シメオネ9年目の大刷新
5位、3位、1位、3位、3位、3位、2位、2位、2位。
ディエゴ・シメオネが監督に就任して以降のアトレティコ・マドリーの順位である。バルセロナ、レアル・マドリーの2強に割って入り、13/14シーズンには18年ぶりのリーガ制覇も達成した。しかし、以降6シーズンは優勝を逃している。
13/14シーズンのリーガ制覇とUEFAチャンピオンズリーグ決勝進出を知るのは、ごくわずかとなってしまった。ジエゴ・コスタはロンドンへの旅路を経て帰還し、DFホセ・ヒメネス、MFサウール・ニゲス、MFコケといった当時の若手選手が、主力として現在はチームを牽引している。
今季こそは悲願のリーガ制覇へ。しかし、その思いと逆行するように、今夏の移籍市場でアトレティコは主力選手の放出を余儀なくされた。
加入1年目で主軸に登りつめたMFロドリはペップ・グアルディオラに乞われてマンチェスター・シティへ。DFリュカ・エルナンデスは多額の移籍金をクラブに残してバイエルン・ミュンヘンへ。エースのFWアントワーヌ・グリーズマンはついにバルセロナへと旅立った。
さらに、DFラインを支えてきたディエゴ・ゴディン、ファンフラン、フィリペ・ルイスは契約満了でチームを離れた。しかし、主力とベテランの退団を新陳代謝ととらえ、チームは若返りとチーム強化を図った。
グリーズマンが抜けた前線には、“ネクスト・ロナウド”とも称されるポルトガル代表FWジョアン・フェリックスを獲得。グリーズマンの7番を継承し、早々にチームにフィットしている。
中盤には、メキシコ代表MFエクトル・エレーラをポルトから、MFマルコス・ジョレンテをレアル・マドリーから獲得。指揮官の指向するサッカーにフィットしそうな2人の獲得で、中盤の選手層は厚みを増した。
リュカ・エルナンデスに加え、ベテラン3人が同時にチームを去ったDFラインには、インテルに期限付き移籍をしていたシメ・ヴルサリコが復帰。さらに、左SBには21歳のレナン・ロディ、CBにはポルトからフェリペ、右SBにはイングランド代表のキーラン・トリッピアーを獲得して、穴を埋めている。
これまでのアトレティコと言えば、4-4-2や4-1-4-1といった布陣をベースだったが、今季は4-3-1-2を取り入れる試合が多い。トップ下にトマ・ルマール、2トップに異なる特徴を持つジエゴ・コスタとフェリックスを並べる形だ。在任9季目を迎えるシメオネは、3バックも試しており、新たな戦い方に突破口を見出そうとしている。
中盤はコケ、サウール、トーマス・パーテイに加えて新戦力も加入し、豊富な陣容を形成。新たな顔ぶれが並ぶディフェンスラインが真価を発揮するのはこれからだが、数年のスパンで見れば、年齢層が高くなっていた前任者より高い期待値を持てるだろう。
補強・総合力評価
IN
DF マリオ・エルモソ(エスパニョール)
DF キーラン・トリッピアー(トッテナム)
DF レナン・ロディ(アトレチコPR)
DF フェリペ(ポルト)
DF シメ・ヴルサリコ(インテル/期限付き移籍満了)
MF マルコス・ジョレンテ(レアル・マドリー)
MF エクトル・エレーラ(ポルト)
FW ジョアン・フェリックス(ベンフィカ)
FW イバン・シャボニッチ(ベンフィカB)
OUT
DF リュカ・エルナンデス(バイエルン)
DF ファンフラン(サンパウロ)
DF フィリペ・ルイス(フラメンゴ)
DF ディエゴ・ゴディン(インテル)
DF ネウエン・ペレス(ファマリカン)
MF ロドリ(マンチェスター・シティ)
MF ベルナルド・メンサー(カイセリスポル)
FW アントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ)
FW ニコラ・カリニッチ(ローマ/期限付き移籍)
FW ジェウソン・マルチンス(モナコ)
FW ルシアーノ・ビエット(スポルティング)
補強評価:B
経験値の面で見れば、グリーズマンやゴディンらの退団はマイナスになるが、代わりに連れてきた選手たちにも、期待が持てる面々が並ぶ。ジョアン・フェリックスは早々にチームでの地位を築いており、チームを高みへと連れて行ってくれるだろう。
総合評価:A
新戦力が並ぶDFラインは、選手層という意味では不安が垣間見える。そこはシメオネの手腕次第とも言えるが、3連覇を狙うバルセロナの対抗馬としては十分な戦力を揃えたと言えるのではないだろうか。
【了】