シント=トロイデンVVでリーグ戦デビューを飾ったMF伊藤達哉【写真:STVV】
今夏、ドイツ2部のハンブルガーSVからベルギー1部のシント=トロイデンVV(STVV)に移籍した日本代表MF伊藤達哉が、新天地でのリーグ戦デビューを飾った。
現地28日に行われたベルギー1部の第9節、ゲンクとのダービーマッチでSTVVは0-3から猛烈な追い上げで3-3のドローに持ち込んだ。伊藤は60分から途中出場した。しかし、STVVファンから相手GKに向かって何かが投げ込まれるなど荒れ模様となり、投入直後に試合は中断された。
約15分間の中断が明け、最初のプレーでコーナーキックからSTVVは1点を返す。これで流れが一気に変わった。ゲンクを押し返し始めたSTVVは80分と87分にもゴールを奪い同点に追いつく。
この劇的な展開に、今度はアウェイのゲンク側ゴール裏が騒がしくなり機動隊がスタンドとピッチとの間に集結。そして88分に再び試合は中断され、そのまま再開せず試合終了の笛が吹かれた。
荒れに荒れたダービーマッチだったが、STVVの諦めない姿勢は0-3から3-3まで追いつくことで結果に反映された。その中でプレーしていた伊藤は、“空白の15分間”からのチームの変化をポジティブに捉えていた。
「あの中断している間に、『早く1点入ったら全然わからないぞ』という話はしていて、そうしたらああやってワンプレー目でラッキーな形で点が入って、もうあとは『これいけるぞ』という雰囲気がチームにパッと出ました」
伊藤自身は異様な雰囲気に慌てることなくプレーできた。なぜなら「僕はドイツの時にも、5、6万人の試合で、もっと荒れている試合を何回か経験している」から。「スタジアムが小さい分、本当に相手のファンが入ってくるんじゃないかという怖さはあります」というが、「特に驚くこともなく、外国だったらこういうのもあるだろうなあと思いながらやっていました」と落ち着いて試合に入った。
リーグ戦デビューに関しても「そういえばそうですね」と特に意識せず。「試合の状況も状況で、選手たちがあんまり冷静に見えていなくて、あまりパスは出てこなかった」が、前半からベンチで見ていて気づいた相手センターバックとセントラルMFの間のスペースを使うことを意識してゴールに絡もうと奮闘した。
「(自分の力を)発揮できると思って移籍してきているので、チャンスをもらって、結果を出していければなと思います」
出場時間をさらに伸ばしていくには、やはり何よりも結果を残すことが重要になる。「得点に関わる動きは試合に出た時に増やしていけたら」と語る、伊藤のベルギーでの新たな挑戦はようやく前に動き出した。
(取材・文:舩木渉【ベルギー】)
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