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ラーム、キミッヒの後継者に。日独ハーフの18歳、アペルカンプ真大とはどのような選手なのか?【インタビュー(3)】

今季、ドイツ・ブンデスリーガでプレーする日本人選手は激減した。フランクフルトの長谷部誠、鎌田大地、ブレーメンの大迫勇也。しかし、もう1人日本人の血を引く選手が“ブンデスリーガー”となるために奮闘を続けている。その名は、18歳のアペルカンプ真大(シンタ)。デュッセルドルフの下部組織でプレーする日独ハーフのMFに全4回のインタビューを敢行した。今回は第3回。(取材・文:本田千尋【デュッセルドルフ】)

text by 本田千尋 photo by Dusseldorf

U-19では主将。ボランチ、トップ下で11ゴール8アシスト

アペルカンプ真大
フォルトゥナ・デュッセルドルフに所属するアペルカンプ真大【写真:フォルトゥナ・デュッセルドルフ】

インタビュー第2回はこちら

 デュッセルドルフU-19の2年目のシーズンからは、「ドイツ人らしさを出せ」と言うだけでは足りないと思ったのか、シュカ監督はアペルカンプに主将を任せた。この決定も、日本人らしく優しい性格を変えるためだったという。

 シュカ監督の狙いは、物の見事にハマった。キャプテンマークを巻いたことで、アペルカンプはさらに変わっていくことになる。

「もちろんチームを引っ張る責任がありましたし、個人的にも結果を残さないといけなかったです。特にU-19の2年目は、その後どういう道になるか決まるシーズン。やっぱり結果を残さないとその後もやっていけないので、本当にやらなきゃいけないって思いましたね」

 主将としてチームを牽引したアペルカンプは、勝負の2年目で11ゴール、8アシストの結果を残す。ボランチでもプレーしたが、トップ下でプレーした時に、より多く点を取ったという。

 そして何よりメンタル面で殻を突き破ったのだ。後にサッカー選手人生を振り返った時、父親の仕事の都合でドイツにやってきたことを“第一の転機”とすれば、フォルトゥナのU-19時代に「ドイツ人らしさ」を覚醒させたことは、“第二の転機”として振り返ることができるのではないか。

 もし、父親がデュッセルドルフに転勤になることはなく、アペルカンプも変わらず日本で暮らしていたら、アイデンティティの大部分を占めるのは日本人のままで、眠っていた「ドイツ人らしさ」が目を覚ますこともなかっただろう。

トップチームでは右SB起用も。その意図とは?

 こうしてU-19で結果を残したこともあって、今季からアペルカンプはU-23に昇格。さらに夏のプレシーズンには、トップチームのキャンプに呼ばれることになる。7月1日から1週間、ヴィーゼン湖で張った第1次キャンプに呼ばれた時は驚いたが、「予感はあった」という。

「呼ばれた時は、すごく驚きました。でも一応、この夏に来る予感はしていました。その一ヶ月前くらいから予感はありましたね。いつも夏のキャンプでは、アカデミーからだいたい2、3人の選手が呼ばれていたので、今回は僕になるかなあ、って思っていました。だから、少し心の準備をしていました」

 第1次キャンプ中に行われたテストマッチでは右SBで起用され、フンケル監督からポジショニングなど簡単なアドバイスを受けたという。これまで多くの日本人選手を指導してきた“伯楽”が、将来有望なアカデミー出身選手を右SBで起用した意図は定かではない。

 だが、確かにアペルカンプのプレースタイルは、ドイツ代表SBヨシュア・キミッヒや元ドイツ代表SBフィリップ・ラームに似ているところがある。アペルカンプの身長は175cm。まずキミッヒ(176cm)、ラーム(170cm)と背格好が似ている。両選手ともボランチもこなすことができ、ポジションも被るところがある。

 そして前述のとおり、ボールの行先を早く予測してプレーし、ポジショニングに長けているところもそうだが、シンプルなプレーを心掛けているところが似ている。8番、10番のポジションで出場した際にはゴールを狙いに行くが、何よりチームが勝つことを一番大事に考えているところが、ラームらしいと言えるだろう。

アペルカンプが参考にする3人の選手

 もっとも、アペルカンプが実際に参考にしている選手は、フォルトゥナのトップチームに在籍する2人だ。1人はボランチのケヴィン・シュトゥーガー。

「去年も9月に1回トップの練習に参加したんですが、その時に1番目に止まったのはシュトゥーガー選手でしたね。同じボランチのポジションなので、ミニゲームですごく目に止まりました。本当に一個一個のプレーが速い。ボールを貰う前の動きが速かったし、ボールを貰う前に周りを見て、何をするか確実にわかっている。そういうところが参考になりますね」

 もう1人は、右SBのマティアス・ツィンマーマンだ。

「今は右SBもやっているので、ツィンマーマン選手も結構参考にします。チーム内では『メンタリティ・モンスター』って言われていて、試合中に闘争心をすごく表に出すタイプ。メンタル面でも僕はまだまだレベルアップ、ステップアップできるので、そういう場面を見て、参考にしています」

 ちなみにドイツ代表で実際に参考にしている選手は、トニ・クロースなのだという。

 引き続き、7月17 日から9日間、オーストリアのマリア・アルムで張った第2次キャンプにも呼ばれたアペルカンプ。そして2度の合宿だけでなく、プレシーズン中はずっとトップチームと一緒に過ごしてきた。

 8月10日に行われたDFBポカール1回戦、対FC08ヴィリンゲン戦でメンバー入り。格下相手の試合だったこともあって、フンケル監督の中では、後半からアペルカンプを起用するプランがあったのだという。試合前のミーティングで、老将はトップチームの選手たちに向かって、次のように檄を飛ばした。

「3-0、4-0で前半を終わらせて、後半に若い選手、シンタともう1人を交代で入れることができるように、スターティングメンバーは結果を残せ」

 だが、「スターティングメンバーは結果を残せ」なかった。ヴィリンゲン相手にまさかの大苦戦。「3-0、4-0で前半を終わらせ」るどころか、終了間際、判定は疑わしかったが、PKを与えて先制を許す。延長120分間の激闘の末、3-1スコアでようやく5部所属のチームを下した。

 残念ながらトップチームの公式戦でデビューすることはできなかったが、その1週間後、今度はブンデスリーガの開幕戦、対ヴェルダー・ブレーメン戦のメンバーに呼ばれることになるのである。

インタビュー第4回はこちら

(取材・文:本田千尋【デュッセルドルフ】)

【了】

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