわゆるハーフスペースに走り込みチャンスを作るシーンが見られた。
この速攻と遅攻をうまく使い分けられたのはFWケビン・フォラントの存在が大きい。カウンター時には相手DFの裏を上手く取り、ポゼッションを高めているときにはしっかりとボールをキープしてタメを作った。
一方のアトレティコは、ボールを保持しても相手のハイプレスで思うように攻撃に繋げずに守備に回る時間が多かったが、ディフェンスはアトレティコの代名詞でもある。きっちりとブロックを形成して相手の攻撃に対応していた。
それにより、前半は両者共に目立った決定期を作れずに静かな試合となった。しかし均衡が後半に破られる。
なかなか攻める糸口を見つけられず、決定期を作れなかったアトレティコだが一瞬の隙を見逃さなかった。後半61分にFWアンヘル・コレアに代わって投入されたMFトマ・ルマールが中央で敵に囲まれながらも、左サイドでフリーになっていたDFレナン・ロディにパスを供給。そのロディがクロスを上げると69分にコケに代わって入ったFWアルバロ・モラタが上手く頭で合わせて先制点を奪った。
データサイト『Who Scored』によるとアトレティコのボールポゼッションは40%:60%、パス本数414:614、パス成功率75%:84%、シュート本数6:12とどの項目もレバークーゼンには負けていた。それでも試合の主導権を常に握られている状態で先制点を奪えたのは流石アトレティコと言うしかない。レバークーゼンとしては前半の主導権を握っていただけに、そこで先制点を奪っておきたかったとこだ。
アトレティコの鍵を握る男
実にアトレティコらしい試合ではあった。ただ、それでもアトレティコは自分たちがボールを持ち、主導権を握りたかったように思える。
チームを再建中のシメオネ監督はより攻撃的なサッカーにトライしている。これまでの試合ではより攻撃に重点を置く4-3-1-2のシステムを採用したり、両SBが常に高い位置を取ったりと変化を見せている。この試合でも前半、MFサウール・ニゲスがトップ下の位置に入るような場面も見られ、両SBは常に高い位置を取っていた。しかしながら前述した通り、相手のハイプレスに苦しんだ結果、思うように自分たちの攻撃をさせてもらえなかったのだ。
中でも、アトレティコの攻撃の鍵を握っているMFトーマス・パーテイへのハイプレスが効いていたため、オフェンスで脅威を発揮できなかった。
アトレティコにおいてトーマスは攻撃にギアを入れる役割担っている。自らボールを持ち運ぶことはもちろんのこと、縦にパスを入れることも出来る。そのためこの選手が不調、あるいは相手プレスに苦しむようであればチームはサイド攻撃しか選択肢がなくなってしまう。特にこの試合の前半では縦パスが前線の選手と合わないシーンや、トーマスに対して2人でチェックに来る相手に対して、ボールを取られてカウンターを受けるシーンが見られた。
また、縦パスが入ったとしてもそこから展開することに苦しんでいるという印象も受ける。前線にフィジカルが強くキープ出来るFWジエゴ・コスタにパスを当てても、2列目や1.5列目からの飛び出しの数が少ない。リーグ戦第3節、劇的な逆転勝利を飾ったエイバル戦の3点目で見せたような飛び出しを出来ればより迫力のある攻撃が展開できるはずだ。
このような問題はこの試合に限ったことではなく今季アトレティコが抱える問題で、前節のリーグ戦でも顕著に現れていた。トーマス対策をされた時にどのように試合を組み立てるか。このチームには今、トーマス以外に配球が出来る選手が必要だろう。
(文:松井悠眞)
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