大迫勇也が抱く責任感
「(パラグアイ戦)は基本は4バックでスタートする考えでいます」
森保一監督が5日のパラグアイ戦(鹿島)を控えた前日会見で明言した通り、今回の日本代表は4-2-3-1の基本布陣で挑むことになる。攻撃陣はこれまで指揮官が軸に据えてきた1トップ・大迫勇也と堂安律、南野拓実、中島翔哉の2列目3枚が先発すると見られる。5日後には2022年カタールワールドカップへの第一歩となるアジア2次予選初戦・ミャンマー戦も控えるだけに、連動性と躍動感あるアタックを前面に押し出す必要がある。
彼ら前線4枚のうち、2018年ロシアワールドカップアジア予選を経験しているのは大迫1人。その彼もヴァイッド・ハリルホジッチ監督体制の予選スタートとなった2015年6月の2次予選・シンガポール戦に途中出場したものの、そこから1年半もの招集見送りが続き、2次予選はほぼ参戦していないのだ。
最終予選途中の2016年11月のサウジアラビア戦からは絶対的1トップを位置付けられ、ロシアまで辿り着くことになったが、予選のゴールは2017年6月のイラク戦(テヘラン)のヘディング弾1点のみ。2014年ブラジル、2018年ロシアの2度のワールドカップに出場し、国際Aマッチ49試合出場14ゴールという実績を残してきた絶対的エースFWも、過去の予選での貢献度はそこまで高くはなかったのだ。
だからこそ、カタールを目指す今回は自らがチームをけん引しなければならない。
「ずっと中心でやってるから結果を出さないといけないという責任感がある。そこはも自分自身に対してプレッシャーをかけながらやるだけだと思う」と本人も改めて気合を入れ直していた。約2年間の長丁場となる予選期間を通してチーム最大の得点源となり、圧倒的存在感を示すこと。それが29歳になった大迫には強く求められるのだ。
ブレーメンでは「しっかり自分の特徴が出せる」
そうなれる期待感が今の彼には大いにある。8月17日のドイツ・ブンデスリーガ1部開幕以降、現時点まで3試合出場3ゴール。得点ランキング4位タイにつけているのだ。直近の9月1日のアウグスブルク戦では、開始8分にニクラス・フュルクルクのタテパスに鋭く反応し、一気に敵の背後に抜け出して先制点をゲット。2-2に追いつかれた後半22分には、マルコ・フリードルからのクロスにピンポイントで右足インサイドを合わせ、豪快なボレーを叩き込んだ。2つの得点シーンを見るだけで、現在の大迫がどれだけ好調かがよく分かるのだ。
「個人としては得点を取ること。そこにフォーカスし続けたいです。得点以外のプレーはロシアでもすごく自信になったし、もっともっと成長できるという手ごたえもつかめた。それを実現するためにも、ゴール前にこだわることが大事。肝心なところで点を取れる存在になりたいと思っています。今季は大きなチャンスですし、勝負の年。ブンデスでの得点はケルン時代の16/17シーズンに取った7点が最高。それでは数字的に少ないんで、2ケタを取った日本人FWの先輩たちを超えられるように頑張ります」
オフシーズンだった6月の個別インタビューで、今季の大迫はゴールをより強く意識する考えを明かしていた。その念願が叶い、フロリアン・コーフェルト監督からは目下、前線の軸に据えられ、フィニッシュという最重要タスクを託されている。
「監督には僕のやりたいようにやらせてもらっているし、しっかりと自分の特徴を出せるシステムでやらせてもらっている。そこが大きいですね。ただ、結果を出し続けないといけないし、ホントに毎試合毎試合、自分にプレッシャーをかけながらやってます」と彼は持ち前の得点感覚を研ぎ澄ませながら、充実した日々を送っている。
このペースが続けば、06/07シーズンのフランクフルトで11得点を挙げた高原直泰、13/14シーズンに15点、14/15シーズンに12点と2年連続2ケタをマークした岡崎慎司を超える可能性もゼロではないだろう。
「チームを勝たせられる点取り屋」になれるか
まさに絶好調と言っていい状態で今回の代表に戻ってきたわけだが、ミャンマー戦の前に5日のパラグアイ戦を結果と内容の伴ったゲームにすることがまずは肝心だ。森保監督も「パラグアイのような世界の強豪と戦って勝てれば、世界の中でも日本が勝っていけるという自信も得られるし、確率も高くなる」と6月のコパ・アメリカ(南米選手権)8強チームとの一戦を重要視している。
大迫にとっても、ファビアン・バルブエナなど能力の高いDF陣が陣取るパラグアイとの対戦は貴重な機会。エドゥアルド・ベリッソ監督が構築する堅牢な守りには定評があるだけに、それを打ち破ってゴールを奪えるかどうかは今後の予選を視野に入れても大きな注目点と言っていい。単純な個人の打開やクロスだけではゴールを割るのは困難だと見られるため、若き2列目トリオや酒井宏樹、長友佑都の両サイドバックらとの連携を向上させ、厚みのある攻めで得点を奪うような形に持ち込めれば理想的だ。
代表通算50ゴールの岡崎、37ゴールの本田圭佑、31ゴールの香川真司というこれまでの3枚看板がいなくなった今、大迫が「チームを勝たせられる点取り屋」にならなければ、カタールへの道は開けない。その一歩をミャンマー戦で力強く踏み出すためにも、直近のパラグアイ戦でいい感触をつかむこと。そこから始めてほしいものだ。
(取材・文:元川悦子【鹿嶋】)
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