戦力として期待し、投資している
欧州全土で猛暑に見舞われた6月28日、冨安健洋はボローニャにいた。
ボローニャ市郊外のカステルデーボレにある練習場に、冨安が関係者とともに姿を見せたのは昼の12時くらいのこと。5面のグラウンドを抱える敷地内にはトップチーム用のクラブハウスの他に下部組織用の施設もあり、クラブのオフィス、さらにはメディカルセンターまで併設されている。
冨安は時折、クラブ関係者の運転する車に同乗して施設内を見学。その際にメディカルチェックも済ませたと報じられている。午後にはクラウディオ・フェヌッチCEOにチームマネージャーを務めるマルコ・ディ・バーイオ氏も到着。新しい選手の獲得の一報を入れようと、ローカルメディアの取材陣も何人か訪れて正門前に張っていた。彼らはみっちりと会談を持ち、最終的に冨安らがカステルデーボレを後にしたのは夕方の7時半を回った頃だった。
もうその頃には、ボローニャと冨安の前所属先であるシント=トロイデンはクラブ間合意に達していたという。あとは冨安本人がオファーを持ち帰って再考するが、10日に受諾をした。
クラブは’90年代のビデオゲーム風の歓迎クリップを作成し、公式のアカウントに掲載する。すると「クラブがツイッターアカウントを開設してから記録的な勢いで(ガゼッタ・デッロ・スポルト)」たちまちのうちにライクが付いた。
シント=トロイデンには移籍金700万ユーロ(約8億5000万円)に成功ボーナスをしっかり払い、冨安自身とは5年契約を結ぶ。戦力として期待し、投資していることの現れである。このオペレーションは、イタリアのサッカー界で確かな実績を持つ二人の“目利き”によってなされた。