PK奪取など持ち味を発揮した久保建英
10日に行われた2022年カタールワールドカップ・アジア2次予選のミャンマー代表戦に出場し、その翌日にスペインへと戻り、12日にマジョルカの練習に合流。しかし、リーガ・エスパニョーラ第4節のアスレティック・ビルバオ戦は13日開催。これらの状況を受け、MF久保建英はA・ビルバオ戦はベンチ外となるのではないか、という報道も出ていた。
もちろん疲労の影響もあり、なおかつチームメイトとそれほど多くの時間を過ごしたわけでもない。「ベンチ外となるのでは?」という報道が出ても、何ら不思議ではなかった。マジョルカを率いるビセンテ・モレノ監督も久保の起用に関しては慎重な見方を示していた。
迎えたA・ビルバオ戦。先発メンバーにその名はなかったが、ベンチメンバーには背番号26 久保建英の名がしっかりと記されていた。出場するかどうかこの時点では当然わからないが、ホーム戦デビューへの期待は高まった。
そして、スコアレスのまま迎えた64分のことだった。MFダニ・ロドリゲスが交代を命じられる。代わってピッチに入ったのは背番号26であった。
ついにホームデビューを果たした久保は、D・ロドリゲスと同じ右サイドハーフで出場。18歳の若武者は64分にいきなり相手陣内でボールを奪ってショートカウンターに繋げようとするなど、悪くはない試合の入りを見せた。
72分にはDFホアン・サストレからパスを受けると、迷わず縦へ。巧みなシザースを繰り返して相手を翻弄しながら、最後はグラウンダーのクロスまで持ち込んだ。5日に行われたパラグアイ戦、10日のミャンマー戦にも日本代表として出場していたが、疲労の影響はまったく感じられなかった。
そして80分、久保は大仕事をやってのける。右サイドでボールを受けた背番号26がペナルティエリア内へ侵入すると、一度ボールをまたいで中ではなく縦へ突破。久保の利き足である左を警戒していたDFユーリ・ベルチチェは慌てて足を出すが、これがボールではなく久保にかかったとしてマジョルカにPKが与えられたのである。
だが、これを途中出場のFWアブドン・プラッツがまさかの失敗。久保は決勝ゴールの立役者となることができなかった。
試合はその後、お互いにチャンスシーンを作るもののゴールを奪うまでには至らず、0-0のまま終了。最後の最後まで熱いバトルが繰り広げられた非常に興味深い内容のゲームであった。
与えたインパクト。今後の課題は?
この日も途中出場という形ではあったが、PK奪取に成功するなど限られた時間の中でしっかりと結果を残した久保。試合後、スペインメディアもそのプレーを称賛しており、『マルカ』は「クボがリーガで最初のトリックを披露」と見出しをつけ、「(ユーリ)は魔術師のトリックで催眠術をかけられPKを与えた」と久保を大絶賛していた。
もちろん個人として与えたインパクトは絶大だった。PKを獲得したシーンは、もしかすると久保でなければ成り立たなかったのかもしれない。ただ、チーム全体における久保に関してはまだまだ改善すべき点が多くあるようにも思う。
リーガデビューとなったバレンシア戦でもそうだったが、まだボールタッチの回数は少なく、パスを受けても個人で突破することがほとんど。周りとうまくパスを交換しながら守備陣を崩すといったシーンはここまでそれほど多くはなく、まだまだお互いの特徴を探り合っている状況となっている。
この日の久保はオフ・ザ・ボール時に中へ侵入してボールホルダーと近い距離でパスを受けようとしていたが、タイミングなどが合わないのか、パスは来ない。もちろん動き続けることに意味はあるのだが、果たして味方選手がしっかりと久保のポジショニングを確認しているのかどうかにも、まだ疑問が残る。
また、FWラゴ・ジュニオールが左サイドを突破した75分の場面では、マイナスの折り返しを受けようとしていた久保とMFサルヴァ・セビージャのポジショニングが被っていた。ペナルティエリア内に人数を集めているという点では評価できるが、場合によっては前の選手がブラインドとなりシュートチャンスが潰える可能性もある(このシーンはシュートまで持ち込んだが)。
さらに、79分の場面でもセビージャがボールを持った際、MFアレイクス・フェバスと久保のポジションが被り、背番号26がたまらず動き直したシーンがあった。これは恐らくフェバスが周りを確認していなかったところに問題があるが、やはり味方選手との位置関係などの確認などはまだまだ改善していく必要があるだろう。
ただ、久保はまだマジョルカに合流してから日が浅い。その間、代表招集もあってチームを離脱もしているため、やはり難しさはあるだろう。まだリーグ戦2試合を行ったのみで、課題が出てくるのは当然だ。
また、少なからずこの試合で残したPK獲得という事実はチームメイトに大きなインパクトを与えたはず。それを今後、更なる信頼へと繋げ、より良い形でチームに貢献してほしいところだ。
(文:小澤祐作)
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