先制点を許したチリ
ブラジル、アルゼンチンとともにコパ・アメリカのベスト4に残ったのは、2連覇中のチリと、1975年以来となる決勝進出を狙うペルー。準々決勝では、チリはコロンビアを、ペルーはウルグアイをそれぞれPK戦で破っている。
この試合で両チームは前の試合と同じ11人を先発メンバーに起用。延長戦がなかった準々決勝からチリは中4日、ペルーは中3日でこの試合に臨んだ。
チリはアルトゥーロ・ビダルを軸に中央からビルドアップを試みるが、ペルーはダブルボランチとトップ下のクリスティアン・クエバがボールホルダーを挟む。さらには両サイドハーフが中央に絞って数的有利を作ることで、ペルーは中盤でボールを奪ってカウンターでチャンスを作る。
チリがなかなかリズムをつかめない中でペルーが21分に先制点を奪う。ペナルティーエリア右でハイボールがサイドにこぼれたところをクエバが拾ってクロスをあげる。カリージョがヘディングで後ろに逸らし、ファーサイドにこぼれたボールをエディソン・フローレスが左足を振りぬいた。
立ち上がりこそ、5分のポゼッションで推移したこの試合だが、ペルーが先制したことにより徐々にチリがボールを持つ時間が増えていく。しかし、チリは前半のボール支配率が65.3%を記録したものの、前半のシュートは3本のみと、試合の主導権を掴むことはできなかった。
フィジカルとメンタルの消耗戦
ペルーは38分、右サイドハーフのカリージョがDFラインの裏に抜け出すと、飛び出したGKガブリエル・アリアスをかわしてクロスを上げる。ペナルティーエリア外でMFヨシマール・ヨトゥンが胸でトラップして左足を振りぬいたボールは、チリの両CBの間を通り無人のゴールへ。ペルーは貴重な追加点をもぎ取った。
今大会4戦2失点だったチリは、想定外の前半2失点に、前がかりになることを強いられる。
前半に3人のMFを中心としたビルドアップに苦戦したチリは後半、両SBが高く上がり、サイドチェンジの長いボールを使いながら起点を作ろうと試みる。しかし、ペルーは両サイドハーフがDFラインに献身的に下がり、6-3-1のような形で守備を固めてそれに対応した。
後半になると、ボールを触れないFWアレクシス・サンチェスが中盤に降り、ビダルがDFライン付近までボールをもらうシーンが増加。セットプレー以外でなかなかチャンスを作れないチリの状況を表していた。
アタッキングサードで前を向けずにフラストレーションを溜めるチリ。走り続けて身体が限界に達しつつあるペルー。フィジカルとメンタルの消耗戦となった準決勝は、ボールをチリが握り、試合の主導権をペルーが掴んだ。
しかし、ペルーの疲労は限界に達しつつあった。後半開始早々に先制点を決めたフローレスが右足を負傷。50分にクリストフェル・ゴンサレスを投入した。さらに、足をつったカリージョはピッチに座り込み、71分にアンディ・ポロと交代した。
反攻したいチリは決定機を生かせず
ペルーの疲労を突きたいチリの決定機は75分。ペルーのバックパスをアンジェロ・サガルがダイレクトでエドゥアルド・バルガスに落とすと、センターサークル付近からドリブルで抜け出す。シュート直前にバルガスと競り合ったクエバの手がかかっているように見えたが、判定はノーファール。GKとの1対1になるも、バルガスのシュートはGKに当たって横に逸れた。
チリは89分にCBギジェルモ・マリパンを下げてFWニコラス・カスティージョを投入するが、それが裏目に出る。
ペルーは中央バイタルエリアでレナト・タピアがボールを持つと、ロングシュートのフェイクを入れて、DFラインのギャップを突いたゲレーロにスルーパスを送る。GKとの1対1を冷静にかわしてゴールに冷静に流し込んだ。チリはCBマリパンが下がり、CBがメデル1人になっていたため、スペースが空いてしまった。
瀕死のチリは試合終了間際にPKを獲得。しかし、バルガスの“パネンカキック”はGKに読まれてセーブされた。直後にタイムアップの笛が鳴り、ペルーが1975年以来となる決勝進出を決めた。
結果的にペルーのボール支配率は34.8%を記録したが、この試合では前半開始から試合の主導権を握り、終始チリを制圧していた。開催国ブラジルとの決勝戦も厳しい戦いが予想されるが、今日のような戦い方ができるかどうかが、ゲームのカギを握るだろう。
(文:加藤健一)
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