議論を呼んだゴール
だからといって、遠藤が満足することはない。たとえば1点リードで迎えた59分。エジカル・ジュニオとのワンツーで左サイドを抜け出した遠藤がスピードに乗ったまま、右足でファーサイドを狙ったシュートを放った。枠をとらえるかどうかの、ギリギリのシュートは予期せぬ展開を招いている。
レッズの左ウイングバック・宇賀神友弥ともつれ合いながら、仲川が胸のあたりで押し込んだ一撃は一度ゴールとして認められ、レッズの選手たちの猛抗議を受けてオフサイドで取り消しとなり、最終的には正式に仲川のゴールとなった。
「自分のよさが出たシーンだったけど、最後に僕がしっかりと決め切っていたら、あんなことにはならなかった」
松尾一主審の判定が二転三転し、中断時間が9分間にも及んだ異例の試合展開を神妙に受け止めながら、遠藤は残り15試合となったリーグ戦への思いを新たにする。暫定ながらマリノスは勝ち点36の2位をキープし、首位・FC東京とのポイント差を「3」に縮めている。
そして、マリノスの総得点「33」は依然としてリーグ1位であり、得点ランキングでトップタイの10ゴールをあげているエジカル・ジュニオ、8ゴールで並ぶ仲川とマルコス・ジュニオール、そして待望の初ゴールを決めた遠藤と前線の4人で約82%にあたる「27」をあげている。
「もちろん1点で終わるわけにはいかないし、ここから先の自分の振る舞いやプレーがすごく大事になってくる。僕が点を取れるようになれば3人へのマークも分散するし、負担も少なくなる。僕の誇りにかけて数字を積みあげて、もっともっと上のステージに行くことが、自分たちが優勝へ向かっていくうえですごく大事なことだと思っています」
喜田をはじめとするチームメイトたちへの感謝の思いを成長する力に変え、ファン・サポーターから「遠藤っていいね。点も取れるし」と言われるようになれば――2004シーズン以来、実に15年ぶりとなるマリノスのJ1制覇と、遠藤自身が日の丸を再び背負う姿が見えてくる。
(取材・文:藤江直人)
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