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日本代表 5年前

日本代表は安西幸輝を使うべき。パラグアイ戦の意義、戦力拡充の重要な機会に

日本代表は5日、キリンチャレンジカップでパラグアイ代表と対戦する。カタールワールドカップのアジア2次予選を直後に控えるタイミングで、南米のチーム相手の親善試合を戦う意味とは。そして試合に勝つだけでなく今後の戦いを見据える上で、試しておきたいオプションとは。(取材・文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

パラグアイ戦の意義とは

日本代表
日本代表は5日にパラグアイ代表と対戦する【写真:Getty Images】

 ワールドカップ予選直前の親善試合だが、意義を見出しにくいマッチアップとなった。5日に行われる日本代表のパラグアイ戦は、“復習”の意味合いが強い一戦となるだろう。

 アジアの予選で対戦するチームと、南米からやってきたパラグアイ代表は特徴が全く異なる。実力で見ても日本代表が10日に対戦予定のミャンマー代表より、パラグアイ代表の方が何枚も上手だろう。

 しかも、南米から来日したパラグアイ代表はコンディションが万全とは言えないし、全員揃っての練習は前日の1時間だけと準備に十分な時間を割くことができていない。故に本来の力を100%発揮できる可能性は非常に低いと言える。

 そんな親善試合で何を意識すべきか。日本代表が集合するのは約3ヶ月ぶりということもあり、やはりこれまでの1年間で積み上げてきたものの“復習”をして、来たるカタールワールドカップのアジア2次予選に備えることが最も大きなテーマになる。

 森保一監督は4日の記者会見で「戦術的なコンセプトの部分を試合の中で選手たちに確認してもらいたいと思いますし、選手個々でイメージの共有をしてもらいたいなと。お互い同じ絵を描けるように、イメージの共有をしてもらいたいなと思います」と語っていた。

 そのうえで6月のトリニダード・トバゴ戦とエルサルバドル戦で採用した3バックではなく、これまで基本システムとして使ってきた4バックでパラグアイ戦に臨む予定であることにも言及していた。

 今回の日本代表は23人のうち海外組が19人を占め、中にはこの夏に移籍したばかりの選手や、環境が変わってコンスタントな出場機会を得られていない選手もいる。所属クラブ内での立ち位置や取り組んでいる戦術も変化しているはずで、そういったものとのギャップを埋めながら、日本代表のやり方を再び体に染み込ませる作業と各選手のコンディションを見極める作業を同時並行で進めていく必要もある。

 森保監督は選手起用の方針に関しても「基本的にはフィールドプレーヤーにしてもGKにしても、(所属クラブで)試合に出ている選手を選んでいきたいと思っています」と明かした。やはりパラグアイ戦は“確認”や“復習”を意識しながら、現在地を見定める試合になる。

パラグアイ代表の戦い方は?

 今年6月のコパ・アメリカでベスト8に進出したパラグアイ代表は、日本戦に向けて多くの若手を招集してきた。主力級も数人が抜け、実績の少ない選手も含めて次の目標のためにチームを再構築する段階に入っていると見られる。

 パラグアイ代表のDFファビアン・バルブエナは「2大会連続で逃しているので、今の自分たちにとって最大の目標はワールドカップに出場すること。今回、日本のような強力なライバルと対戦を重ねていくことで、その目標を達成したい」と、3年後のカタールワールドカップを意識した言葉を残した。

 また主力FWアンヘル・ロメロも「短期的な目標としてはワールドカップの南米予選と、来年のコパ・アメリカになる。そこに向けて良いチームを作り上げていきたい。今年はブラジルで行われたコパ・アメリカで、チームの結束力が非常に高まった。明日の試合も今後に生かしていきたい」と、来年再び開催されるコパ・アメリカや困難を極めるワールドカップの南米予選を意識している。

 日本も出場したコパ・アメリカでのパラグアイ代表は、エドゥアルド・ベリッソ監督が就任してから初めての国際大会で印象的なパフォーマンスを見せていた。グループリーグのアルゼンチン戦では実力者揃いの相手にポゼッションで対抗し1-1のドロー、準々決勝のブラジル戦はマンツーマンディフェンスを基本にした粘り強い戦いで0-0のままPK戦までもつれる激闘を演じた。

 戦術家として知られるベリッソ監督は短期間で複数の戦術を使い分けられる洗練された集団を作ってきたわけだが、今回はいかんせん時間が足りなすぎる。経験の浅い若手も多い中で、全員揃っての練習は1時間しかできていないことも考えると、比較的シンプルで基本的な部分をチームに落とし込んで日本代表に挑んでくるのではないだろうか。

