記者会見に臨んだコインブロエスのペドロ・アウベス監督(右)と主将のペドロ・タバレス(左)【写真:舩木渉】
日本の天皇杯では「ジャイアントキリング」が名物の1つになっているが、ポルトガルにも同様のカップ戦がある。1部から4部までのクラブが参加するタッサ・デ・ポルトガルがそれだ。
実際、現地17日に行われた3回戦では国内屈指の強豪スポルティングCPが3部のFCアルベルサに0-2で敗れる波乱があった。地元メディアもこのジャイアントキリングや強豪クラブの敗戦を大きく取り上げている。
そして19日には、ポルトが3部クラブの挑戦を受ける。相手は3部のコインブロエス。ポルトの街からドウロ川を挟んで対岸にあるヴィラ・ノヴァ・ド・ガイアに本拠地を置くアマチュアクラブだ。
コインブロエスは全選手がサッカー以外に仕事を持っているか、学校に通っている。練習は週に4日しかできない。しかも本来はポルト戦をホームで開催できる予定だったが、スタジアムの規模が小さすぎて警備上の問題があり、またナイトゲームの中継に必要な照明の明るさを確保できないなど様々な要因から会場変更を強いられた。結局、開催地はポルトのBチームが普段のリーグ戦でホームにしている陸上競技場になり、試合日も1日前倒しになった。
だが、野心は一片も失われていない。17日に記者会見に臨んだコインブロエスのペドロ・アウベス監督は「(実力の)違いは非常に大きいが、何事も起こりうる。我々コインブロエスは勝たなければならない。それだけだ」とポルトとの大一番に向けて意気込みを語った。
「我々はどんなことが待ち受けているか理解している。だが、すべての責任を感じるのは相手の方だ。このカップ戦において『巨人の墓場』となるのが完璧な夢。我々の選手たちは歴史を作る可能性を少しでも上げるため、一生懸命に努力してきた」
ホームスタジアムのピッチは人工芝だが、変更後の会場のように天然芝でプレーすることも「リーグ戦では天然芝で戦うこともあるし、難易度は高くない」とアウベス監督は問題として捉えていない。「ポルトに対抗するのは非常に難しいとわかっているが、我々は競争力のあるチームであり、あらゆる攻撃の機会をうかがっている」と“ジャイキリ”への強い意欲も示した。
通常のリーグ戦ではは金曜日に練習して日曜日に試合というルーティーンも、土曜日開催のポルト戦に合わせて変更。金曜日の練習を火曜日に移し、最後の練習となった木曜日にはPK戦を想定したトレーニングも採り入れた。
「勝つために最も重要なのは、チームのスピリットを信じること。選手たちには勇気があり、彼らは多くのものを望んでいるし、強い信念を持って取り組んでいる。私も試合に勝つことを信じている。彼らもそれを成し遂げられるだろう。チームは非常に競争力高くまとまっており、いい試合ができることを信じている」
アウベス監督は「信じること」の重要性も口にした。コインブロエスにはポルトの下部組織で育った選手も多くいる。彼らの勝利を追い求める信念が、クラブ史上初の4回戦進出という結果で実るか。”ガイアの誇り”を掲げるアマチュアクラブが地元の盟主ポルトに挑むタッサ・デ・ポルトガルの3回戦は、現地19日の18時45分(日本時間20日2時45分)キックオフだ。
(取材・文:舩木渉【ポルトガル】)
【了】