大迫不在の日本代表
今月のワールドカップ予選には大迫勇也が不在。つまり日本代表は、前線を牽引するタイプの典型的なセンターフォワードを欠いてモンゴル戦とタジキスタン戦に臨むことになる。永井謙佑、浅野拓磨、鎌田大地はいずれも、ストライカーのパートナーとしてその横や後ろでプレーする方が向いたタイプの選手たちだ。
比較的経験の浅い前線の3人が、このレベルで何ができるのかを示すチャンスでもある。その一方で、日本代表のキープレーヤーである南野拓実と堂安律にとっても、ピッチ上の重要なエリアでチームに何をもたらすことができるかを改めて証明する機会となりそうだ。
南野と堂安は、森保一監督のチームのファーストチョイスとして、攻撃陣の4枠のポジションの中に定着したと言える。両者ともに所属クラブでもここのところ好調であり、代表チームのゴール前でも力を見せたいと考えていることだろう。
堂安は9月29日、PSVがPECズヴォレに4-0の快勝を収めたアウェイゲームで移籍後初ゴールを記録。その4日後のノルウェーでも、ローゼンボリを4-1で下したUEFAヨーロッパリーグの試合で2アシストを記録してみせた。
だが、それ以上に絶好調を維持して今回の代表チームにやってくるのが南野だ。欧州でも大きな話題となっているチームの中で、24歳の日本人アタッカーは中心的な役割を演じ続けている。
セレッソ大阪出身のFWは、レッドブル・ザルツブルクで今季ここまで公式戦11試合に出場して6得点を記録。特に今月2日には、UEFAチャンピオンズリーグのリバプールとのアウェイゲームにおいて、見事なゴールと1アシストを記録する獅子奮迅の活躍をみせた。
敵地のリバプール戦で得点
システム上は右サイドのアタッカーとして試合をスタートさせたが、試合が進むにつれて南野はより中央で仕事をするようになり、そこからホームチームにあらゆる問題を引き起こした。前半早々に2点を奪われたアウェイのザルツブルクだが、そのまま大人しく運命を受け入れようとはせず、南野も前半30分までにリバプールのゴールを守るアドリアンに2本のセーブを強いるシュートを放っていた。
56分には、15ヤードの位置からの冷静なフィニッシュで美しくコントロールされたボレーを突き刺し、ザルツブルクの2点目のゴールを記録。その4分後にはアシスト役に回る。リバプールのペナルティーエリア内でルーズボールにいち早く反応し、フィルジル・ファン・ダイクとアドリアンの間を抜くクロスを送ると、あとはアーリング・ハーランドが無人のゴールに押し込むだけだった。
最後はモハメド・サラーが4点目を加えたリバプールが勝ち点3を手に入れる結果となったが、ザルツブルクは敵地に駆けつけたファンからの喝采を浴びた。南野とチームメートたちは、大きな称賛に包まれながらアンフィールドを後にすることができた。
6年前にマンチェスター・ユナイテッドから決めたゴール
南野には力強さと自信が感じられ、試合を通してトライする意志を示し続けていた。チームメートからも信頼されている証拠に、90分間を通して受け取ったパスの本数はチームで3番目に多い29本(エノク・エムウェプとドミニク・ショボスライが31本で最多)。フル出場したザルツブルクの選手の中ではパス成功率も3番目に高く、35本のパスのうち77%が味方に繋がっていた。
南野の不屈の闘志は76分のプレーにも表れていた。ザルツブルクがもう一度同点弾を狙いにいく中で、中盤でボールを持った南野は必死に体を使いながらリバプールの守備陣3人をかわしてキープを続ける。そこから前線へと運ばれたボールは奥川雅也のチャンスへと繋がり、エリア手前からのシュートが枠を捉えた。
リバプール戦の一撃はキャリアのハイライトを飾るゴールとなったかもしれないが、南野がイングランドのトップクラブからゴールを奪ったのは今回が初めてではない。セレッソ大阪時代にマンチェスター・ユナイテッドと2-2で引き分けた2013年7月26日の試合でも見事なシュートを突き刺したことがあった。
香川真司の所属していたユナイテッドのアジアツアーの一環として行われた単なるフレンドリーマッチではあったとはいえ、当時18歳の南野にとっては、世界的な強豪クラブからあれほど冷静にゴールを奪ったのはやはり大きな偉業だ。さらに、試合後にゴールの感想と将来の目標を問われた際の返答も同じくらい印象的なものだった。
「緊張は全くしていませんでした」
「マンチェスター・ユナイテッドのような相手にどれくらい自分の力を見せられるか本当に楽しみにしていました。緊張は全くしていませんでしたし、自分自身に挑戦したいと思っていました。あまりシュートは打てませんでしたが、あの1本は全力で打つことができて、入ってくれて嬉しいです」。長居スタジアムのミックスゾーンで南野はそう話していた。
「世界のトップクラブでプレーすることを小さな頃から夢見ていました。今回のチャンスは僕にとって価値ある経験になると思います」
まさにその通りだったようだ。それから6年が経過し、今も南野は試合後に自信有りげな姿を見せている。2022年ワールドカップ予選初戦のミャンマー戦に先立ち、日本代表がパラグアイに2-0の勝利を収めた9月5日の試合での得点を振り返ってのコメントもそうだった。
「自信になります。FWは結果を求められますし、今日は目標達成に向けた最後の準備の試合でしたので。個人的にはアジア予選に向けて良い調子だと感じています」と南野は、いつも通りのはにかんだ笑顔で話していた。
ヤンゴンで2-0の勝利を収めた試合でも再びゴールを挙げ、南野は自信を維持し続けている。大迫の穴を埋める存在を必要としている今回の日本代表での試合は、高まり続ける評価をさらに引き上げる絶好のチャンスとなりそうだ。
(取材・文:ショーン・キャロル)
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