両チーム、主力が軒並み欠場
ネイマールは出場停止で不在、エディンソン・カバーニ、キリアン・ムバッペを負傷で欠き、中盤のユリアン・ドラクスラーも不在。中盤から前の再構成を迫られているパリ・サンジェルマンは、マルキーニョスを中盤の底に置き、マウロ・イカルディ、アンヘル・ディ・マリアとセビージャから加入したパブロ・サラビアを前線に起用した。
一方のレアル・マドリーは中盤のルカ・モドリッチとイスコ、最終ラインのマルセロを負傷で欠いた上に、セルヒオ・ラモスとナチョが出場停止によりメンバーに入れず。この試合ではミリトンがCBを務め、左SBにはフェルラン・メンディを起用。エデン・アザールは直近のリーグ戦で復帰し、この日はスタートから起用され、ハメス・ロドリゲスが中盤に加わった。
ホームにレアルを迎えたパリは、前半から主導権を握る。インサイドハーフのイドリサ・ゲイエとマルコ・ヴェッラッティは広範囲に動いてパスを引き出し、マルキーニョスはパスの受けどころとなる。両サイドバックはタッチラインまで開いて幅を作り、前線の選手がハーフスペースを使って、シンプルなコンビネーションからチャンスを作りだす。
3点を奪って快勝したパリだったが、得点はいずれもシンプルなもの。個の力に依存せずに、基本に忠実なプレーからゴールネットを3度揺らした。
予想外の試合展開に
先制点はパリ。イカルディとのワンツーに左SBのベルナトが突破すると、その折り返しをアンヘル・ディ・マリアがニアで叩いて14分にゴールネットを揺らす。さらに、33分には右サイドのスローインから、ヴェラッティとのワンツーでゲイエが相手を剥がすと、中央のディ・マリアにパスを送る。左足で正確にコントロールされたボールは、ゴールネットに吸い込まれ、パリの追加点となった。
2点を先行された直後にベイルがループシュートでゴールネットを揺らした。しかし、VARの助言によるレビューを経て、トラップの際にハンドを犯したとして、得点は認められず。
レアルは交代カードを切って状況の打開を図るも、試合の流れは変わらず。パリの戦いが特別高度なものだったわけではないが、それを打ち破る知恵も技術も体力も、レアルは持ち合わせていなかった。
後半アディショナルタイムにパリは、トマ・ムニエがインターセプトして攻め上がってロングカウンターを発動。左サイドを駆け上がるベルナトにパスを送ると、GKをかわしてシュートかと思いきや、ムニエにリターン。DFは決死のスプリントでゴールを塞ぐが、ムニエのシュートはゴールネットに吸い込まれて、決定的な3点目をあげた。
パリの誤算はマルキーニョスの負傷。66分にアザールとの1対1を止めたが、このプレーで負傷して交代している。サラビアも負傷で交代するなど、今後の戦いにおいては不安もあるものの、レアルとの戦いを制したことで、グループリーグ突破へ一歩、駒を進めた。
歴然たる差が生まれた理由
3対0という大差がついたが、内容を表したスコアと言っていいだろう。レアルはこの敗北から収穫を見出すことは難しく、パリにとっては、主力不在の中でこの戦いができたことは自信につながる。
レアルは、DFラインの再編成を余儀なくされたことをエクスキューズにすることもできるが、この日の戦いはお粗末だった。ハメスは守備にも貢献する意思を見せていたが、チームとしての明確なプランは見えず、ボールの獲りどころもなかった。
シュートはどれも単発に終わり、枠内シュートは0本で、古巣対戦となったGKケイラー・ナバスに仕事を与えず。試合を通してカリム・ベンゼマには9本、ガレス・ベイルには14本しかパスが入らず、前線は孤立。クリエイターとコンダクターを欠く中盤によって、チームはちぐはぐな戦いを強いられた。
レアルの攻撃が停滞した理由を、パリの中盤の活躍に求めることもできる。特にMOM級の活躍を見せたゲイエは4回のタックルと、2回のインターセプトを記録。トランジションを制して相手の攻撃の起点を潰している。
パリは攻撃に転じれば、両SBがタッチライン際まで開いて幅を作り、ハーフスペースを使って次々とトライアングルを作り出す。ワンツーで相手を剥がし、それによって生じたマークのずれを使ってフリーの選手にボールを渡していく。先制点と2点目については、ほぼこの形から点が生まれている。圧倒的な個の力を持つ前線の選手を欠いたが、組織力でカバーすることができていた。
前線の選手の構成が変わっても、レアルを相手に3得点をあげて快勝したパリ。就任2季目を迎えたトーマス・トゥヘルのチームは成熟が進み、クラブの悲願ともいえる欧州での躍進が見えてきたと言えるだろう。
(文:加藤健一)
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