 例えばブラジル戦のようにマンツーマンマークを要所で活用しながら、日本のポゼッションを迎え撃ってフィールド全体の活性を妨げるといった戦い方も考えられる。そうなった場合、日本代表としてはポジションチェンジやパスワークで意図的に局所的な数的有利を作って相手の布陣を動かし、バランスを崩していく戦い方が有効だろう。

 セントラルMFやFW、サイドMFが常に目の前にマークのいる状況に置かれるとすれば、サイドバックの攻撃参加やセンターバックからの持ち上がりなど、ちょっとした工夫がゴールへ向かう道筋を作り出すことにつながる。

 特にサイドバックの戦術的なバリエーションを増やしておくことは、これから始まるワールドカップのアジア予選に向けても重要だ。おそらく日本相手に引いてくるチームが多い中で、サイド攻撃に厚みを持たせられるサイドバックは貴重なオプションとなる。

安西幸輝の重要性。ポルトガルで急成長中

安西幸輝
安西幸輝は日本代表の重要なピースになりうる【写真:Getty Images】

 指揮官が「試合に出ている選手を選ぶ」と語っていることや、今回の合流時期から考えてパラグアイ戦の左サイドバックは長友佑都の先発起用が濃厚だろう。逆に右サイドは酒井宏樹が磐石の地位を築いているが、ここで安西幸輝を使ってみても面白いのではないか。2人とも日本代表には3日から合流しており、所属クラブで継続的に試合に出ていて森保監督の掲げた「条件」も満たしている中で、あえて安西の起用を推したい。

 今夏からポルトガル1部のポルティモネンセに移籍し、リーグ開幕からすでに右サイドバックとして定位置を確保している24歳は、長足の進歩を遂げている。安西本人も「(ポルトガルは)サッカーのやり方が日本とは全然違ったので、そこはすごく良い勉強になっています」と充実感をにじませていた。

 実際、安西の存在感はポルティモネンセでも際立っている。「(相手の)ウィングの選手が張って1対1を仕掛けてくる分、守備はあまりやってこないので、オーバーラップをしたときにすごくチャンスになる回数が日本よりも増えているので、そのあたりの攻撃に関してはすごく自信を持ってやっています」と語ったように、毎試合必ずハイライトに採用されるようなチャンスの場面に安西の攻め上がりやクロスが関わってくるほど、攻撃によく絡めているのだ。

 また「ウィングの選手が張って1対1を仕掛けてくる」ことによって、課題だった守備面でも実力が常に試される環境になった。「ポルトガルリーグはすごく激しくて、非常にコンパクトで、3トップのチームがすごく多くて、ウィングはガンガン仕掛けてくるので、そういう守備の1対1というのはすごくやってきたと思う。守備の部分では非常に成長できているのかなと思っています」と手ごたえを口にしていた。

 今回、日本代表に招集されたサイドバックの選手は長友、酒井宏樹、安西の3人のみ。昨年のロシアワールドカップ後に酒井高徳が代表引退を表明したことで、長友や酒井宏樹に続くサイドバックの不在は今後に向けた不安材料の1つになっていた。

 もし安西が攻守両面で十分な力を発揮できるのであれば、左右両サイドを遜色なくこなせるサイドバックの存在が日本代表にとって大きなアドバンテージになる。32歳の長友や29歳の酒井宏樹がいつまでも代表として君臨できる保証はなく、年齢的にも24歳の安西のような若い選手の台頭が待たれるところだ。

 パラグアイ戦は、ワールドカップ出場権獲得に向けて勝利を落とすことのできないアジア予選の戦いを前に、そういった次世代を担う選手たちの実力を再確認する貴重なチャンスにもなる。選手から見れば、次の試合の戦い方などを意識しすぎることなく、戦力として信頼できることを証明する機会だ。

 ワールドカップ予選は長い戦いで、出場停止や所属クラブでの出番喪失、負傷離脱などもあるだろうし、最初から最後まで同じメンバーで戦い抜くことは不可能に近い。だからこそ、いつアクシデントに見舞われても大丈夫なように、より多くの選手起用の信頼できるオプションを用意しておく必要がある。

 また、安西にとっては古巣である鹿島アントラーズの本拠地・茨城県立カシマサッカースタジアムでの凱旋試合になる。2ヶ月前まで鹿島でプレーしていた24歳は「すごく思い入れが強いスタジアムなので、試合には出たい」と力強く語り、「ピッチに出て、サポーターの人たちに成長した姿を見せたいし、そういう思いで今回来ました」とも述べた。その強い思いもピッチ上でのパフォーマンスにつながるはず。森保監督の思い切った選手起用に期待したい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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