復帰した者、離脱した者
代表ウィークが明け、リーグ戦は再開された。例外に漏れず、バルセロナは多くの代表選手を送り出したが、幸いにも新たな怪我人は出ずに帰ってきた。しかし、セビージャ戦で早くも今季5つ目の警告を受けたDFジェラール・ピケ、ともに退場処分を受けたDFロナウド・アラウホとFWウスマン・デンベレが出場停止。ピケに代わって右足第二中足骨の骨折で離脱していたDFサミュエル・ウンティティが右CBで復帰を果たした。
アルゼンチン代表で3ヶ月の出場停止処分を受けているFWリオネル・メッシと、ウルグアイ代表を外れているFWルイス・スアレスは休養十分。先発メンバーとしては今季3度目となる、アントワーヌ・グリーズマンとの3トップが実現した。
スコアは3-0でバルセロナが完勝。しかし、ビッグクラブ相手にエイバルは成す術なく敗れたわけではなく、挑戦者としての矜持を確かに見せつけた。
4-4-2で構えるエイバルは、自陣に引きこもることなく、高い位置から敵陣にプレスをかける。両サイドハーフはバルセロナのSB、ジョルディ・アルバとセルジ・ロベルト(後半はネウソン・セメド)に圧力をかけ、2トップはアンカーのセルヒオ・ブスケツへのパスコースを切りながら、両CBとの間合いを詰める。DFラインを高く保って、バルセロナのビルドアップを簡単には許さなかった。
効果的だったエイバルの戦略
しかし、高い位置からのプレスと高いDFラインは諸刃の剣である。エイバルが相手のボールホルダーにヘッドアップを許すと、バルセロナは容赦なくDFラインの背後へとボールを送り込んできた。先制点はこうして13分に生まれた。
DFクレマン・ラングレが相手DFラインの裏にロングパスを送ると、落下地点へと走るDFパブロ・デ・ブラシスが転倒してしまう。ボールを難なく受けたグリーズマンがGKとの1対1を冷静に決めて、バルセロナが13分に先制に成功した。
先制を許したエイバルだったが、就任5季目を迎えたホセ・ルイス・メンディリバル監督が採用したこの狙いは、一定の効果を見せていたように思える。バルセロナは確かにビルドアップに苦しんでおり、この日はジョルディ・アルバの攻撃参加も影を潜めていた。
3得点を挙げたバルセロナがこの試合で放った枠内シュートは5本。ボール支配率は56%に留まり、微妙な判定もあったがオフサイドは7つを数えた。エイバルのプレスに苦しんでいたことが、スタッツからも窺える。先制点はDFの転倒という不運もあった。
トランジションの隙を突いたバルセロナ
ビルドアップを封じられたバルセロナは、最小点差で試合を折り返すと、左足に違和感を覚えたセルジ・ロベルトを下げ、セメドを投入。前半は最前線にいたグリーズマンのスタートポジションを下げ、4-4-2に近い形で後半をスタートした。
すると58分、フレンキー・デヨングからスアレスに縦パスが通ると、相手に寄せられながらもボールをキープ。すると近寄るグリーズマンを経由して斜めに走るメッシへとボールが渡り、左足でこれをゴールへと流し込んだ。
さらに66分には、グリーズマンのスルーパスにDFラインの裏を抜け出したメッシが、並走するスアレスへのパスを選択。背番号9はゴールネットを揺らし、連続試合得点を4に伸ばした。
3トップの左を務めたグリーズマンは、相手の高いDFの裏を狙う動きでゴールを奪った。後半は4-4-2の左MFに居場所を移した中で、2点目はボックス内で仕事をし、カウンターの中継ポイントとして相手DFとMFの間でボールを受けて3点目を演出した。三様の形で得点に絡んだグリーズマンの貢献度は計り知れない。
バルセロナの新たなトリデンテは、左・グリーズマン、中央・スアレス、右・メッシという位置でスタートする。しかし、全員が中央でプレーすることができれば、スアレスはサイドに流れることも多々ある。
前半こそ相手のプレスに苦しむ姿が垣間見えたが、ポジションが整理された後半は、グリーズマンを中盤に吸収する形でプレーさせ、それが功を奏した。三人寄れば文殊の知恵という言葉があるが、能力の高い3人が集まると鬼に金棒以上の脅威になる。
乾は流れを変えられず
MF乾貴士は3点ビハインドを背負った71分から出場し、左サイドハーフに入った。タッチライン際まで大きく開いて幅を作るものの、チャンスを生み出すには至らず。ルーズボールに滑り込んだ88分のシーンでは、スライディングが一瞬遅れてMFアルトゥーロ・ビダルの足に入り、元日本代表MFには警告が与えられた。
コパ・アメリカ(南米選手権)に出場したメッシとスアレスは、プレシーズンの合流が送れ、メッシは負傷により開幕から約1ヶ月に渡って欠場。メッシが不在だった5節までは2勝2敗1分けと苦しみ、順位は8位に甘んじた。それでも、この勝利で公式戦の連勝を5に伸ばし、敗れたレアル・マドリードに代わって首位に躍り出た。
レアル・マドリーとバルセロナが首位攻防戦として激突する予定だった26日のエル・クラシコは、この試合の前日に延期が決定。カタルーニャ州の独立支持派による大規模デモが予定されており、スペインサッカー連盟は伝統の一戦の開催を断念した。
両チームは12月18日の開催を希望しているが、19日時点では決定には至っていない。不安定な政情に水を差される格好になってしまったバルセロナだが、新トリデンテの活躍は今後の戦いに勢いをもたらすことになるだろう。
(文:加藤健一)
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