ポルトのセルジオ・コンセイソン監督【写真:舩木渉】
日本代表MF中島翔哉が所属するポルトに、欧州サッカー連盟(UEFA)から調査が入るようだ。ポルトガル紙『レコード』など複数メディアが伝えた。
調査対象となるのは現地19日に行われたヨーロッパリーグ(EL)のグループリーグ初戦、ヤングボーイズ戦におけるファン・サポーターの行為だ。ポルトの1点リードで迎えた15分、ヤングボーイズのFWジャン=ピエール・エンサメがPKを蹴ろうと準備している際に、南側ゴール裏スタンドから黒人の同選手への差別的チャントが歌われたという。
叫ばれたのは「マカコ!」という言葉だった。これは日本語に直すと「猿」の意味になり、黒人のエンサメに対する差別表現だと指摘されている。南側ゴール裏に陣取る熱狂的なサポーター団体「スーペル・ドラゴエス」のリーダーを務めるフェルナンド・マドィレイラ氏も批判の的となっているようだ。
しかし、『レコード』紙によれば、マドゥレイラ氏は「マカコ!」が自身のあだ名だとして人種差別が起こったことを否定しているという。彼の主張は次のようなものだ。
「メガホンはいつでもオープンで、誰かが私を呼んだり、スタンドの誰かに呼びかけたりしていた。彼らはあらゆることで私を非難したが、レイシストというのは初めてだ。私はいつも『マカコ』として知られていて、それ以外に説明のしようがない。サッカーをプレーするときも常に9番のシャツを着て、背中には『マカコ』という名前が入っている。SNSにおいてさえも『リーダーのマカコ』と呼ばれているんだ。疑いがあるなら私は誰にでも見せることができる」
「私たちはこれらの(人種差別的な)意味を持つ可能性のあるどんなチャントも、慎重にコントロールしている。ヤングボーイズの選手を侮辱するつもりは一切なかったし、ポルトガル語でそうすることに何ら意味はない」
この人種差別疑惑が報じられたのは現地20日の夜からだった。翌21日にはサンタ・クララ戦に向けた前日記者会見が開かれ、ポルトのセルジオ・コンセイソン監督が出席。当然、その場でも疑惑に関する質問が向けられた。
しかし、指揮官も「私の国で人種差別は見たことがない」と存在自体を否定する見方を示した。
「私は選手としても監督としても、いくつもの大会を戦ってきているが、私の国で人種差別や違う国籍や異なる肌の色を持つ選手への攻撃は見たことがない。本当にそういうものがあったとは思わない。私はピッチ上で起こることをチームとともにコントロールする。それに関してはコントロールできないものだが、存在したとは思わない」
調査の結果しだいではポルトに厳しい処分が下される可能性もある。とはいえ「無観客試合」は避けられるかもしれない。今季のELではセルビアのパルチザンが予選の試合でのサポーターの人種差別行為によって処分を受けたが、無観客試合にはならなかった。
今季から導入されたUEFAの新ルールにより、処分対象の試合は14歳以下の子供たちのみ入場が許可された。19日に行われたパルチザン対AZアルクマールの一戦には約2万2000人の子供たちが集まったという。ポルトにも同様の処分が下されるか、あるいはお咎めなしか。今後の動向に注目だ。
【了】