新戦術には課題も
一方で心配事もある。ボールを支配しながらもゴールを奪えなかったことだ。無得点について、監督自身は「プレシーズンということもあり、準備不足なのでしょうがない部分もある」と語る。
確かにその通りなのだが、現段階では気になるのは、崩しの局面に対してあまりチームの決まりごとが見えなかった点だ。正確にいうと高い位置でボールを奪い、人数をかけてゴールを奪うという大枠は伝わってきたものの、細かいボックス侵入の型は見えてこなかった。
そもそも今季のチェルシーは得点力不足が課題になる可能性が高い。
理由の一つは、エースのエデン・アザールが退団したことだ。代わりにクリスティアン・プリシッチがローンバックで加入したが、プレミア1年目にエース同様の活躍を期待するのは酷だ。
理由の二つ目は、シーズン20得点を期待できるワールドクラスのストライカーがいないことだろう。オリビエ・ジルーは素晴らしいポストプレイヤーだが点取り屋というタイプではない。ミチ・バチュアイがスコアラーだが、年間20得点もとれる突出した選手ではない。あるいはタミー・アブラハムは期待の若手だがプレミアだとゴールを量産した実績がない。
そういう意味では、個の力に依存できないこともあり、チームとしてどうゴールを奪うのかの約束事を作っていく必要がある。
しかし筆者がアロンソに対して、サッリ時代からの戦術的な変化を尋ねたところ「より自由に攻撃を楽しめるようになった」と語っている。おそらく攻撃の部分のルールは前任者より減っている。
もちろんランパードが語る通り、まだ準備段階だ。まだ良し悪しを評価する段階ではないが、早めにチームとしての得点の型をつくらなければ、シーズンに入ってから苦労することになる。そういう意味では日本での練習を通じて、攻撃パターンを増やしていきたいところだ。その片鱗をバルセロナ戦で見られることに期待したい。
(取材・文:内藤秀明)
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