ボローニャの補強は的確。冨安獲得も大当たり
ボローニャは、過去にセリエA 7回の優勝を誇るイタリア屈指の古豪である。そのほとんどが、1920年代~40年代のものとは言え、その歴史と輝かしい功績はクラブが誇る魅力の一つだ。
ただ、近年は低迷を強いられることが多いのが事実。2015/16シーズンにセリエA昇格後、毎年のように残留争いに巻き込まれており、苦しみながら1年を過ごすことが多かった。昨季もシーズン序盤につまずき、降格の可能性はさらに高まっていたのだ。
しかし、そんなチームを救い出したのがシニシャ・ミハイロビッチ監督、その人だった。同指揮官はボローニャの監督就任後、見事にチームを立て直し、下位に沈んでいたクラブを最終的には10位にまで引き上げた。決して好順位とは言えないが、セルビア人指揮官の手腕は大きく評価されたのである。
そして、今季のボローニャはその残留の立役者となったミハイロビッチ監督が続投。攻撃時は3-2-4-1、守備時は4-4-1-1という可変システム、90分間前への姿勢を失わないアグレッシブなサッカーに磨きをかけ、狙うはヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得ということになる。
もちろん、そうした目標を達成するためにも今夏の選手補強は重要となったが、ボローニャはそうした面も的確に行い、期待値十分なチームを作り上げることに成功していると言える。
DFにはクラブ・ブルージュからステファノ・デンスビルが加入。26歳のオランダ人センターバックはアヤックスの下部組織育ちということで確かな足下の技術も持っており、対人戦にも絶対的な自信を持っている。前所属のクラブ・ブルージュでの活躍も印象的で、ベルギーリーグでも屈指のCBとして名を馳せていた。守備の改善が必要だったボローニャにとって頼もしい存在だ。
中盤には経験豊富なMFガリー・メデルが加入。闘争心剥き出しで相手に襲い掛かるチリのハードワーカーは、本職のアンカー以外にもCBやサイドバックでプレー可能という柔軟性を併せ持つ。チリ代表のチームメイトであるMFエリック・プルガルの抜けた穴を埋めるには十分な存在だと言える。
また、中盤にはMFイェルディ・シャウテンも加入。こちらは22歳と若いが、身長185cmの体躯を生かした激しいボール奪取を売りとしている。スタメンで起用される可能性は今のところ少ないが、ミハイロビッチ監督の下で成長が期待される選手の一人だ。
若手で言えば忘れてはならないのがFWアンドレアス・スコフ・オルセンの加入。「デンマークの真珠」と称される同選手は身長180cmを誇るが、スピードと切れ味鋭いドリブルを武器にしている。左足から放たれるキックの精度や威力は抜群で、ボローニャにとっては最高の切り札となるはずだ。
そしてボローニャは、新選手の獲得だけでなくレンタル移籍で昨季からチームに加わっていた選手の完全移籍への移行も的確に進めた。DFダニーロ、FWリッカルド・オルソリーニ、MFロベルト・ソリアーノ、FW二コラ・サンソーネらがそれに当てはまる選手で、彼らは引き続き今季も主力として活躍することが濃厚。ここも、ボローニャにとっては大きな結果となった。
そんな中、ボローニャが今夏に獲得した選手で最も評価を高めているのがDF冨安健洋だ。シント=トロイデンからやってきた若武者は、開幕から4試合でスタメン出場を果たしており、本職ではない右サイドバックで奮闘中だ。イタリア大手紙の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「サプライズ」と評するなど日本人DFを絶賛しており、先月にはサポーター投票によって月間MVPにも選出された。ボローニャの冨安獲得は大正解だと言えるだろう。
今夏の移籍市場でボローニャが新たに獲得した選手はそれほど多くないが、新加入プレイヤーそれぞれの「質」は申し分ないと言える。目標であるEL出場権獲得へ向け、準備は整った。
補強・総合力診断
IN
GK ムハマドゥ・サール(ファーノ/期限付き移籍期間満了)
DF ステファノ・デンスビル(クラブ・ブルージュ)
DF 冨安健洋(シント=トロイデン)
DF マッティア・バーニ(キエーボ)
DF ダニーロ(ウディネーゼ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
DF ガブリエレ・コルボ(ボローニャU-19/昇格)
MF ガリー・メデル(ベシクタシュ)
MF ニコラス・ドミンゲス(ベレス・サルスフィエルド)
MF イェルディ・シャウテン(エクセルシオール)
MF ロベルト・ソリアーノ(ビジャレアル/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
MF ロレンツォ・クリセティグ(ベネヴェント/期限付き移籍期間満了)
MF ルカ・リッツォ(カルピ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW リッカルド・オルソリーニ(ユベントス/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW 二コラ・サンソーネ(ビジャレアル/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW アンドレアス・スコフ・オルセン(ノアシェラン)
FW ラッシ・ラッパライネン(ヘルシンキ)
OUT
GK アントニオ・サントゥッロ(サンベネデッテーゼ)
DF フィリップ・ヘランデル(レンジャーズ)
DF アルトゥーロ・カラブレージ(アミアン/期限付き移籍)
DF リャンコ(トリノ/期限付き移籍期間満了)
DF フェデリコ・マッティエッロ(アタランタ/期限付き移籍期間満了→カリアリ)
DF セバスティアン・デ・マイオ(ウディネーゼ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
DF エミル・クラフト(アミアン/期限付き移籍期間満了→完全移籍→ニューカッスル)
MF エリック・プルガル(フィオレンティーナ)
MF アレックス・フェッラーリ(サンプドリア/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
MF アダム・ナジ(ブリストル・シティ)
MF ロレンツォ・クリセティグ(未定)
MF ゴッドフレッド・ドンサー(セルクル・ブルージュ/期限付き移籍)
MF ファン・マヌエル・バレンシア(チェゼーナ/期限付き移籍)
MF ルカ・リッツォ(リヴォルノ/期限付き移籍)
FW ディエゴ・ファルチネッリ(ペルージャ/期限付き移籍)
FW シモーネ・エデラ(トリノ/期限付き移籍期間満了)
FW ラッシ・ラッパライネン(モントリオール・インパクト/期限付き移籍)
補強評価:B
冨安やデンスビルなど獲得した選手が現時点ではしっかりと主力として活躍。スタメンではないが、スコフ・オルセンやシャウテンらも若く将来性があり、ボローニャにとっては楽しみな存在だ。また、サンソーネ、ソリアーノ、ダニーロ、オルソリーニといった昨季のレンタル組を完全移籍で買い取れたことは非常に大きい。新たに獲得した選手は少ないが、質の部分では申し分ないと言えるだろう。
総合評価:D
目標はEL出場権の獲得。しかし、優秀な選手を揃えたとはいえ、そんなに簡単なミッションではないことは確か。ユベントスやナポリなどはもちろん、ラツィオやアタランタ、トリノといったクラブも虎視眈々と上位への進出を狙っており、それらのチームとも張り合っていかなければならない。ミハイロビッチ監督の下、昨季の期待値よりは遥かに高いが、再び中位に終わってしまう可能性も捨てきれない。
【了】