逆境のレアル・マドリー
敵地でパリ・サンジェルマンに0-3という屈辱的な敗北を喫したレアル・マドリーは、第2節でもクラブ・ブルージュに2点を先行されたことが響いて、引き分けに持ち込むのがやっと。ガラタサライも第1節ではクラブ・ブルージュのゴールを割ることができず、ホームではパリに敗北。グループAはパリが勝ち点6で抜け出し、2分のクラブ・ブルージュが2位、ガラタサライとレアルが勝ち点1ずつで下位に沈んでいる。
しかし、どうしても勝利が欲しいレアルは“FIFAウイルス”に感染してしまった。10月に行われた国際Aマッチウィークで、クロアチア代表MFルカ・モドリッチ、ウェールズ代表ガレス・ベイルが負傷。土曜日に行われたマジョルカ戦に続いてこの試合も欠場している。
そのマジョルカ戦に敗れたレアルは、リーグ戦ではバルセロナに抜かれて2位に転落した。予定通りであれば、2位に転落した直後にバルセロナとのエル・クラシコが予定されていたが、こちらは政治情勢を理由に延期が決定。ガラタサライ戦は、いろんな意味で勝利が欲しい一戦だった。
ここまでリーグ戦、CL全ての試合に先発してきた長友佑都だが、直近のシワススポル戦ではベンチを温めた。日本代表で2試合にフル出場した直後の金曜日のリーグ戦ということもあって、指揮官はベテランDFの温存を選択したのだろう。この日はスターティングランナップに戻ってきた。
長友佑都はフル出場
レアルが主導権を握ると見られたこの試合だったが、内容はほぼ互角といっていいだろう。特に1対1の局面ではガラタサライに分があったと言っても過言ではない。ガラタサライは前半に55%、後半にも53%のボール保持率を記録。パス本数も相手を118本も上回っている。
ガラタサライは5-3-2の布陣で試合をスタート。キックオフと同時に攻め込むレアルに対して引くことなく、中盤では激しいプレスを仕掛けて相手にペースを渡さなかった。
しかし、レアルは18分、FWエデン・アザールがFWカリム・ベンゼマとの壁パスで左サイドを抜けると、折り返しをゴール中央で受けたMFトニ・クロースがシュート。リフレクションがあったボールはゴールへと吸い込まれ、CL出場100試合目となったドイツ代表MFが貴重な先制ゴールを奪っている。
ガラタサライは後半開始と同時に交代カードを切り、システムを4-3-3に変更。前半は左WBを務めていた長友は、左SBへとポジションを移した。攻撃面では決定的な仕事をできなかった長友だが、試合を通じて守備は安定していて、同サイドで対峙するロドリゴにはほとんど仕事をさせなかった。
後半に入っても試合の流れは変わらず。1点を追うガラタサライはFWエムレ・モル、MFオメル・バイラムを投入して反攻を狙う。しかし、その後も決定機を作ることができず、試合は0-1で終了した。
試合を通じて12本のシュートを放ったガラタサライに対して、レアルは27本のシュートを記録。64分にアザールのシュートがクロスバーに当たったが、大きなチャンスは数えるほどしかなく、レアルが試合の主導権を握ったとは言い難い試合内容だった。
レアルの縦のホットライン
レアルはこの試合で、直前のリーグ戦から大幅にメンバーを変更。アンカーを務めるMFカゼミーロの前にクロースとMFフェデリコ・バルベルデを並べ、アザールとFWロドリゴを前線に置いた。
怪我でマジョルカ戦を欠場したクロースは、自身にとってメモリアルな試合でゴールを決めた。試合を通じて見ても、クロースがこの試合で見せたパフォーマンスは、怪我明けとは思えないほど高いものだった。
この試合でクロースはチーム最多の61本のパスを記録。これ自体は驚くべきものではないが、そのうち1/4を超える16本をベンゼマに送っている。データサイト『Whoscored』によると、4本のキーパスをクロースが記録しているのに対し、ベンゼマは5本のキーパスを送っている。この縦のホットラインから多くのシュートが生まれていたことが、スタッツからも窺える。
一方のガラタサライは、58分にMFステベン・エヌゾンジのパスミスからピンチを迎えた。エヌゾンジやMFジャン・ミシェル・セリは試合を通じて不用意なボールロストが多く、ボール保持率でレアルを上回りながらも、チャンスを多く作ることができなかった。
マジョルカ戦に敗れ、リーグ戦では首位から陥落し、CLでも2戦未勝利というスタート。ジネディーヌ・ジダン監督の周辺が騒がしくなってきただけに、レアルはこの勝利をチーム浮上のきっかけにしたいことだろう。
グループAもう一つの試合は、パリ・サンジェルマンがアウェーでクラブ・ブルージュを5-0と圧倒し、3連勝でグループ首位を独走している。グループリーグは残り3試合、同じ顔合わせとなる次戦が大きな分岐点となるだろう。
(文:加藤健一)
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