リール2位躍進の立役者
リールからアーセナルにクラブレコードとなる移籍金7200万ポンド(約95億円)で移籍したニコラ・ペペは、1995年、フランスに誕生。リーグアンのアンジェでプロキャリアをスタートさせたが、すぐに当時3部のオルレアンにレンタル。15/16はオルレアンでプレーし、16/17シーズンはアンジェ復帰した。
アンジェでは目立った活躍をできなかったペペは、17年夏にリールに加入。“エル・ロコ(狂人)”の異名を持つビエルサを新指揮官に迎え入れた17/18シーズンを前に、リールはセカンドチームからの昇格を含めて、ペペを含めた若手選手を中心に18人を引き上げた。
しかし、ビエルサに率いられた新生リールは4勝8敗3分と低迷。解任を巡っては訴訟問題へと発展するなどクラブは揺れたが、最終的には12月、長年サンテティエンヌを率いたクリストフ・ゴルティエが正式に指揮官に就任した。
このシーズン、加入間もないリーグ戦2節まではベンチを温めたが、第3節以降はリーグ戦全試合に出場。ビエルサはペペを1トップで起用することが多かったが、ゴルティエが監督就任後は主戦場を右ウイングに移す。すると、リーグ戦ラスト14試合で8得点3アシストの活躍を見せた。チームは17位と低迷した中で、ペペはひとり気を吐いた。
さらに18/19シーズンは得点王のキリアン・ムバッペに次ぐ22得点をマーク。パリ戦では2試合ともに得点をあげ、マルセイユ戦では計3得点、リヨン戦でもゴールを決めるなど上位陣からの得点が目立った。チームは2位となり、UEFAチャンピオンズリーグ出場権を獲得した。
シーズン終了後には、リバプール、マンチェスター・ユナイテッドなどが獲得に興味を示すという報道が出たことで、注目度が一気に上昇。結果的にアーセナルがクラブレコードとなる移籍金7200万ポンド(約95億円)の5年契約でペペを獲得した。
そのプレースタイルは?
コートジボワールからフランスに移住した両親の下に生まれたニコラ・ペペは、少年時代にゴールキーパーとしてプレーしていた。その経験はFWとして活躍する現在、ゴールキーパーの動きを理解するのに役立っていると、本人は語っている。
13歳のときにフィールドプレーヤーにコンバートされると、ペペは同胞のスター選手、ディディエ・ドログバに憧れていたという。ゴール後に膝からスライディングをして敬礼するペペのセレブレーションはドログバと同じ。しかし、ペペのプレースタイルは、ドログバとは少し異なる。
右ウイングを主戦場とし、カットインから放たれる左足のシュートは、ペペの十八番とも言える。タッチラインに張り付いてプレーするよりは、細かいタッチで相手をかわし、ラストパスやフィニッシュに関わるプレーを得意としている。
183cmの体躯から繰り出される左足のキックは、豪快というよりも繊細という表現が似合う。昨季のゴールを振り返ると、力任せに蹴るのではなく、相手DFやGKの動きを読んでコースを狙うシュートが多い。おそらく先述のGKの経験が活かされているのだろう。
昨季はリーグアンで22得点を決めたが、これにはPKによる9得点が含まれる。仮にこれを除くと13ゴール11アシストという結果だ。スタッツで見ても、純粋なフィニッシャーというよりは、チャンスメイクにも関われるイメージが強い。さらに、高い身体能力を生かしたヘディングからも得点を狙うこともできる。
今季のアーセナルでアレクサンドル・ラカゼット、ピエール=エメリク・オーバメヤンと3トップを組むことが考えられる。リバプールのモハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ、マンチェスター・シティのラヒーム・スターリング、セルヒオ・アグエロ、ベルナルド・シルバの3トップも強力だが、アーセナルの新3トップもなかなかの破壊力を持っている。
昨季後半にウナイ・エメリ監督は、ラカゼットとオーバメヤンを同時に起用する時は2トップを採用することが多かった。長いシーズンの中で、選手を休ませる必要も出てくる。ペペが2トップの一角としてどちらかとコンビを組む機会も見られるだろう。
(文・編集部)
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