憧れの酒井宏樹にサインをもらうジャスールくん(左から2番目)【写真:舩木渉】
日本代表は現地13日、タジキスタンの首都ドゥシャンベ市内で非公開練習を行なった。
試合前ということもあってか、タジキスタンにはあまりアウェイを感じない。日本代表の練習にも地元のタジキスタン人が数多く詰めかけ、声援を送ってくれている。
タジキスタンにはスポーツ専門のTVチャンネルが複数ある。24時間タジク語で放送されるサッカー専門チャンネルでは国内リーグやカップ戦、代表戦のみならずチャンピオンズリーグやプレミアリーグ、ラ・リーガ、ブンデスリーガなど世界の主要リーグの試合も視聴できるという。
こうした絶好の視聴環境があるからか、タジキスタンには日本サッカーに関する知識を豊富に持ったファンが数多くいた。その中に、12日から日本代表の練習に通っていた1人の少年に驚かされた。
名前はジャスール。マルセイユのファンで「将来はマルセイユでプレーするのが夢」という彼は、12日からずっと「サカイはどこ?」と探していた。「サカイはサムライだよ!」と目を輝かせ、日本代表の練習でDF酒井宏樹の一挙手一投足に目を凝らす。他の選手に関する知識や、世界各国リーグの事情も詳しい“オタク”ぶりは驚異的だった。
憧れの選手を目の前にしたジャスールくんは積極的で、13日には酒井とのツーショット撮影にも成功。練習後には直接サインももらった。
酒井にジャスールくんがマルセイユのファンだったことを伝えると、「そうなんですか。嬉しいことですし……タジキスタンの子どもですよね? ああいう子たちが(将来)ヨーロッパで(プレー)できるように、いいプレーを見せられればいいかなと思います」と笑顔を見せる。
後ろを通りかかったMF原口元気が「あの子、『サカイはサムライだ!』って言っていたよ」と酒井に伝えると、そこでも嬉しそうに「マルセイユのファンらしいよ」と答える。憧れの選手との交流する、ジャスールくんの小さな夢が叶った。
多くのタジキスタン人ファンからは「日本はアジアのトップ」と言われる通り、ワールドカップのアジア予選における日本代表は追われる立場。DF吉田麻也も言う通り「どの国もアジアで戦う時は日本とやるのを楽しみにしているし、日本を負かしてやろうとチャレンジャーの気持ちで戦いを挑んでくる」のだ。
おそらく歓迎ムードは前日まで。日本代表に憧れの眼差しを向けていたタジキスタン人たちも、試合当日は目の色を変えて圧力をかけてくるはずだ。
ジャスールくんは「試合は6-0で日本が勝つと思うよ」と、日本代表の勝利を予想していた。酒井ももちろんのこと、他の選手たちも重圧に負けず、タジキスタンサッカー界の指標となるようなプレーを見せることができるだろうか。
そして憧れの選手を前に目を輝かせていた少年が、自国タジキスタンと戦うアイドルの姿を見てどんな感情を抱くかも楽しみだ。
(取材・文:舩木渉【タジキスタン】)
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