アトレティコから放出され、出戻った過去
ロドリは1996年にスペインのマドリードに生まれ、11歳からアトレティコ・マドリーの下部組織に所属していた。しかし、本人いわく「ほかの選手よりも身体の成長が遅かった」こともあり、アトレティコを退団。17歳になる2003年にプレーの場を同国のビジャレアルに移した。
ビジャレアルでは2005年、19歳の時にトップチームデビューを果たす。その後、徐々に出場機会を得はじめると、チームの中心選手であるスペイン代表MFブルーノ・ソリアーノが怪我でシーズンを棒に振った2017/18シーズンでは見事にその穴を埋ることに成功。当時21歳ながらビジャレアルを完全にコントロールし、シーズン中のボール奪取数が320回とリーグトップの数字を記録した。
またこのシーズン中にスペインA代表デビューも果たし、バルセロナMFセルジオ・ブスケツの後継者とも呼ばれるようにもなる。本人も、「ブスケツとプレースタイルは似ていると思うし、彼のレベルに到達することを目標としている」とコメントしている。そして大きな飛躍となったこのシーズン終了後、ユース時代を過ごしたアトレティコ・マドリードにスペイン代表MFガビの後釜という形で2000万ユーロ(約23.5億円)で復帰した。
アトレティコはコケ、サウール・ニゲス、トーマス・パーティといったワールドクラスのMFの選手たちが所属している。そんな環境下でも移籍初年ながら公式戦47試合出場3ゴール1アシストという結果を残し、攻守のバランサーとしてチームのリーグ2位に貢献した。ロドリはトーマスとともにダブルボランチを組んでいたが、トーマスは攻撃に強みがある選手だったため、ロドリは守備的な役割を担っていた。
ペップのチームに欠かせない役割
そんなロドリはペップが最も必要としている選手だった。スペイン人の名将が作るチームには攻守の起点となるプレーメーカーが必要不可欠なのだ。
ビルドアップ時には味方最終ラインからパスを引き出し、押し込んでいる状況ではカウンター対策のために相手を分断する位置を常に取り続ける役割を、バルセロナ時代はブスケツに、バイエルン時代にシャビ・アロンソに、去年までのシティでもフェルナンジーニョに任せてきた。
ただブラジル代表MFも現在34歳、タフな役割を90分間、シーズンを通して続けるのは年々厳しくなることは予想されていた。ただし代役が不在だった。
昨季の年末にその不在が響いた試合があった。2018年12月、ジョン・ストーンズとイルカイ・ギュンドアンが代役を務めたが、プレミアリーグではホームでクリスタル・パレスに、アウェイでレスター・シティに連敗を喫してしまった。フェルナンジーニョの後釜確保は最優先事項だった。
そして今夏、シティに加入してからのロドリは、まずまずの結果を残している。守備ではチームのフィルターとなり、攻撃面でも持ち前の展開力を生かして下支えしている。一方で完璧にフィットしたかというと、まだまだこれからだ。
プレミアリーグのスピードに適応することに苦しんでおり、それは本人も認めている。ときおり相手チームのプレスの狙いどころとされてしまうこともあるが、勤勉で真面目な性格だ。適応は時間の問題かもしれない。
というのもロドリはプロサッカー選手としてでもデビュー後も、大学に通い続け、講義は一度も欠席しなかったという「真面目エピソード」を残している。また天文学的な給与をもらっているにも関わらず、豪邸を購入することなく、大学の寮で仲間と共同生活をしていたという話もある。
派手なプライベートを好む選手の中には、ロンドンやパリなどの大都市に比べて、田舎とされているマンチェスターでは、生活面で合わないこともある。ただタトゥーを彫るのを嫌い、SNSも開設していないようなロドリにはむしろちょうど良い環境下もしれない。
さて、今後のロドリだが、期待や責任がより一層大きくなるかもしれない。というのも、4節ブライトン戦で、エメリク・ラポルテが負傷。ひざ軟骨と半月板損傷で手術…復帰時期は未定という状況のため、フェルナンジーニョが頭数の足りないCBに回される可能性があるのだ。
ただピッチ内外共に真面目なロドリのことだ。それらの期待をきちんと受け止め、素晴らしいパフォーマンスを披露してくれるはずだ。
(文:プレミアパブ編集部)
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