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日本代表 5年前

前田大然は”韋駄天苦戦の歴史”を覆すか。ポルトガル移籍を決めた理由と先輩が残した教訓【コパ・アメリカに挑んだ若き日本代表の今(3)】

シリーズ:コパ・アメリカに挑んだ若き日本代表の今 text by 元川悦子 photo by Getty Images

永井謙佑が残した教訓

 しかしながら、日本の快足FWが海外で成功した例はそう多くない。永井謙佑も浅野拓磨も異国でのブレイクは叶わなかった。そこは松本の先輩・田中隼磨も懸念する点だ。

「ソリさんのサッカーの中での大然は自由に動けるし、やりやすかったと思う。だけど外国へ行ったら『サイドに張ってろ』『守備はしなくていい』と言われて、動きを固定されるかもしれない。『何でお前はムダに動くんだ』と苦言を呈されて違和感を覚えるかもしれない。そこで自分をどう変えていくか。それが大然にとって重要なテーマになってくると思う。どの監督にも適応できないとダメだし、頭を使ってやらないと。永井はそれができなかった。名古屋の時に一緒にプレーしていて、海外で活躍できるだけのポテンシャルのある選手だと思っていたけど、彼も異国の壁に苦しんだ。大然にはその話をして『お前は考えてやれよ』と言いました」

 永井はスタンダール・リエージュに行った際、「体の線が細いからもっと筋トレをしてフィジカルを強化するように」と指示を受けたという。その通り、筋トレを繰り返した結果、体の柔軟性や敏捷性が失われ、スピードに乗った走りができなくなり、試合に出られなくなったと本人が語っていた。

 そういった考え方の違いも海外では頻繁に見られるケース。前田大然もペチート監督らとしっかり意思疎通を図っていく必要がある。そういうコミュニケーション力も強く求められてくるのだ。

「東京五輪に出るために一番いい選択をしろ」と松本のスタッフから何度も言われ、残留を勧められながら、あえてリスクを覚悟してポルトガル行きを決めたのだから、ここからは前に進むしかない。

 8月12日には今季ポルトガルリーグが開幕するが、果たして東京五輪世代屈指の韋駄天は出番を得られるのか。まずはここから3週間で鮮烈な印象を残し、指揮官の信頼を勝ち取ることを最優先課題に位置付けるべきだ。そのうえで、決定力のあるアタッカーへ変貌を遂げられれば理想的。単に速いだけでなく、点の取れる怖いFWになるべく、今回のチャンスを最大限生かしてほしいものである。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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