ドイツで飛躍を遂げたイングランド代表ウインガー
ジェイドン・サンチョが育ったのは、犯罪率が高いことで知られるロンドン南部の町。7歳のときにワトフォードの下部組織に加入し、15歳でマンチェスター・シティへと籍を移した。
2016/17シーズン、U-18プレミアリーグでは、わずか14試合の出場で12得点4アシストと大活躍。シーズン後にU-17イングランド代表として出場したU-17EURO(欧州選手権)では、6試合で5得点5アシストの活躍で、大会最優秀選手に選出。サンチョへ注がれる注目度は高まった。
ペップ・グアルディオラが率いるトップチームの分厚い壁に阻まれたサンチョは、2017年8月にドルトムントへ移籍。バルセロナへ移籍したウスマン・デンベレが背負っていた背番号7が、17歳のイングランド人に渡された。「難しい決断だったけど、自分の可能性を発揮するための新たな挑戦としてはふさわしい時だった」と話したが、サンチョはドイツで大きなステップアップに成功する。
ペーター・ボスを監督に迎えた17/18シーズンのドルトムントは、8戦未勝利と苦しみ12月に監督交代を決断。それまではなかなか出場機会を得ることができずにいたサンチョも、ペーター・シュテーガー新監督のもとで、徐々にチャンスを獲得。次第にチーム状況も上向き、第31節レバークーゼン戦では、サンチョの1得点2アシストの活躍で4-0と大勝している。
このシーズンを、4戦フル出場で締めくくったサンチョにとって、翌18/19シーズンは大きな飛躍のシーズンとなった。
第6節まではすべて途中出場にもかかわらず、6アシストと結果を残したサンチョ。その後は、アメリカ代表FWクリスティアン・プリシッチに代わって右ウイングに抜擢され、シーズン通じて12得点、リーグ最多の17アシストをマークした。
イングランド代表としても、2018年10月12日に行われたUEFAネーションズリーグ・クロアチア戦でデビューしている。
そのプレースタイルとは?
イギリス連邦加盟国の一つであるトリニダード・トバゴをルーツに持つサンチョ。身長180cm、体重76kgと決して大柄ではないが、アジリティに優れている。
爆発的なスピードではなく、細かいタッチとフェイントを駆使したドリブルの印象が強い。フェイントで相手の重心を動かし、その逆をとって抜く。それに対して、相手は複数で対応せざるを得なくなる。すると今度は味方がフリーになる。そうなればサンチョは味方へパスを送ることもできる。
相手に囲まれていても、最適なプレーを判断できるのは、スペースを見る目が備わっているからだろう。周囲にスペースがあれば、細かいタッチでドリブルを始め、味方の近くにスペースがあれば、そこにパスを送る。
ともすれば独善的なプレーにも映りがちなドリブラーだが、サンチョはそのような印象を与えない。相手を抜き去ってゴールを決めるのではなく、相手を引き付けて、もしくはマークを剥がして、フリーの味方にボールを送ることにプライオリティを感じる。相手としてみればこれほどやりにくい相手はいないだろう。
ドルトムントではFWパコ・アルカセル、FWマルコ・ロイス、MFトルガン・アザールと攻撃のユニットを組む。今季ここまで公式戦4試合で12得点をあげ、バイエルン・ミュンヘンとのDFLスーパーカップにも2-0で勝利している。結成間もないユニットが結果を出しているのには、相性の良さを感じる。
特にチームのエース、マルコ・ロイスとは抜群のコンビネーションを見せている。昨シーズン、ロイスが決めた17得点のうち6つはサンチョがアシストしたもの。1選手へのアシストとしてはリーグ最多タイの数字となっている。
パリ・サンジェルマンで10番を背負うキリアン・ムバッペは1998年生まれ、アトレティコ・マドリーの新たなエース、ジョアン・フェリックスは1999年生まれで、サンチョは2000年生まれ。それぞれタイプの異なるアタッカーが、バロンドールを争う将来はそう遠くはないだろう。
(文:編集部)
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