右サイドバックでの起用の可能性も…?
基本のシステムは4-2-3-1。厳格なゾーンとラインディフェンスを敷くミハイロビッチ監督は、「12年間で3-5-2をやったのは1度しかない」というほど4バックを好む。
戦術面でのアップデートにも余念がなく、DFラインからの組み立てを重要視している。足元の技術が高く、動きながらのインターセプトに強みを見せる冨安は、守備のメカニズムに合っていそうである。
そのセンターバックの一角は、おそらくベテランのダニーロ。昨季はここに若手のセルビア系ブラジル人のリャンコがいたが、パスを有していたトリノが放出を断った。冨安はここのポジション奪取に挑むことになる。
ライバルはキエーボから移籍し、イタリアの現実をよく知っているマッティア・バーニや、ジュビラー・プロ・リーグで昨季ナンバーワンDFの呼び声も得ていたステファノ・デンスビルなどだ。35歳のダニーロは2020年6月までの契約。最終的には今シーズンで冨安らに切り替えていく、という希望をクラブは持っているのだろう。
だが補強された選手たちと、現有戦力を見ていると、興味深い点が浮かび上がる。CBには人がだぶついているといった状態になった一方、サイドバックの層が薄めなのだ。
新戦力のCBのうち、誰か一人をサイドバックにコンバートさせる可能性は十分考えられる。左SBのミッチェル・ダイクスが攻撃的なので、右サイドバックは引き気味でバランスをとらせていた。ワイドに開いてボールを受けたのち、縦にパスを出してウイングを走らせていくという役割も課していた。
つまり足元の技術が確かな冨安を、右SBとして使う可能性もあるかもしれない。
守備重視のイタリアでは、組織的な守備にも対人の駆け引きにも守備の指導理論が確立している。その環境の中で冨安がどういう成長を遂げるのか、興味は尽きない。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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