戦術面の変化
昨シーズンの具体的な成長でいうと、悪く言えば補強ゼロだが、良く言えば固定メンバーだからこそのメリットを傍受した。基本的な守り事は既にチームに浸透しているので、戦い方の幅を増やし、一つ一つの精度を高めた。
実際、3-4-1-2、4-3-1-2、4-2-3-1など複数のシステムを対戦相手によって使い分け、より自身の強みが出せる戦い方を常に模索していた。
ちなみにトッテナムはマンチェスター・シティのようにボールを常に保持して、試合を支配するタイプのチームではない。相手の出方をうかがって、カウンターを仕掛けるタイプのチームだ。そのため以前までは、同じくカウンター型のチームと対戦すると、露骨に攻めあぐねる試合も多かった。しかし今シーズンは戦い方に柔軟性がより増していた。
カウンター型のチームに対しても、低い位置からボールを繋ぐことで相手をおびき寄せ、相手の最終ラインの背後に広大なスペースを作らせると、そのエリアをシンプルに狙うスタイルの精度を上げた。
スパーズの最終ラインや中盤の選手たちは、シティやバルセロナに比べると、フィジカル優位の選手たちが多く、全員がビルドアップを上手としているわけではない。ただ組み立てをある程度パターン化しつつ、彼らのフィジカルの強さが生きるビルドアップ方法をとることで組み立てを機能させた。
低い位置で追い詰められた場合、精度の高いキックを持つキーラン・トリッピアが中盤のムサ・シソコに浮き球のパスを送ることでプレス回避するのもそのパターンのうちの一つである。単純な対人戦であればシソコは無敵だ。
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