続くアウェイの弱さ
格下相手にまさかの敗戦を喫したアーセナルのFWアレクサンドル・ラカゼット【写真:Getty Images】
昨シーズン、アウェイでめっぽう弱かったアーセナルは今季もアウェイで苦しんでいる。ウナイ・エメリ監督就任以降、これまでリーグ戦のアウェイゲーム23試合を戦ったがクリーンシートは僅か2試合。昨季においてはアウェイでの成績は7勝4分8敗と、ビッグ6の中で一番低い数字を残した。
そしてこの試合のスコアは0-1と格下相手にまさかの敗戦。この試合に勝てば3位に浮上出来るチャンスだっただけに、ここで敗戦してしまったのは悔やまれるだろう。
アーセナルは試合開始からシェフィールド・Uのハイプレスに苦しむ展開となる。前からプレスに来る相手に対して、パスの出し所がなく苦し紛れのロングボールを前線のスペースに蹴り込む姿が多かった。それでも20分にカウンターからニコラ・ペペが決定期を迎えるも決めきることが出来なかった。そして、前半の決定期らしい決定期はこの一回だけに終わった。
攻める糸口を見つけられないアーセナルは30分にコーナキックから失点してしまう。ファーサイドに流れたボールをDFジャック・オコネルが中央に折り返すと、ゴール前でフリーになっていたFWリス・ムセが合わせゴールネットを揺らした。結局この前半のゴールが決勝点となる。
前半のアーセナルの攻撃は単調でリズムを変えられる選手がいなかったため、ハーフタイムでMFジョセフ・ウィロックを下げてMFダニ・セバージョスを投入。すると単調だった攻撃は幾分かリズムが生まれ始めるが、後半からブロックを形成して中を閉めているシェフィールド・Uの壁を崩すには至らなかった。
また、68分にMFグラニト・ジャカを下げて、FWアレクサンドル・ラカゼットを投入。77分にはFWニコラ・ペペに変えてFWガブリエウ・マルチネッリを投入した。しかしこれでも、相手の脅威になることはなかった。
勝敗を分けたインテンシティ
この試合のシェフィールド・Uは90分を通してインテンシティの高さを見せた。昇格組でチャレンジャーという立場から失うものはなく、立ち上がりからハイプレスを仕掛け、ボールを奪うと高速ビルドアップ。徹底してサイドを攻め込んだ。ディフェンス時には対人と球際の強さを見せて、攻撃もシュートで完結させるなど勢いを落とす事なく戦い抜いた。
一方のアーセナルは試合を通してインテンシティが低く前線で迫力に欠いた。データサイト『Who Scored』によるとアーセナルのポゼッションは68%:31%、パス本数616:286と大きく上回ったもののシュート数では9:8と1本差と、いかにシェフィールド・Uが効率よく攻めたかがうかがえる。
このインテンシティの低さは戦術面だけでなく、メンタル面でも言える。
やはりホームの利というものなのだろうか。シェフィールド・Uがインテンシティの高さを保てたのはホームでサポーターの後押しがあったからだろう。サポーターが与えるメンタルへの影響は計り知れないものがある。
一方のアーセナルはもともとリーダーシップを執れるタイプの選手がいないと言われ続けてきた。そしてこの試合でもチームをまとめるだけのキャプテンシーを示せる選手はいなかった。アウェイの難しさを考えたらキャプテンシーのある選手が必要なのは言うまでもない。
この試合はアーセナルのインテンシティの低さを再確認する試合となった。
司令塔の存在
この試合のようにブロックを形成されてしまうとアーセナルは勝つことが難しくなってしまう。このような状況を打破するためには司令塔の存在が必要だ。今日のスターティングメンバーを見ると、司令塔と呼べる選手の名前はなく、後半に入ったセバージョスが司令塔タイプに近い存在だったと言えるが、まだどこか物足りなさを感じるのも否めない。
だが、もともとアーセナルにはMFメスト・エジルいう世界トップクラスの司令塔がいる。しかしエメリ体制以降エジルの出場機会は減少して、今季は強盗事件の影響やコンディション不良ということでまだ1試合にしか出場していない。
これは指揮官の好みの問題なのかもしれないが、今のアーセナルには間違いなくエジルの存在が必要だ。事実、アーセナルはボールを持ちパスを回すことが出来るが、ゴール前での創造性に欠け攻めあぐねる姿が多い。エジルのような創造性のあるパスを出すことが出来る司令塔が今のアーセナルには必要不可欠なのだ。スペイン人指揮官にはエジルの起用法について、今一度見直して欲しい。
(文:松井悠眞)
【了】