「2人を超えないとA代表はみえてこない」
小学3年生から川崎の下部組織でプレーしてきた生え抜き。川崎らしい技術の高さ、目の良さがある。しかも均整のとれた体格で守備力もありハードワークできる。攻守に貢献できる弱点のない、ある意味若さが似合わないプレーヤーだ。
20歳でACミランの中盤を担ったデメトリオ・アルベルティーニを彷彿させる。アルベルティーニの印象はずっと変わらなかった。34歳で引退するまで、プレースタイルが全くといいほど変わった印象がない。ずっとそのまま。表舞台に出てきたときからベテランみたいで、ベテランになっても若々しかった。
「2人を超えないとA代表はみえてこない」(田中)
田中の言う「2人」とは、大島と守田だ。2人はすでにA代表歴があり、実力的には代表の常連であってもおかしくない。この2人を超えなければ川崎でもレギュラーポジションは確保できないのだから、A代表への視界も開けてこないわけだ。
トゥーロン国際大会ではU-22代表として活躍、優勝は逃したがブラジルとの決勝はPK戦までもつれている。田中は大会ベストイレブンにも選出された。五輪代表への視界は良好といえそうだ。
攻守にそつのない、いわば完成されたプレーヤーだが、実際には未完成だと思う。大きな欠点がないかわりに、全部をレベルアップしなければならない。攻撃で大島を、守備で守田を超えられるかどうかが当面の課題になりそうだ。
「1試合1試合、練習でも気を抜けません。違いを見せ続けなければいけない」(田中)
身近に具体的な目標となるライバルがいて、超えていけば自然に視界は開けてくる。良い環境にも恵まれている。プレースタイルは全然変わらないまま、ステージは上がっていく。そういう成長の仕方をするような気がする。
(取材・文:西部謙司)
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