常に生み出されたピッチ外の“悪”
長いようで短かったコパ・アメリカ2019(南米選手権)の激闘は、ブラジル代表の優勝で幕を閉じた。開催国かつ12年ぶりの南米のタイトルということもあり、ホームの大観衆の前で然るべき結末にまとまったとも言えよう。
決勝の会場となったサッカーの聖地マラカナン・スタジアムの周辺は、お祭りムード一色だった。宿敵アルゼンチンが相手だったベロオリゾンチでの準決勝とはまた違う、「その場を楽しもう」という楽天的な雰囲気が漂っていた。
国の誇りをかけた戦いでありつつも、準決勝のアルゼンチン戦ほど敵意をむき出しにはしない相手だったことも影響していただろう。ブラジルの優勝が決まった後もマラカナンはカーニバル状態だった(ジャイル・ボルソナロ大統領と主審への大ブーイングを除いて)。試合終了の笛が鳴った瞬間、そこら中で熱いキスを交わすカップルの姿を見せられたら、こちらも幸せな気持ちに……ならないけれど、何はともあれ無事に大会は終わった。
今になって振り返ってみると、コパ・アメリカはピッチ内外でいろいろなことがあった。たった3週間だが、あまりにも濃すぎるほどに。特に各国代表チームは、常に何かしらの“悪者”と戦わねばならなかったのではないかと思う。それは目の前の対戦相手とは別で、集中を妨げてくるとにかく厄介な存在だった。そんな中でチームとしても個人としても最もブレず、強いパーソナリティを発揮して戦い抜いたのがブラジルだった。
最初の“悪者”として認識されたのは、日本だった。「U-23代表での参戦は、コパ・アメリカを舐めているのではないか?」と南米メディアは懐疑的で、森保一監督にもそういった主旨の質問が投げかけられた。
結局、グループリーグ初戦のチリ戦前半や、第2戦のウルグアイ戦のドローを演じた奮闘ぶりによって南米勢も「なんだ、若手主体でもやるじゃないか」と日本への見方が変わりつつある中で、今度は別のテーマで日本とカタールが“悪者”になった。
きっかけはパラグアイ代表のエドゥアルド・ベリッソ監督の“言いがかり”にあった。記者会見で「私はアメリカ大陸のチームのみで行われることコパ・アメリカが理にかなっていると考えており、そうあるべきだ」と発言したことが火種になったのである。
この発言はグループリーグ初戦でパラグアイがカタールと2-2で引き分けた直後の記者会見で飛び出した。「カタールと対戦した後に言うのは嫌な感じに聞こえるかもしれないが…」という前置きがあったにせよ、「アジアの招待国排除」を声高に訴えたように南米メディアは大きく報じ、大会全体の空気感として広がっていく。