来季への展望
さてユナイテッドのことを好きな人間として、自虐的に現状を評すと、「幸いなことに、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、FAカップ、どのカップ戦にも決勝戦に進出することができなかったため、早めにシーズンを終えることができた。昨季はコンディション面で悩まされたので悪くない」だろうか。スールシャール自身もこの状態に関して「他のチームに比べて有利な状況でシーズンを迎えることができる」とコメントしている。
ファンとしては悲しいが確かに監督の言う通りだ。昨季はコンディショニングに頭を悩まされたのだから、この有利な状況を生かして、今季こそきちんとフィジカルを作っていきたいところだ。実際、監督も昨季の反省を生かすべく、休養の前には個人別に行うべきトレーニングメニューを渡したのだという。
そして選手たちのSNSをチェックする限り、スコット・マクトミネイや、エリック・バイリーなどの選手はその言いつけをきちんと守って、オフのうちから真面目にトレーニングを開始している。ポール・ポグバやルーク・ショーは太って帰ってきたが…。
既存戦力の再生だけでなく、補強もユナイテッドは進めている。コンセプトは「貪欲な選手」に決めて、イングランドの他のチームに比べると積極的に動いているようだ。実際にスウォンジーからダニエル・ジェームズ、クリスタルパレスからアーロン・ワン=ビサカという若手の即戦力級を獲得している。
特にワン=ビサカの加入は大きい。対人戦がめっぽう強く、プレシーズンマッチでは、既にCBの負担を軽減するようなプレーも見せている。このCBが泣き所のユナイテッドとしては有難い新戦力だ。加えて噂に上がっているハリー・マグワイアを獲得できれば最終ラインはさらに強固になる。
ロメル・ルカクの放出も近づいているようだが、スールシャールはラッシュフォードや、アントニー・マルシャルで埋められると考えているようだ。
また若干17歳のメイソン・グリーンウッドも、3トップのどの位置でもプレーできる。レフティーながら左サイドから縦に仕掛けて右足でも強烈なシュートを打つことができる期待の若手に対して監督も期待を隠さない。プレシーズンマッチのリーズ戦で先制点をマークしたこともあり、既にチェルシーとのプレミアリーグ開幕戦でのスタメン起用の可能性を示唆しているほどだ。
「若手を中心に、ハードワークを欠かさず、アタッキングなサッカーを」というスールシャールの理想の絵は見えてきた。それをきちんと実現するために、年間通して戦える体を今のうちに作り、新しいユナイテッドの強さを見せて欲しいところだ。
(文:内藤秀明)
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