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“若きPSV”に感じる特大のポテンシャル。アヤックスとの大一番で抱いた、淡い願望のその先へ

エールディビジ第7節、PSV対アヤックスが現地時間22日に行われ、1-1のドローに終わっている。昨季CLベスト4進出を果たすなど輝きを放ったアヤックスに対し、若きPSVは粘り強く戦い、大一番で勝ち点を奪った。その姿勢には特大のポテンシャルを感じさせ、未来への淡い願望を抱かせた。(取材・文:本田千尋【アイントフォーヘン】)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

御三家の1つアヤックスを迎え戦闘モードに

PSV
エールディビジ第7節でアヤックスと対戦したPSVは1-1で試合を終えている【写真:Getty Images】

 PSVが“ポテンシャル”を示した。9月22日に行われたエールディビジの第7節、アヤックス・アムステルダム戦。国内随一のライバルを迎え撃つフィリップス・スタディオンのボルテージは、3日前のヨーロッパリーグ(EL)・スポルティングCP戦とはまるで違った。この日はお遊び気分ではなかった。昂ぶる空気——戦闘モード。何せ敵は“御三家”の1つ、アヤックスなのだ。

 昨季のチャンピオンズリーグ(CL)でベスト4に進む快進撃を見せたアヤックス。今夏、その立役者たちフレンキー・デ・ヨングはバルセロナに、ラセ・シェーネはジェノアに、マタイス・デリフトはユベントスに移籍した。

 何人か主軸が抜けたが、大多数のメンバーは残っている。レアル・マドリー、ユベントスを撃破し、トッテナムと死闘を演じた経験は生きている。欧州の舞台で死線を潜り抜けたことで、国内の敵に対しては絶対的な自信を持っているようだった。ボール・ポゼッションは力強く、昨シーズンのCLで魅せた、流れるような連係も生きている。

 そんな最強集団に対して、PSVの選手たちは果敢に応戦。序盤はアヤックスにボールを持たれる展開となったが、前線のドニエル・マレン、ステフェン・ベルフワイン、ブルマ、モハメド・イハッタレンが鋭いカウンターを繰り出し、少しずつ押し返す。徐々に自分たちが主導権を握って攻撃を仕掛ける場面も増えていった。

 16分にはベルフワン、パブロ・ロサリオ、ミハエル・サドリエクのコンビネーションからサイドアタックを仕掛け、22分にはヨリト・ヘンドリクス、イハッタレン、マレンと縦に繋いでアヤックスのゴールを脅かした。

 一進一退の前半戦が終わり、後半に入ると、63分、右からのグラウンダーのクロスを、ゴール前でタディッチ、クインシー・プロメスと細かく繋いで、セビージャから新加入のオランダ代表FWがきっちり決める。アヤックスが先制。しかしPSVもこのまま引き下がらない。76分、マルク・ファン・ボメル監督は2枚同時に交代。ヘンドリクスに替えてコーディ・ガクポ、サドリエクに替えてオリバー・ボスカグリを投入した。

 すると、この交代策が見事に当たる。直後の77分、ベルフワインから貰ったボールを、ガクポがスルーパスを通して、抜け出したマレンが同点弾を決める。駆け寄るオランダ代表の新星FWに対し、ピッチサイドの観客は興奮のあまり飛び出すと、雪崩れ込むようにして電光掲示板をなぎ倒した。

“ヤングPSV”に感じる可能性

 それから両チームとも決勝点を奪えず、オランダ代表監督ロナルド・クーマンも見守った伝統の一戦は、1-1のドローに終わる。しかし、出場したメンバーの内、20代後半以上の選手が30歳のCBニック・フィールへーフェルだけだったPSVにとって、昨季のCLでベスト4に進出したアヤックス相手のドローは、十分に価値のあるものだったのではないか。それも先制を許しながら、追い付いてのドローなのだ。若きPSVが、“ポテンシャル”を十分に示した一戦だった。

 特にトップ下を務めるイハッタレンは、とてつもない可能性を秘めている。プレースタイルは、元アルゼンチン代表MFロマン・リケルメを彷彿とさせる、一昔前の10番タイプだ。足元の技術がしっかりしており、キープ力と突破力でチャンスを演出し、敵の守備陣を脅かすことができる。スピードにおいては、既にリケルメ以上である。

 超新星は、アヤックス相手にも実力を見せつけ、58分の場面のように、直接FKでゴールを狙うこともできる。何より、まだ17歳なのだ。昨季の1月のフローニンゲン戦でエールディビジにデビューして、およそ半年しか経っていない。このまま順調に成長を続ければ、次代のオランダ代表を担うのは間違いないだろう。18歳になって迎える来季の夏には、どこか欧州のビッグクラブに移籍しているかもしれない。

 イハッタレンに限らず、ベルフワイン、マレン、デンゼル・ドゥムフリースといった選手たちは、近い将来、他国のクラブに引き抜かれていくことだろう。しかし、もし今回のアヤックス戦で先発した選手たちを、もう2年は引き留めることができたら…欧州の舞台で“ヤングPSV”の躍進を見ることができるかもしれない。

 もちろんCLの上位を狙うには、バルセロナから復帰した04年の頃のフィリップ・コクーのようなベテランの力も必要になるだろう。現状では、若干ボランチとCBのポジションが手薄だ。そしてそのチームに堂安律が絡めていたら…言うことはないのだが。

 もちろんこれは夢想に過ぎない。だが、そんな淡い願望を抱かせるだけの“ポテンシャル”を、ライバルと雌雄を決する一戦で、PSVは示したのだ。アヤックスとの第7節は、1-1のドローに終わったが、十分に将来性を感じさせる、戦闘モードの試合だった。

(取材・文:本田千尋【アイントフォーヘン】)

【了】

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