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リバプール対マンC、プレミアリーグ開幕前の頂上決戦。90分間に凝縮されたそのクオリティ

プレミアリーグ開幕を告げるFAコミュニティ・シールドのリバプール対マンチェスター・シティが現地時間4日に行われ、PK戦の末、後者が連覇を果たしている。両チームともにベストメンバーが組めなかったとはいえ、まさに頂上決戦のような白熱した展開となったこのゲーム。前後半でまったく別の顔を見せた両者の狙いはどこにあったのだろうか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

プレミア開幕前の“頂上決戦”

コミュニティ・シールド
リバプールとマンチェスター・シティがコミュニティ・シールドで対戦している【写真:Getty Images】

 昨季のプレミアリーグで壮絶な優勝争いを繰り広げたリバプールとマンチェスター・シティ。そんな両者が4日、プレミアリーグ開幕を告げるFAコミュニティ・シールドで対戦している。

 2018/19シーズンのイングランド王者とチャンピオンズリーグ(CL)王者による一戦は、お互いにコパ・アメリカ2019(南米選手権)やアフリカネーションズカップ2019開催の影響もあってベストメンバーを組めたとは言い難かった。たとえばリバプールで言えばセネガル代表としてアフリカネーションズカップ決勝まで戦ったFWサディオ・マネが不在。シティもコパ・アメリカに出場したFWセルヒオ・アグエロやFWガブリエル・ジェズス、GKエデルソンらがベンチに入ってはいたが、スタメンに名を連ねることはなかった。

 さらに、タイトルが懸かっているとはいえその舞台はシーズン開幕前のコミュニティ・シールド。両チームの監督、選手がどこまでの気持ちや覚悟を持って挑むのかは定かではなかった。プレミアリーグ開幕を1週間前に控えた両者が、ここで高い強度を持って挑まなかったとしてもそれは何ら不思議ではなかったのである。

 だが、試合はまるで昨季の頂上決戦を彷彿させるかのような展開となった。両チームともにアグレッシブな姿勢を前面に押し出してプレーしており、一瞬の気の緩みさえ感じられない。ウェンブリースタジアムに集った両チームのサポーターによる歓声も、熱を帯びていた。

 試合は12分にFKの流れからFWラヒーム・スターリングが押し込んでシティが先制する展開に。その後も同クラブはうまくバランスを整えリバプールに対応したが、76分、こちらもFKの流れから途中出場のDFジョエル・マティプが頭でゴールネットを揺らし、1-1の振り出しに戻った。

 90分間で決着はつかず、勝負の行方はPK戦に委ねられた。リバプールは二人目のキッカーであったMFジョルジニオ・ワイナルドゥムがシュートをストップされたのに対し、シティはキッカー全員が成功。この結果、シティはコミュニティ・シールド連覇を果たすことになった。

脅威となったデ・ブルイネの動き

ケビン・デ・ブルイネ
マンチェスター・シティのMFケビン・デ・ブライネ【写真:Getty Images】

 では、ここからは白熱した展開となったこの一戦を振り返っていきたいと思う。

 まず、前半にペースを握っていたのはシティの方であった。お馴染みの4-3-3を採用した同チームは最後尾から丁寧にビルドアップを始め、リバプールの強烈なプレスを外しながら敵陣までボールを運ぶ。シティはこの日、1トップにスターリングを置き、サイドにはFWレロイ・ザネとMFベルナルド・シウバを配置していたため、2列目にボールが収まってからは足下で受けるよりも素早く相手の背後を狙う動きで違いを生みだそうとしていた。

 3分にはDFジョー・ゴメスから高い位置でボールを奪ったスターリングがサイドのザネへパスを出し、フィニッシュまで持っていくなど、立ち上がりからその脅威は明らかとなっていた。

 左サイドは主にザネとスターリングを中心に攻める形が試合開始から見受けられたが、右サイドはB・シウバをうまく利用したMFケビン・デ・ブルイネの存在感が際立っていた。

 ベルギー代表MFが果敢に狙ったのがペナルティエリアの角のスペース。B・シウバがサイドに大きく開くことでDFアンドリュー・ロバートソンがそこへつり出され、DFフィルジル・ファン・ダイクとの間にスペースができる。仮にオランダ代表DFがそのエリアを潰しに行ったとしても、中央にいるスターリングが今度は2CBとの間のスペースを突くため、背番号4はこの場合、どうしようもなかったのである。

 そのスペースを突く動き出しでもデ・ブルイネの上手さが際立った。味方にパスが収まって一呼吸置いたところで、一気に加速。オフサイドラインギリギリで抜け出してクロスを上げる。14分にはまさにその狙いがハマり、チャンスを生み出しているのだ。

 ゴメスのカバーリングも的確で鋭く、何度かピンチを防ぐシーンもあったが、デ・ブルイネの卓越した動き出しでリバプールの最終ラインがグッと下がってしまったのは間違いない。こうなるとリバプールもカウンターを開始する位置が必然的に低くなってしまい、ゴールへの可能性は薄れる。シティの強さがしっかり表れていたと言えるだろう。

 前半はシティがシュート5本、リバプールは同4本。支配率は前者59%に対し後者は41%となっていた。

別の顔を見せたリバプール

 さて、前半はやや押し込まれた展開となったリバプールだったが、後半はまったく違った顔を見せたといっても過言ではないだろう。

 とくに流れが変わったのがMFダビド・シルバに代えMFイルカイ・ギュンドアンが投入され、リバプールもDFトレント=アレクサンダー・アーノルドに代えマティプを入れた60分から70分の間くらいの時間帯だ。

 この交代で流れを掴んだのは間違いなくリバプールであった。マティプを2CBの一角に置き、ゴメスを右サイドバックへ回したことにより、サイドでのプレスの速さが上がったようにも思えた。アーノルドは若干スターリングとの距離が離れていたが、ゴメスは基本的に近くで対応。70分には状況を見て判断し、ギュンドアンにパスが入った瞬間にプレスの強度を高め、後ろ向きのプレーに留めさせている。

 シティにとってはドイツ人MFがうまく試合に入り切れなかったのが最大の誤算となったことだろう。MFロドリとの連係もまだうまくいっている印象はなく、パスがズレるシーンも見られた。そこはリバプールにとってそこは格好の狩場となったに違いなかったのだ。

 また、リバプールはセカンドボールへの反応も鋭かった。カウンターを喰らっても帰陣が速いため、シティはシュートまで持っていくことが困難なものとなっていた。FWモハメド・サラーは何度かゴール前に侵入してシュートを放っており、ゴールこそ奪えなかったが、シティの最終ラインを深い位置まで下げさせたという点においてはその動きは効果的であったと言えるだろう。

 後半はリバプールのシュート数13本に対しシティはわずか3本。ボール支配率も前者の64%に対し後者は36%となっているなどその勢いは明らかであった。パスの本数もリバプールの310本、シティはわずか177本。リバプールの強度の高いプレーがシティを大いに苦しめ、持ち味を消していた結果と言えるだろう。

 昨季のプレミアリーグの頂点を争った両チームは、いきなりその実力を見せてくれた。まさに高クオリティが凝縮された濃密な90分間だったと言えるはず。プレミアリーグ開幕まであと1週間。今季もこの2クラブがイングランドサッカーを牽引することになるだろうか。

(文:小澤祐作)

【了】

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