「彼はすばらしく頭が切れた」
――哲学が先か、現象が先か。形而上学か形而下学か。ベルギー戦での最後の失点についてはどう考察しますか。ショートコーナーを選ばなかった本田のボールの入れ方、ムニエへの対応、デブルイネに正対した山口のケアーの仕方……。ルカクのスルーやそもそもがデブルイネを走らせてしまったことを見ても狙われたような感じでした。
「あの時間帯の味方のセットプレーからカウンターを食らっての失点は致命的だった。結果論という言い方もできるかもしれないが、あれは起こしてはいけない。そもそも結果からサッカーの哲学は考えるものでもある。もしも事件が起こったのなら説明を加える必要がある。
サッカーでは多くのことが、正解が無く不明になる。個々の選手を批判しても仕方の無いことだ。人は忘れてしまうのだ。選手は間違いを犯しうるということを。だからこそ尺度となる哲学が必要だろう」
――シュワーボのサッカー哲学に影響を及ぼした人物はいますか? あえて名前をあげるとすると。
「私はヨハン・クライフが考えていたことに興味を持った。彼はすばらしく頭が切れた。現役時代から類希な選手で技術も体力もあった。あのオランダ人は、あれほど上手いのにサッカーをしながらテクニック自慢に溺れず、なぜ相手にボールを奪われるのか、なぜゴールを決められてしまうのか、それをいつも真剣に考えていたのだろう。
彼の最初に到達した哲学は相手にボールを渡さず、できるだけ長くポゼッションをするということだった。ボールを失わなければ失点はしない。オランダ人はトータルフットボールを作り出し、そして始めた。さらにクライフはバルセロナでティキ・タカを創造した」
(取材・文:木村元彦)
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