それでも苦しんだ“脱ロベリー”
もし“ロベリー”が往年の、例えば3冠を達成した頃のように、攻守に惜しみなくハードワークを注げる状態であったなら、バイエルンはシーズンの前半戦であれ程苦戦することはなかったかもしれない。ちょうどニコ・コバチが新たに監督に就任したばかりで、チームが移り変わる途中だったドイツの常勝軍団は、ブンデスリーガ6連覇中の強さを維持できず、崩してしまう。
9月25日にホームでFCアウクスブルクに引き分けると、3日後のヘルタBSC戦を0-2で落とし、さらに10月に入ってホームでボルシアMGに0-3で敗れ、順位を7位にまで落とす。とりわけホームのアリアンツ・アレナで勝ち星を逃し続けたことは、近年にない出来事だった。
11月に入っても、10日にアウェイでボルシア・ドルトムントに2-3で競り負けると、続くホームで昇格組のデュッセルドルフに3-3のドローに持ち込まれてしまう。CLのグループEはアヤックスを抑えて首位で通過したが、リーグ戦ではドルトムントの後塵を拝し、2位で前半戦を折り返すことになった。
この頃のバイエルンが、拠り所となる“軸”を見失っていたことは明らかだった。例えば選手であればフィリップ・ラーム、監督であればユップ・ハインケスといったような存在。もし“ロベリー”という両輪がフル稼働できる状態だったなら、多少チームの状態が悪くとも、まさに09年8月のヴォルフスブルク戦で魅せたような、2人の個の力を“軸”に強引にでもゴールを奪っていくことで、チームの根幹がぐらつくことを防げたかもしれない。
ニャブリもコマンも、バイエルンの次代を担うポテンシャルを秘めているのは間違いないだろう。だが、“ロベリー”が持ち合わせていたような、味方が苦しい時にボールを預けたくなる“安心感”を獲得するには至っていないのではないか。